第49話 私も二人に守られるね
美羽、クララ、レーチェルの3人は、泣き腫らしたながら、お互いの顔を見てはにかんだ。
「グス、おねえちゃん、ひどいかおですわ」
「ふふふ、レーチェルだって酷い顔だよ……クララなんて化粧が崩れてる」
「ふぇ、な、なに言ってるの! わ、私は化粧なんてしてないわよ、ミウちゃん」
「ふふふ、その慌てよう。本当はしてるんじゃなーい?」
「ミウちゃん!」
「クララでんか。ウソはいけませんわ。もうばれてますのに」
「レーチェルまで。もう、もう」
クララが二人をパシパシと叩く。
「「あははは」」
美羽とレーチェルが笑い出すから、クララは真っ赤になって拗ねてしまった。
「ごめんって、クララ」
「でんか、もうしわけありませんでした」
「それ」
「なに? クララ」
「ミウちゃんはお姉ちゃんって言ってくれないの? さっき言ってくれたじゃない」
「えへへ、言わないよぉ」
「なんでよー」
「だって、クララは私の妹みたいなんだもん」
「ひっどーい。私のどこが妹なのよ」
クララが美羽の頬を両手で挟みながら言う。
面白い顔になっている。
「ぞーゆーどご」(そーゆーとこ)
クララは手を離し、レーチェルの方を見る。
「もう、ミウちゃんはいいわ。問題はあなたよレーチェル」
いきなり話を振られて、困惑するレーチェル。
「なんですか? でんか」
「その言い方よ。殿下っていうところ」
「でんかはでんかじゃないですか?」
「もう、私は嫌なの。殿下って呼ぶの禁止」
「え? ではなんとおよびすれば」
困惑するレーチェルにクララがニヤリと笑って言う。
「なんかいい言い方考えて」
「そ、そんな」
そんなクララの無茶振りをみかねた美羽が口を開いた。
「クララ、そう言うところだよ。だから妹みたいに見えるんだよ」
「えー、だって、私だけ殿下なんて寂しいじゃない」
「じゃあ、レーチェルを困らせてないで、呼んで欲しい呼び方を言いなよ」
クララはイタズラがバレた子供のような顔をして、レーチェルに向き直る。
「レーチェル。私たちはこれまであまり接点はなかったわ。
でも最初はミウちゃんを通してだったけど、今は関係が進んだと思うのよ。
一緒に泣いた仲だし」
クララはそこで恥ずかしそうにニコリとして続ける。
「だから、これからは、もっと仲良くして欲しいの。殿下なんて他人行儀で嫌よ。
これからはクララって呼んでくれないかしら」
言われたレーチェルは目を泳がせる。その先で美羽の目と合う。
美羽がニコリと笑って頷く。
それを見て、レーチェルが決心した。
「ええ、わかりましたわ。これからよろしくおねがいします。クララおねえさま」
クララの顔がパァっと明るくなる。
「ええ、よろしくね、レーチェル」
二人が笑い合っている。
それを見て、美羽がドヤ顔になって名奉行の真似をしだした。
「これにて、一件落着!」
そういうと、クララ、レーチェルの二人が美羽の方を向く。
「なに言ってんだかわからないけど、うまくまとまったみたいな顔しないでくれる?」
「そうですわ、おねえちゃん。」
「え? なに?」
美羽は首を傾げる。
その仕草がとても可愛い。
「え? なに? じゃないわよ。可愛く言ったって騙されないんだから」
「そうですわ。いまのはかわいかったですけど、いまじゃないんですの。それはまたこんどやってほしいですわ」
「二人とも落ち着いて。なんのことかな?」
「だから、あなたのことを聞かせなさい! なんで、私たちの前からいなくなろうとしたのか」
それを聞いて、美羽は腑に落ちた。
そして、花が咲いたような笑顔になる。
クララとレーチェルはそんな美羽に見惚れてしまう。
「うん、もちろん。二人にはなにも隠したくないよ。全部話すから、聞いてくれる?
