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女神様の使い、5歳からやってます  作者: めのめむし
第4章 帝都編2

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第79話 獣人の行き先

 美羽とクララ、レーチェルはゼノンの執務室に来ていた。

獣人の今後の処遇を話し合うためだ。

そのため、獣人からは一族代表のレイアとシア、ゼノンと妻のアドラ、数人の商会幹部が同席している。


 執務室は豪華な装いをしているが、美羽によって天井と壁を破壊されて、外が見えている。

幸いソファーセットは無事だったので、商会幹部とクララたちの護衛を除いて全員座っている。


「それで、クララ。この人たちの処分はどうなるの?」

(紅茶苦っ)


 美羽が渋い顔をして、カップを置きながら言った。

その表情にクララとレーチェル以外は(二人は紅茶が苦手なのを知っている)まだ商会に対して思うところがあるのだろうと想像する。


「陛下はミウ様の下された処分に従えということです」

「そうなの」


 すかさず美羽は念話でクララに話しかける。


『なんで、敬語なのよ。私寂しい!』

『人前では使い分けないと体裁が保てないのよ』

『アーン、もうクララァ。意地悪ー』

『あ、ご、ごめんね。でも、こうしないといけないの』

『おふたりとも、だまってしまっているので、みながふあんにおもってますわ』

『『あ、そうだった』』


 美羽は自分に注目が集まっているのに気づく。

顔は平静を保ちながら口を開いた。


「ゼノン」

「はい」

「獣人たちにはどう落とし前をつけるのかしら?」

「はい、まずは誠心誠意を込めて謝罪をさせていただきます。その上で、金品での補償をさせていただき、今後の生活の保証をさせていただこうと思います。もし就職を希望されていれば、できるだけご希望の職場を斡旋させていただきます」


 それを聞くと、美羽はレイアに向かって聞く。


「レイアたち獣人族はどうしたいの? あと、要望とかある?」


 そういうと、レイアはシアと顔を合わせ軽く頷き、話し始める。


「私たち獣人にとって、帝都はあまり住みやすいとは言えない街なんです。獣人差別も少なからず残っていますし、帝都に住む獣人のほとんどが奴隷ですので、私たちもそう見られてしまうでしょう」


 そういうと、クララが苦い顔になる。

その状況を作っている責任の一端は皇族にあるからだ。


 美羽がクララの手に自分の手を重ねる。

美羽はクララと目が合うとニコリと微笑む。

クララはその微笑みに安心した。


 美羽はレイアに尋ねる


「じゃあ、どうするの?」

「はい、私たちは巨大樹の森に移住をしようかと思っています。そこにはエルフたちが住んでいますが、獣人も受け入れているそうですので。村でも何かあった時は、巨大樹の森を頼れと言い伝えがあるのです」

「巨大樹? エルフ? ……あー! レーチェルが言ってた大きな大きな木の森ってそこじゃないの?」

「きっとそうですわ。おねえさま」

「御使い様?」

「うん、あのね、3人で旅をしたいと思っていてね、その巨大樹の森?ってとこにもいってみたいねって言ってたんだよ。

ねー」

「「ねー」」


 3人は嬉しそうに頷きあった。

 息のあった子供らしい3人のやり取りに皆ほっこりとする。


「そうですか。私たちが受け入れられたら、御使い様たちも大歓迎させていただきますね」

「うん! 案内してね。すごい大きな木なんでしょ? どのくらい大きな木なのかな?」

「私も伝承でしか聞いたことはないのですが、山のような大きさだとか」

「へー、そんな木にどうやって人が生活してるの?」

「なんでも各木に一部族が住んでいるそうで、木によって産物が違うようなのです。スパイスが取れる木、野菜が取れる木、

豆が取れる木、紙が取れる木、色々あるそうなんです。だから、木同士で交易をして一大経済圏ができているそうなんですよ。木と木はロープで繋がっていたり、空を飛ぶ布の板のようなもので行き来しているという話です」

