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女神様の使い、5歳からやってます  作者: めのめむし
第4章 帝都編2

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第76話 寝てるだけ

 美羽が倒れた。


「御使いさま!」

「ミウちゃん!」

「ミウ様!」


 美羽の周りにいたものたちが叫ぶ。

クララとレーチェルも叫びながら走り寄る。2人の顔には焦燥があらわれる。


「ミウちゃーん!」

「おねえさまー!」


 しかし、2人が着いた時にはすでにきんちゃんが美羽の顔の前にいた。


「「きんちゃん!」」


 声をかけられると、2人の方を向き、にこりと笑う。

最近は分かりにくいきんちゃんの笑顔も2人には分かるようになってきていた。

その笑顔で、安心ができた。


「大丈夫なのね」

「ええ、ただ寝ているだけです」

「よかったですわー」

「それにしても急に倒れるくらい眠くなるって何していたの?」

「ああ、今日は朝イチで街の子供に善意で占いをして、その足でレイクノースまで走って行き、魔法の練習で吹き飛んで、爆発でできた大波に流されて10メートルの高さの枝にひっかり一命を取り留め、風呂に入り、また走って帝都まで戻ってくると、奴隷をいじめているジェフに遭遇して懲らしめてから奴隷を解放して、さっきの子供の母親に善意で占いをして、宿で風呂に入り、ここにきて、犬たちを手なづけ、悪人たちを懲らしめました」


 きんちゃんが早口で説明した。


「なんだか、もりだくさんですわね」

「5歳のミウちゃんでは眠くなるのも無理ないわね。レーチェルあなたはどうなの?」

「ふわぁぁ、わたくしもおねえさまをみていたら、ねむくなってきましたわ」



 2人と一匹の呑気な会話を聞き、周りの人もホッとする。


「第二皇子殿下のお通りだ。道を開けろ」


 そこへ、エルネストとカフィとその護衛たちがやってきて、人だかりが割れる。


 エルネストとカフィは美羽を見るなり声をあげ、


「「ミ……」」

「「ねているだけ(ですわ)」」


 られなかった。

クララとレーチェルが口に指を当て、シーッとする。


「でも、このままというわけにはいかないわ。どこか休ませられる場所はないかしら」


 すると、ゼノンがやってきた。


「失礼ながら、皇女殿下」

「何かしら?」

「屋敷はボロボロですが、客室がある区域は無傷なようで。そこは使えるはずです」

「あなたのお屋敷を信用しろと?」

「はい、貴女様のおっしゃる通りです。しかし、今の私たちは美羽様に永遠の忠誠を誓った身なれば、決して邪なことなど考えませぬ」


 しばらく、クララはゼノンを見つめるが、ふぅと息をつく。


「それじゃあ、案内を頼むわ」

「クララおねえさま、いいんですの?」

「ええ、ミウちゃんの神気は完璧よ。悪いことなどできようはずがないわ」

「それもそうですわね」


 エルネストがウキウキとした声で宣言する。


「それでは、私がミウ様を抱いてベッドまで運ぼう」

「いえ、それはこのカフィが務めであります」


 エルネストとカフィが睨み合う。


(この2人、仲良いわね……はっ、それどころじゃないわ。このままじゃ、ミウちゃんが汚される)


