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女神様の使い、5歳からやってます  作者: めのめむし
第4章 帝都編2

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第50話 きんちゃん風呂

 その日は遅くなったが、レストランでそのまま食事をして、解散した。


 美羽はルッツ家で教わった宿に入った。

そこはなかなか雰囲気の良さそうな宿だった。


「コザクラミウ様ですね。お話は伺っております。こちらが部屋の鍵です。

伯爵様より一月分の宿賃をいただいておりますので、気兼ねなくお過ごしください」

「もうお金が払われてるの?」

「はい、頂いております」

「そうなんだ。今度お礼言わないとね」


 美羽は桜色の髪を靡かせて、部屋に向かった。


 二人のフロントの従業員たちは、美羽を見て内心驚いていた。

美羽の姿が見えなくなったらすかさず話し出す。


「ねえ、あのお客様、少女だって聞いていたけど、思った以上に小さかったね」

「ほんとね。だけど、すごく綺麗で可愛い子だったな〜」

「それは私も思ったわ。あの見た目で、こんな遅くに歩いていたら危ないわよね」

「ええ、すぐに襲われたり連れ去られちゃいそうよねえ」

「注意してあげた方が良かったんじゃない」

「そうよね、今度釘を刺しておきましょう」


 実は、すでに5人の人攫いに襲われていた。

しかし、美羽は怖がり、しゃがみ込みながらも神気結界で身を守り、きんちゃんが容赦なく手足を串刺しにして、路上に放置してきていた。ご丁寧に地面に「人攫い」と書き残して。


