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女神様の使い、5歳からやってます  作者: めのめむし
第3章 帝都編1

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第32話 市場

 翌日、美羽は商業ギルドに来ていた。

サシャが案内すると言ったのだが、他にも見てみたいところがたくさんあったので、付き合わせるのも悪いから断った。


 商業ギルドに来たのは、治癒院を作るための店舗を貸してもらうためだ。


「お店貸してくれるかね、きんちゃん」

「ええ、ちょうどいい店舗があればいいんですけど」


 ギルドの中に入れば、いかにも商人といった人たちが多くいて、中には美羽のことを好奇の目で見てくる者もいた。

その多くが美羽の苦手な大人の男の視線だ。

オドオドしそうになるが、気合いを入れ直す。


(負けちゃダメ。舐められたら、酷い目に遭うんだから)


 背筋を伸ばして、胸を張って受付に歩いていく。

受付に行くと綺麗な20代前半くらいの女性が出迎えてくれた。


「あら、お嬢ちゃん、おはよう。どうしたの? おつかいかな?」

「おはよう。私は小桜美羽。相談があってきたの」

「私はエリーよ。どんな相談かしら?」

「お店を借りたいの。いいお店ないかと思って」

「え? お嬢ちゃんが借りるの? もしかして、お嬢ちゃんはプルノンかしら?」

「ううん、小人族じゃないよ。私が小さいのは5歳だから」

「まあ、5歳なの? そんな歳で、どんなお店をするの?」

「治癒院だよ」

「え、その歳で、治癒魔法が使えるの?」

「うん、治癒は得意だよ。その練習のためにも治癒院を作って修行したいの」

「それなら、治癒院を作らなくても、どこかの治癒院に入っても治癒ができるわよ」

「うーん、修行のためにもできるだけ多くの人を見たいから、安くやりたいの」

「いくらくらいでやろうと思ってるの?」

「銀貨1枚」

「なるほど、安いわね。安いって言われている治癒院の5分の1ってところかしら。

それじゃあ、普通の治癒院には合わないわね」

「でしょ。だから、いいお店ないかな?」

「あいにく今は大きなお店ばかりなのよね」

「あまり大きくなくてもいいけど」

「予算はひと月にどれくらいかしら?」

「銀貨50枚くらいかな」

「50万シリルね。十分あるわ。ずっと使うの?」

「ずっとかは分からない。試しにやってみるだけだから」

「それだったら、市場でテントを張ってやるのもいいと思うわよ。

それなら、1日3000シリルだから、節約にもなるし、やめるのも簡単よ。

テントはお金さえ払っていれば、貼りっぱなしでいいから、大人の人に最初だけ手伝って貰えばいいんじゃない?