 クララは一触即発の2人に断る。


「結構です。私が運びますから」


 クララ以外が運ぶとなると、エルネストが強権で美羽を奪ってしまうだろう。

ここはクララが運ぶのが一番安全だ。


 エルネストとカフィはそれを渋る。


「それでは、クララが大変ではないか。クララも女の子だろう。無理はしなくていい」

「そうです。皇女殿下がやることではありません。私にお任せください」


 しかし、クララは譲らない。

レーチェルの助けを借りて、美羽を背負う。あくまでも、男2人には触れさせない姿勢だ。


「重いだろう、クララ。落とす前に私に代わりなさい」

「そうです。僕が代わります」


 クララは全く取り合わない。


「大事なお友達の重さは私自身が背負うわ。邪魔しないでください」


 そういうと、クララはゼノンの案内で、歩いていってしまう。

エルネストとカフィはしばらくその様子を眺めていたが、やがてハッと気がつき、エルネストが言う。


「そうだ、私がミウ様の看病をしよう」

「あ、僕がします。殿下はお休みください」


 2人がそう言った瞬間、エルネストとカフィの喉元に針が伸びる。

きんちゃんの体から針が出たのだ。


 チクリと少しだけ喉に針が刺さる。


「貴様ら、美羽様の寝所に侵入した瞬間に全身穴だらけになると思え」


 きんちゃんの言葉にコクコクと頷く2人だった。


 そんな二人を尻目にきんちゃんはクララたちに着いていく。


 実のところ、きんちゃんは浮かせることで、美羽を運ぶこともできる。


 しかし、きんちゃんは、クララが美羽を背負ってくれることが何よりも嬉しい。

美羽は、愛するものを失い、実の父に殺されそうになってこの世界に来た。


 だから、この世界に来た時の美羽は人を信用することを恐れている節があった。

その美羽が親友と言える存在を見つけたのだ。


 力のある美羽がトラブルの中にいる。

それを知ると、自分たちでは力不足と知りながらも、なお駆けつける。

クララとレーチェルはそういうことをする。そんな二人に美羽は恵まれたのだ。


 美羽至上主義のきんちゃんにとってこれほど嬉しいことはない。


(美羽様だけではない。クララとレーチェル。この二人も守らなくては)


 美羽を背負うクララを後ろからレーチェルが支えて歩いていく。

そんな3人をみてきんちゃんは思ったのだった。



 ベッドに着くと、美羽を横にする。

すると、レーチェルもすぐに美羽の隣に横になって眠ってしまった。


「あら、レーチェルったら。……あなた、レーチェルの護衛でしたわね」

「ハッ」

「それでは、ルッツ家に伝令を頼めるかしら。レーチェルはゴルディアック家で寝てしまったが問題なく、明日には戻ると」

「ハッ」

「それから、そこのあなた。私もこのままミウちゃんと寝るわ。城にそう伝えてちょうだい」

「ハッ」

「獣人の皆さん。今日は寝るところはあるかしら?」


 それにはレイアが答える。


「私たちはどこでも眠れますので。できれば、ミウ様のおそばで力及ばずながらも護衛をさせていただきたいと」

「分かったわこの部屋に寝てちょうだい。ただし、ちゃんと寝るのよ。

起きた時、あなたたちが寝ていなかったら、ミウちゃんに怒られちゃうわよ」

「はい、ご配慮ありがとうございます」

「それから、ゼノン」

「はい」

「あなたは誰の配下?」

「私以下のゴルディアック家は、すでにミウ様に全身全霊の忠誠を誓っております」


 ゼノンがそう言うと、後ろのゴルディアック家のものたちは膝をついた。


「ゴルディアック家は他にも支店があって、従業員はたくさんいるって聞いているわ」

「はい、この屋敷にいるもの以外は裏には関わっておりませんので、商会でミウ様に従うと言う方針を出せばそれに従うでしょう」

「そう。分かったわ」

「明日、早急に屋敷の復旧を始めなさい。拠点として機能するように」

「はい、皇女殿下」

「後のことは自分たちでなんとかするように。決してミウちゃんの手を煩わせてはいけません」

「はい、心得ております」

「それならいいわ。下がってちょうだい」



 ゴルディアック商会のものたちが下がると、獣人とクララとレーチェルそして美羽だけになった。


「獣人のみなさんも、明日またお話ししましょう。私たちに気兼ねしないで寝てくださいね」

「はい、ありがとうございます。殿下」


 クララはニコリと微笑んで、美羽の隣にいそいそといった。

そーっと、美羽の頭の下に腕を押し入れて、反対の腕は上から背中に回す。

美羽を抱きしめる格好になった。


「おやすみ、ミウちゃん、レーチェル」


 クララはスーッと眠りに落ちた。顔はとても幸せそうだった。




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