それで、私も二人を守るから、二人も私を守って」
それを聞いて、二人は嬉しそうに顔を見合わせ、再び美羽の方に向くと、
「「うん!」」
力一杯頷いた。
3人は、広場から離れ個室になるレストランに来ている。
個室の外にはクララの護衛が、店の外の邪魔にならないところにはレーチェルの護衛が立っている。
お茶とお菓子を出してから給仕が下がった。
それを見て、美羽が話し出す。
「私のこと全て話すから遅くなるかもしれないけど大丈夫?」
「ええ、大丈夫よ。城にはすでに連絡させているから」
「わたしもだいじょうぶですわ。おかあさまにれんらくにいかせましたの」
それを聞いて、美羽が少し大きく息をすると話し始めた。
美羽は自分が地球の日本と言われるところから来ているというところから話した。
地球の文化なども話した。
5歳でしかない自分の知識では足らないところは、レスフィーナからもらった地球の知識で補った。
二人は美羽の境遇を聞いて、驚き、憤り、悲しんだ。
何時間も話した。
今まで押さえていたものが溢れ出すように言葉が出てきた。
賢治と柏原のことを話しているときは、クララもレーチェルも悔しそうに手を握りしめた。
「大好きな二人を守りたかったのに、私に力が足りなくて、守れなかったの」
美羽は美玲と美奈の死の部分では大泣きしてしまった。
それを二人がそっと背中を撫でて慰めてくれた。
話が終わった時はもうとっくに日が沈んでいた。
話し終わった美羽は冷めてしまったお茶を一口飲み、
「これが私のことの全てだよ。長く話してしまってごめんね」
「ミウちゃん……」
クララは美羽の手を取り続ける。
「話してくれてありがとう。本当に嬉しいよ」
「わたしもですわ。おねえちゃん、はなしてくれてありがとう」
「私も聞いてくれて、ありがとうね。二人とも」
美羽はにっこり笑った。
二人もつられて笑う。
すると、レーチェルが怒り出す。
「それにしてもゆるせませんわ。おねえちゃんのちちうえは。なんでそんなひどいことをするんでしょう。
おねえちゃんがわたしのおとうさまにおこったのもむりありませんわ」
レーチェルは美羽と出会った日に父親のことは聞いていたのだが、詳しく聞いて憤りが隠せない。
クララも顔を険しくして口を開く。
「それに、柏原という男、なんて下劣なんでしょう。ミウちゃんのことをあんな目に合わせるなんて。
悍ましいわ。気持ち悪いわ。ミウちゃんが兄様のことを嫌っている理由がよくわかるわ。
兄様がどれだけ気持ち悪いことしたのかが理解できたわ。
ごめんね、ミウちゃん。兄様が気持ち悪い真似をして」
美羽はそれぞれ憤る二人に微笑みを浮かべて、お礼を言う。
「二人ともありがとう。話を聞いてもらってスッキリしちゃった。
今日は二人に助けられっぱなしだね」
そういうと、クララとレーチェルは美羽に抱きついてきた。
「ミウちゃん、私がついているからね。なんでも言って。私があなたを守るから」
「おねえちゃん、もうこれからはえんりょしないでください。わたしもおねえちゃんをまもれるようにがんばりますわ」
美羽は笑顔で返した。
「うん、ありがとう。二人のことは私が守るからね。だから、私も二人に守られるね」
「ええ、約束よ。どんなことがあっても、ミウちゃんとレーチェルのことは守るわ。だから、私のこと守ってね」
「やくそくですわ。わたしもおねえちゃんとクララおねえさまのことをぜったいにまもりますわ。だから、わたしのこともまもってください」
3人は固い友情を確かめ合った。
3人とも、これからどんな困難が起きようとも、お互いのことは守り抜いてやるという覚悟でいた。
今はそれがどんなに困難なことかを誰一人想像していなかった。