手が必要だったら、ギルドで誰かに頼んであげるわよ」

「そっか、それでもいいかな。そうするよ。人はいらないかな」

「テントはどうする? ギルドで貸すこともできるけど」

「売っているところを教えて? そこで買ってくる」

「ええ、いいわ。場所はどのくらいの期間かりる?」

「とりあえず1ヶ月にしようかな」

「ええ、わかったわ。銀貨9枚ね。それと、商売すると税金として毎月銀貨5枚がかかってくるから、ここに納めに来てね」

「じゃあ、税金は先に2ヶ月分払っておくね」


 きんちゃんが銀貨を19枚出した。

エリーはきんちゃんにも空間から突然出てきた銀貨にも驚いた。


「さっきから気になっていたんだけど、そのお魚は何? 魔物? それに収納魔法?」

「お魚はきんちゃん。魔法生物だよ。それと、収納魔法はあってるよ」

「魔法生物なの? 誰かが作ったのをもらったの?」

「私が作ったんだよ」

「魔法生物に収納魔法って、あなた本当に5歳?」

「そうだよ。色々事情があって、できるようになったの」

「そ、そうなのね。……場所を説明するわね」


 エリーから、市場の中のテントを出していい場所を聞いて、テントを売っている場所も聞いた。

商業ギルドから出ると、街に歩き出す。


「まずは、テントを買わないとね。

あと、何が必要かな。きんちゃん」

「美羽様と患者さん用に椅子を何脚かと、重症者のためのベッドもあったほうがいいでしょう。

それは家具屋で買うか作って貰えばいいです」

「分かった。じゃあ、テント屋さんの後、家具屋さんに行こう」

「はい、それと用事を済ませてからでいいですけど、食事をきちんとしてくださいね」

「うん、分かったよ」


 美羽はテント屋に着くと、テントの希望をきんちゃんが言った。

職人は喋る魚に驚いていたが、魔法生物ということを聞いて、二度驚いた。


 希望通りのものは、すでにあるテントに付け足すだけでできるので、明日にはできるようだった。


 家具屋では、仕事が立て込んでいて、ベッドは3日かかるそうだが、椅子はすでに出来ているものがあったので、6脚買った。椅子は全てきんちゃんが収納して、驚かれた。


「じゃあ、市場に行こうか?」

「はい」


 美羽は市場まで歩いて行った。

市場に来ると人がごった返している。

中には首輪をつけた犬や猫、ワニの獣人やドワーフもいた。


「きんちゃん、首輪つけてる人って奴隷だよね」

「はい、そのはずですね。奴隷狩りで捕まって連れてこられたのでしょう」

「奴隷狩りか。酷いね」

「人間は他の種族にあまり好意的な感情を向けないようです」

「そうなんだね。なんでそんなことするのかな?」

「純粋に労働力が欲しい時もあれば、女性は性奴隷などにして、子供は愛玩用にしていることもあるようです」

「気持ちわるい! 本当にそういうことする人嫌い」


 美羽は心底嫌そうな顔をして、舌を出した。

美羽は理不尽を人に強いているのを見るのが嫌なのだ。


 そうこう言っている間にギルドに指定された場所についた。


「ここですね」

「じゃあ、椅子を出してもらえる? あと家具屋さんでもらってきた看板用の板と塗料も出してね」


 美羽はレスフィーナにもらった知識の中に文字の事もあるので、字が書ける。

しかし、上手に書けるかというと、実際に書いたことがないから上手に書けるわけがない。

かなり、悪戦苦闘しながら、看板に塗料でお店の名前を書いた。


「ミウの治癒院 銀貨1枚」


 と、知識を振り絞って書いた。


 看板を目立つところに置き、椅子を出す。

きんちゃんを抱っこして、椅子の一つに座った。


 しばらく経つが患者は誰もこない。

この世界では治癒魔法はかなり珍しい。

亜人の中には治癒魔法を多く使える種族もいるが、人間はあまり使えない。

病気には薬、怪我には怪我用のポーションが多く使われている。

治癒魔法を使う者もいるが、希少性のためにかなり高額になっている。

相場は骨折などで金貨1枚である。

もっとひどければ、かなり高額になる。

ちなみに治癒魔法では病気までは治せない。美羽の治癒は病気も治せるが。


 だから、どう見ても幼女にしか見えない女の子が治癒院と言っても誰も信じない。

しかも銀貨1枚という破格なのだ。尚更信じられない。


 しかし、治癒院と看板を出して、幼女がちょこんと座っているのだ。

かなり目を引いた。注目だけは集まっている。

多くの人が遠巻きにして興味深そうに眺めながら過ぎ去っていく。


「きんちゃん、こないねぇ」

「最初はこんなものではないですか? その内、美羽様の実力を目の当たりにした人が勝手に口コミしてくれますよ」

「そっかぁ」


 美羽はあまりにも暇だから、歌を歌い始めた。


「どんぐりころころどんぐりこ」


 体を左右に振って楽しく歌っていると、隣の屋台や通り行く人たちが微笑ましく見てくる。


 3歳くらいの小さな男の子が美羽の歌を聴いて、母親の手を離して、走って向かってきた。

しかし、急ぎすぎて転んでしまった。


 びっくりした男の子は泣き出した。


「えーん」

「急に走るからよ。大丈夫?」


 母親が慌てて近寄って抱き起こすが、泣き止まない。

見ると、膝小僧をざっくりと切れてしまっている。

運悪く、鋭い石があったようだ。


「まあ、大変。どうしよう」


 周りの人も足を止めて眺めている。

そこに美羽が来て、母親に言う。


「ねえねえ、サービスで治してあげるよ」

「え、治すってどうやって」


 それには美羽は答えないで、男の子に向かって微笑みながら言う。


「すぐに治してあげるからね」


 美羽が男の子の膝に手を当てると、手のひらから桜色の光が溢れ出す。

漏れ出した光からは桜の花びらがあらわれる。


 すると、男の子の膝はすぐに綺麗に治ってしまった。

周りの人もこの光景に驚いていた。

男の子は痛くなくなったことを喜んでいる。


「ああとう」

「うん、いいよ」


 美羽は返事をしながら頭を撫でてあげる。


 母親は呆気に取られていたが、我に帰って口を開いた。


「お嬢さん、ありがとうね。いくらかしら?」


 それには、美羽は笑って首をふる。


「いいよ。さっきも言ったよ。サービスサービス」

「ええ、でもそれじゃあ」

「いいの、いいの。気にしないで」


 男の子は美羽の袖を引っ張る。


「どうしたの?」

「おうたおしえて」

「どんぐりころころ?」

「うん!」

「いいよ、じゃあ、そこに座って」

「あ、ママもそこに座ってね」


 美羽は二人を椅子に座らせて、どんぐりころころを男の子に教えてあげた。

すると、珍しい歌だからか、人だかりができるくらい人が集まって、みんなで美羽に教わった。


 最後にはみんなで合唱をして楽しんだ。


「別に今日はお客さん来なくっていいね」


 美羽は見知らぬ人たちと楽しいいひと時を過ごした。

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