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女神様の使い、5歳からやってます  作者: めのめむし
第4章 帝都編2

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第75話 決着

 獣人たちを連れて外に出ると、獣人の代表者が挨拶をしてきた。


「私は獣人の村長の孫娘のレイアです。村長は殺されてしまったので、私がこの中でリーダーの役を担っています。

御使い様、お助けいただきありがとうございました」


 レイアという女性は20歳前後の綺麗で凛々しい犬獣人だった。

三角の耳がピンと立っている。


 美羽は疑問に思っていることを聞く。


「若い女性ばかりなんだね」


 すると、レイアは悔しそうな顔して言う。


「散り散りに逃げたという事もあるのですが、男性はかなり殺されたと思います。

私の祖父も村長でしたが私たちを逃すために殺されました。

私の夫は捕まった後、反抗して殺されてしまいました。

元々体調を崩していた私の子供はこちらに運ばれてくる途中に亡くなりました」


 レイアは必死で悲しい顔を隠す。

本人は隠しているつもりでも周囲からは痛々しく見える。


「ここにいる者たちは似たような状態で……御使い様?」


 美羽が女神の手で背の高いレイアを引き寄せてから、自分の胸に抱いた。


「辛かったね」

「は……はい」

「悲しかったね」

「……はい」

「でも、頑張ってたんでしょ。みんなのために」


 美羽の声はどこまでも優しい。

今までリーダーをやらざるを得ない状況で、堪え続けてきた涙が美羽の優しさでついに溢れてきた。


「はい」

「もう、大丈夫だから、泣いていいよ」

「う、くく……うあああああ」

「大丈夫だよぉ」


 美羽から桜色の光が溢れて周囲を覆い、桜の花びらが舞い始める。


「わたじのおっどはアルドっで、言うんでず。うう、アルドは、どっでもだよりになるひどで、やさじがっだです」

「そう、アルドっていうんだね。愛していたんだ」

「ばい、あいじでまじた」

「子供のことも聞かせてくれる?」

「子供は、リアっで言いまず。5ざいで、御使い様ど同じぐらいの女の子でず。どでも、がわいい子だっだんでず」

「リアって言うのね。好きなことは何だったのかな」

「わだじのづくる料理ば、なんでもずぎっで、くく、言っでぐれで、おいじぞうにだべでぐれてまじだ」

「そう、リアも幸せだったんだね。レイアのおかげだよ」

「死のうど思っだんでず。もうアルドもリアもいない。いぎでいでもじがだないがら。

でも、みんなをおいでいげながっだ」

「レイアは強い子だね。頑張ったんだね」

「ばい、頑張りまじだ。もうげんがいでじだ」

「限界だったんだね」

「もう、死んでもいいでずが?」

「いいよ。もう十分頑張ったもんね」

「リアどアルドとテンゴグで会えますか?」

「どうかな。2人はレイアが心配で迷っちゃてるかも」


 レイアが絶望の顔を上げる。



「ぞんな、どうずれば」

「フィーナちゃんの像をあげる。女神レスフィーナちゃんだよ。

その像は私が神気で作ったからそれにお祈りすれば、ちゃんと天国に導いてくれるから」


 きんちゃんが何も言わずに美羽の手にレスフィーナ像をのせてきた。


「これだよ。毎日祈ってあげれば、天国に行けるし天国でも幸せだよ。獣人たちみんなで祈れるよ」


 レイアが手渡された女神像を見ると、うっすらと桜色に光っている。

持っているととても暖かい気持ちになってくる。


「私! 毎日祈ります。リアとアルドのために」


 いつの間にか涙も止まっていた。目にも新たな光が宿っていた。


 周りの獣人たちもほっとした顔で見ていた。みんなもレイアの気の張りようが心配だったのだろう。


 レスフィーナ像を抱えたレイアの決意の目、獣人たちの安心の顔、美羽の優しい顔を桜色の光と花びらが包んで、一枚の絵画のように幻想的だった。



 それを少し離れて見ていたクララとレーチェル。

レーチェルの目には感動が溢れている。


「おねえさま……うつくしいこうけいですわ」


 クララがポツリと一言。


「あれが、美羽ちゃんが言っていた霊感商法なのね」

「だいなしですわー!」


 レーチェルの絶叫が響いた。



 レイアも落ち着いたところで、獣人たちに向かって美羽がある非情な提案をした。


「ねえ、みんな。ゴルディアック商会に恨みはあるの?」


 すると、異口同音にあると言い、頷いた。


「それじゃあさ、恨みは晴らしておく?」


 美羽がクララを見ると、クララが騎士たちに指示を出した。


 そして、連れてこられたのはゼノス以下70名のゴルディアック商会の人間だった。

美羽は獣人たちに向かって言う。


「みんな消しちゃおうと思ったんだけどさ、止められたから桜塵の誓いっていう、神の呪いをかけているの。

悪いことをすると、体が桜の花びらに変わって消えてしまうんだ。

今後彼らが悪いことをすることはもうないし、その気もなくなっている。

だけど、今までのことは別。

みんなは最愛の人を殺された上にここまで連れてこられた。

その恨みは今、ここで晴らしても構わないよ」


 すると、獣人たちはお互いの顔を見合わせる。

そして、1人の獣人の女性が出てきた。


「私も夫を殺されました。はっきり言って憎かったです。殺してやりたいと思ってました」


 その女性も獣人たちもゴルディアック商会の者たちを睨む。

すでに改心している商会の者たちは、苦しそうにしかし目を逸らさないで、甘んじてその視線を受け入れた。


 女性は続ける。


「でも、さっきレイアさんが泣いていた時、御使い様の桜の花びらを体に受けて、殺したいって言う衝動は嘘みたいになくなってしまいました」


 女性は困ったような笑顔を美羽に向ける。


「もうこれじゃあ、復讐をすることなんてできません」


 女性はレイアに向かって頷く。

それに対してレイアも頷き返す。

そして、レイアが話を引き継いだ。


「御使い様。私たちに殺意はもう残っていません。理不尽に奪われた怒りは消えませんが、もう復讐を忘れて、前に進んで行こうと思います」


 そうすると、ゼノスが飛び出してきた。


「皆様! この度は、本当に申し訳ありませんでした! どんなことをしても許されることではありませんが、できうる限りのことはさせていただきます!」


 そう言うと、ゴルディアック商会の者は皆、頭を下げて謝罪してきた。


 それに対して、レイアは大きな声を出して言う。


「今言った通り、あなたたちに対しての我々の怒りは決して消えることはないだろう。

しかし、あなたたちが今のあなたたちでいる限り、我々は復讐をしないことを誓おう」


 すると、ゼノス以下70名は涙を流しながら、土下座をした。


「ありがとうございます」

「申し訳ありませんでした」

「この償いは必ず」


 口々に感謝と謝罪の言葉を叫んだ。


 それを見て、美羽は満面のドヤ顔になり、


「これにて一件落ちゃ……」


 ドサッ。


 名奉行の真似をしている途中で倒れた。


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