 部屋に行った美羽は、綺麗な部屋で気に入った。

大きめの部屋にベッド 机と椅子が備わっている。


「これで、お風呂もあれば完璧なんだけどなぁ」

「近くに公衆浴場があって、みなさんそちらを利用しているようですね」

「そうなんだね。今度行ってみようかな」

「今日は行かないのですか?」

「今日はもう疲れたからいいかな」

「それでは私が魔法でお風呂を入れて差し上げましょうか?」

「部屋の中でできるの?」

「はい、私の魔法はミウ様のために日々進化していますから」

「うふふ、きんちゃんドヤ顔だぁ」

「ふふふ、美羽様のお役に立てるなら、自然にドヤ顔にもなってしまうのです」

「えへへ、そうなんだぁ。じゃあ、お願いしようかな」

「はい、お任せください」


 きんちゃんが銀色に光ったと思ったら、部屋の真ん中に美羽がすっぽり入りそうな水の玉が現れた。

その水の玉からは湯気が出ている。


「わあ、あったかそう」

「はい。すでに温かいです。ですが、ちょっと形を整えますね」


 そう言うと立方体のようになった。

ちょうど、バスタブのような形だ。


 それが床スレスレに降りてくる。


 美羽は指を刺してみるが、指が押し戻される感覚があった。

つついてみると、プルンとゼリーのように揺れる。

美羽はパァと嬉しそうな顔になってツンツンとする。

プルンプルンと揺れながらも全く弾ける様子がなく、美羽は楽しくなって思い切り腕を突き入れた。

すると今度は抵抗なく美羽の腕が根元まで入って、着ていたセーラー服が濡れてしまった。


「濡れちゃった……あはは、不思議ねー」

「お湯の外側を魔力で包むことによって、形を維持しています。このまま中に入れますよ」

「ほんと? じゃあ入ろっかな」


 美羽はウキウキしながら裸ん坊になった。

期待した顔をしてきんちゃんを見ている。


「どこからでも入っていいですよ」

「やった」


 そう言うが早いか、美羽は頭からお湯の真横に飛び込んだ。


 どっぷん


 音を立ててお湯は美羽を受け入れた。

美羽はお湯の中に沈んだ状態になり、一瞬もがく。

そして、上に向かって水をかくようにして、頭を水面に出した。

驚いた顔をしていた美羽はすぐに笑顔になった。


「ぷはぁー。あはは、びっくりしたぁ。私泳げないんだった」

「ふふふ、美羽様はヤンチャさんですねぇ」

「えへへ、びっくりしたけど面白かった」

「そうですか、何よりです」


 美羽は思いついたようにキンちゃんに聞く。


「ねえ、水に浮かぶってどうするの?」

「美羽様の知識にもありますよ。思い出そうとす」

「えぇー、きんちゃんが教えてよぉー。思い出すの面倒くさいぃー」

「ふう、仕方ないですね。……いいですか、浮かぶには力を抜いて、息を大きく吸って、仰向けになって、体を伸ばすのです。

最初のうちは両手も広げた方がいいですよ」

「よし! やってみる」


 力を抜いて、大きく息を吸って体を大きく広げてみた。

きんちゃんはそれに合わせてお湯の形も平たく横に大きく変化させた。


概ね、浮かべてはいるのだが、しかし、お尻が沈んでしまう。


「耳までお湯につけるぐらい下げれば、自然に浮きますよ」

「耳までね」


 美羽は頭を下ろして、ゆっくり耳までお湯につけた。


 すると、体は無理なく浮いて、体の重さを全く感じなくなった。

そして、水の音以外何も聞こえなくなった。


(うわぁ〜、気持ちいい。浮かぶって気持ちいいなぁ。静かだし、異世界にいるみたい。てへ、異世界だった)


  美羽は時間を忘れて浮かび続けた。

あまりの心地よさに、知らないうちにうとうとしていた。


「……ま」

「み……ま」

「美羽様」


 目を開けた美羽の目には視界いっぱいに広がったきんちゃんがいた。


「うわ!? ゴボゴボゴボ」


 美羽は慌てて起きあがろうとしたので、沈んでお湯をたっぷり飲んでしまった。


「美羽様! 大丈夫ですか?」

「ゲホ、ゴホ、ウエー、飲んじゃった。ひどいよきんちゃん」

「申し訳ありませんでした。驚かせる気はなかったんです」

「けほ。……どうしたの?」

「いえ、あまり長く入られると、湯当たりしてしまいますから、気持ちよさそうでしたけど、起こしたんです」

「そっか。ありがとう」

「それでは、体を洗いますので、立ってください」


 そう言われて、美羽が立つと、お湯がそれに合わせて上方に長い長方形になる。

すると、お湯が泡立ち始めた。

その上、高速で回転する。

そして流れの向きが常に変わる。


 泡と水流の力で汚れを落としているのだ。


 そして、お湯の一部が塊から離れて、浮かんできて美羽の頭をすっぽりと覆った。


「わわ」


 美羽は少し慌てた。が、暖かいのでうっとりとする。

そして、そこでも泡立ち水流が起こる。髪を洗ってくれているのだ。


「あ〜、気持ちいい〜」


 さらにもう少し小さいお湯の塊が目の前に現れて、美羽の顔の前で広がった。


「美羽様、息を止めて顔をつけてください」

「は〜い」


美羽が顔をつけると、今度は水流は起きずに大量の微細な泡が顔にぶつかってきた。


(おー、パチパチしてるみたい)


 しばらくしたら、一度顔をあげ息継ぎをして再び顔をつける。


(この泡って空気だよね。息できるのかな?)


 美羽は息を吸ってみた。

できるわけがなかった。


(!?)


 大量の水が口に入ってきて、それが気管にまで入った。

たまらず顔を上げる。


「ゲホッ、ゲホッ、うえ〜ん、きんちゃ〜ん」

「だ、大丈夫ですか? 美羽様。一体どうしたんですか?」

「お湯の中で泡を吸えば息ができるかと思ってやったらできなかった〜」

「ふふふ、幼児とはそうやって色々体験して成長していくんですよ」

「うえ〜ん、きんちゃんのバカァ〜」

「ふふふ」


 入った後はきんちゃんがきちんとお湯を収納した。(後で捨てる)


 今はきんちゃんの風魔法で温風の小さな竜巻を作って、体を乾かしている。


「これも気持ちいいねぇ。あったかさがちょうどいいよぉ〜」


 桜色の髪が温風で揺れ、桜色の瞳を気持ちよさそうに細めた。


「これ、毎日やってほしいなぁ〜」

「もちろんいいですよ」

「やったぁ。あ、そだ。クララとレーチェルも一緒にできる?」

「もちろんできますよ」

「おおぉ、それじゃあ、次の目標は3人できんちゃん風呂だぁ」

「ふふふ、きんちゃん風呂。そう言ってもらえて光栄です」

「楽しみだなぁ〜」


 帝都の夜は明るい声と共に更けていく。

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