「「「面白そう」」」


 美羽とクララ、レーチェルは目を輝かせて聞いている。


「私行く!」

「わたしもですわ。おねえさま」

「もちろん私も行くわ」


 美羽が手のひらを下に手を出すと、二人も手を重ねてくる。


「よーし、巨大樹の森へ行くぞ〜」

「「おお〜」」


 子供達が盛り上がっているのを、大人たちは微笑ましそうにして待っていた。

3人はそれに気がついて罰が悪そうな顔をする。


「えへへ、ごめんね」

「「ごめんなさい」」


 慌てて、レイアが言う。


「そんな、文句言うつもりはありません。可愛らしかったもので、つい見惚れていました」

「えへへ、そうなの? でも……話しを続けようか」

「はい」

「ゼノン」

「はい」

「獣人はそうすると言っているけど、どうするの?」

「はい、補償のための金品をお渡しいたします。

巨大樹までの移動のための物資などもこちらで全てご用意させていただきます。

それと、もし仮に巨大樹の森で受け入れられなかった場合は、戻ってきていただければ、先ほどお話しした待遇でお受け入れさせていただきますので、ご心配なさらず」

「そうだって。これでどう? レイア」

「はい、正直金品も物資も助かります。ただ、だからと言って赦しはしませんが」

「もちろんです。我々は愚かにも皆様に与えてしまった苦しみや悲しみは生涯背負わせていただく所存でございます」


 そう言って、ゼノンは頭を下げる。

するとアドラと幹部たちも頭を下げた。


 空気を変えるように美羽がレイアに聞く。


「じゃあ、獣人たちはいつ出発するの?」

「準備に時間がかかりますが、3日後には出発しようかと」

「それでは、物資の準備はこちらでさせていただきますので、後ほど打ち合わせをさせてください」

「ああ、分かった。よろしく頼む」


 そこで解散となった。が、美羽は思い出した。


「ゼノン、あのわんちゃんたちのことなんだけど」

「ああ、ミウ様に懐いていますので、すでにミウ様の犬だと認識しておりますが」

「そう? ありがとう。レイア、どうかな? あの子達を連れて行かない?」

「あのブルハウンドたちですか?」

「うん、巨大樹の森に行くのに危険な森も通るでしょ。護衛が必要なんじゃない?

あなたたち、女性ばかりだし」

「いいのですか?」 

「うん、あの子達には獣人たちの言うことを聞くように言っておくから」

「ありがとうございます。御使い様。なんと言っていいか……」

「いいよ、気にしないで。それと美羽ね」

「はい、それではミウ様とお呼びさせていただきます。……それで、ミウ様、あ、あの。恐れながら」

「何? レイア?」


 レイアは一瞬言い淀むが、意を決して口を開いた。


「あ、あの。よかったら、ミウ様を抱っこしていい子いい子させていただければ嬉しいのですが……いえ、無礼なのは承知です。ただ、ミウ様に亡くなった我が子を重ねてしまいまして、その」


 レイアの声はだんだん萎んでくる。


 美羽が近づいて手を抱っこしやすいように上に上げてニコニコして言った。


「いいよ」

「ミウ様」


 レイアが美羽を抱っこして頭をいい子いい子する。

そして思い切り抱きしめる。


(ああ、愛しい。あの子はもういないけど、戻ってきてくれたみたい)


 レイアが美羽の首に鼻を近づけ思い切り匂いを嗅ぐ。


「きゃあ。もう、レイア匂い嗅がないでよぉ」

「ミウ様、とても落ち着く匂いです。心が安らぎます」

「それはどういですわ。おねえさまのにおいは、かぐわしいはなのようで、やすらかにねむれますの」

「それはわたしも思うわ。ミウちゃんを抱っこすると、すぐに眠れるんだよね」

「もー、二人とも」


 そんな話をしながら、全員で前庭に出ていった。

美羽は抱っこされたままだ。


 前庭には獣人たち、ゴルディアック商会の者たち、20頭のブルハウンドがいた。


 ゼノスや幹部たちは商会の部下たちに指示を与え、部下たちが動き出す。

レイアも獣人たちに指示をするのだが、美羽を抱っこしたままだった。

獣人たちは微笑ましい笑顔で指示を聞いていく。


「クララとレーチェルはこれからどうするの?」

「わたしはおやしきにもどりますわ」

「私もお城に戻るわよ」

「おねえさまはどうしますの?」

「市場で治癒して、教会に行って、フィーナちゃんとお話ししてから、歌を歌いに広場に行く……ああ、冒険者ギルドはそろそろ行かないとなぁ。でも、また今度でいいか」

「ミウちゃん、結局昨日もそんなに寝てないようだったけど、休まないで大丈夫?」

「クララ、大丈夫だよ。もし寝ちゃったら、レイアが運んでくれるから」

「ご一緒していいんですか?」

「来たくないの?」


 美羽が上目遣いでレイアに言う。

その顔がとても可愛い。

レイアは真っ赤な顔になりながら力一杯答える。


「もちろん行きます!」

「それじゃあ、ミウちゃんをよろしくね。レイア」

「よろしくおねがいしますわ。レイア様」

「お任せください。命に変えましても」

「あはは、そんなに力まなくても大丈夫だよぉ」



 少し、離れたところで、アミが寂しそうに4人を見ていた。


「あら、アミ。すっかりレイアさんにミウちゃんを取られちゃったねぇ」

「私の方が先に美羽様に会ったのに……」

「レイアさんも子供を亡くしているからね」

「でも、私だって……」

「じゃあ、私たちもご一緒しよっか?」

「でも、美羽様の邪魔に……」

「それじゃあ、私は行くね。うふふ、今日こそミウちゃんに尻尾を撫でてもらうのよ」

「ずるい、私も」

「じゃあ、行きましょ」


 シアとアミは美羽のところに駆け寄った。

アミは力一杯叫ぶ。


「ミウ様! 私も連れて行ってください」


 アミの勢いに一瞬驚き、開いた手を口に当て、笑う美羽。


「あはは、声でっか。いいよ。行こうよ」


 美羽の笑い声に、アミもつられて笑うのだった。

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