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女神様の使い、5歳からやってます  作者: めのめむし
第3章 帝都編1

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第31話 メイドサシャ

 マーヴィカン帝国の領地持ち貴族は普通、帝都にも屋敷がある。

領地で若い後継者が統治の経験を積んでいる間、当主は帝都に住んだり、逆に当主が領地で統治をして、後継者が学校に通ったり、社交界で人脈を作ったり、家によってさまざまである。


 ルッツ家では、今年からカフィが学校に通うために、帝都の屋敷に使用人たちと住んでいた。

今回、ポンデビグナにいたのは里帰りしていた時に、視察の経験のために同行したのだった。


 ただ、どちらにしても冬場になると多くの貴族家の当主が帝都に集まるので、1年のうち数ヶ月は帝都で過ごす。


 現在は秋だが、ルッツ家に関しては、転移ゲートの報告と対策を練らなければならないため、急遽帝都で過ごすことになった。


 一行の乗った馬車が屋敷に着くと、執事とメイドが左右に並び、代表して執事長とメイド長が挨拶をしてきた。


「「旦那様並びに奥様、カフィおぼっちゃま レーチェルお嬢様、おかえりなさいませ」」


 執事長は40代半ばほどの男性で髭を蓄えてメガネをかけている。

メイド長は40歳前後の女性で、髪を肩口で揃えている。顔立ちが整っていて、若い頃はさぞかし美人だったことが予想できる。

 二人にモーガンが返した。


「うむ、ライオネル、メリンダ、ご苦労。変わりないか?」

「はい、つつがなく執り行えております」

「何よりだ」

「皆様もお元気そうで、安心いたしました」

「うむ。それで、紹介したいお方がいる」

「そちらのお子様でしょうか?」

「うむ。こちらはコザクラミウ様だ。我が家の賓客としてもてなしてくれ」

「コザクラミウ様、ルッツ家の帝都邸で執事長を務めます、ライオネルと申します。

何かありましたら、お気軽にお声がけくださいませ」

「コザクラミウ様、同じくメイド長を務めます、メリンダと申します。私にもお気軽にお声がけください」

「小桜美羽だよ。美羽って呼んでね」

「かしこまりました、ミウ様。ミウ様の身の回りのお世話をさせていただく者を付けさせていただきます。

サシャ、こちらに」

「はい」


 メリンダが呼ぶと、10代半ばほどの茶色い髪の優しそうな少女が前に出た。


「美羽様、こちらはサシャと言います。これから、屋敷にいる間の身の回りのお世話をさせていただきます」

「サシャです。ミウ様、よろしくお願いします」

「美羽だよ。よろしくね。あ、そうだ。この子は金魚ちょうちんのきんちゃん。魔法生物だよ」

「きんちゃんです。よろしくお願いします」

「ほう、魔法生物ですか。初めてお目にかかります。きんちゃん様、ライオネルと申します。よろしくお願いします」


 ライオネルが魔法生物という言葉に食いついてきた。

食い入るようにきんちゃんを見つめている。


「あらあら、ライオネル。そんなに見つめては失礼ですよ」

「ああ、これは失礼しました」

「いいよ。珍しいんでしょ」


 全員の美羽ときんちゃんに対しての自己紹介が終わると、モーガンが口を開いた。


「美羽様、それではディナーまでの間、疲れを癒してください」

「うん、分かった」

「おねえさま、いっしょにおふろにはいりましょう」

「やった。お風呂たのしみ」

「あら、レーチェル、ミウちゃんとお風呂? それなら私も一緒に入ろうかしら」

「おかあさま、すてきですわ」

「うん、ジョディちゃんとお風呂入りたい」

「それじゃあ、一度お部屋に行ってから、準備が出来たらお風呂に集合ね」

「分かった」

「わかりましたわ」


 美羽はサシャに客室まで案内された。

大きなベッドと机とティーテーブル、ソファーが置いてある。


「うわぁ、大きい部屋だね」

「はい、こちらはルッツ家でも大切なお客様用のお部屋でございます」

「そうなんだ。嬉しい」

「お風呂に呼ばれるまでにまだお時間がありますので、お茶をお入れいたしますね」

「お茶? 苦いの?」

「苦いのが苦手でしたら、苦味のないハーブティーをご用意しますが」

「うん、それがいい!」

「かしこまりました。少々お待ちくださいね」


 そう言って、サシャは出て行った。


 美羽はベッドを見るとウズウズしてきた。


「ダメ、飛び込んだりしたら。はしたないから」


しかし、ベッドは来いとばかりに存在感を放っている。


「……じゃあ、ちょっとだけ。

えーい」


 美羽はベッドに向かって思い切りダイブした。


 ボヨン!


「うわーふかふか。ちょっと、跳ねてみようかな?

……ちょっとだけ」


 美羽は強くなった脚力を使って跳ねた。

5歳児にしては驚異的なジャンプをする。


 ポヨンポヨン


「わーい、跳ねる跳ねる!」


 跳ねながら、横に一回転して見る。

 

「キャハ」


 今度は、前方宙返りをしてみる。

美羽の運動能力はここ数日で上がっているので難なくできる。


 ポヨン


「キャハハ」


 今度は、後ろに回ってみる。

後方宙返りだ。


 ポヨン


 これも上手くできた。


「キャー、楽しい」


 もう一回、後方宙返りをすると同時に、部屋の扉が開き、サシャが入ってきた。


「美羽様、お待たせしました。あ……」

「あ……」


 美羽は真っ赤な顔になって、着地と同時にその場に座り込んだ。


「ご、ごめんね」


「あ……いえ、お子様はこれぐらい元気なのが当たり前ですので、恥ずかしがる必要ないですよ」


 そう言って、サシャがニコッと微笑みかけてくる。

美羽ははにかみながら笑う。


「ありがとう」


 サシャは、美羽の笑顔があまりにも可愛かったので、見惚れてしまった。


「か、可愛い……」

「え?」

「あ、いえ。お茶の準備ができたので、こちらにいらしてください」

「はーい」


 サシャに入れてもらったハーブティーは花の香りがして、とてもおいしかった。


「サシャ、これ美味しいよ」

「それはよかったです。これはコリルフラワーという、私の故郷で多く獲れる花のハーブティーなんです」

「どんな花なの?」

「赤くて、親指くらいの大きさの花です。とても綺麗ですよ」

「もしかしてサシャの持ってきたものを淹れてくれたの?」

「ええ、美羽様が喜んでくれるかと思いまして」

「嬉しい。サシャ、ありがとう」


 美羽は嬉しそうに微笑んだ。


(きゃー、可愛い。この笑顔だけでミウ様の担当になってよかった!)


 サシャはすでに美羽の笑顔に虜になっていた。


 今年16歳のサシャはルッツ伯爵家の領地の近隣の男爵家の出身である。

貧乏男爵家の長女で兄が2人妹が3人いる。

妹は12歳と10歳と8歳でサシャが妹たちの面倒を見てきた。

だから、5歳の美羽は妹のようで、それだけで可愛く思う。

その上、美羽から溢れている神気によって神々しくも感じる。


 美羽に短時間で夢中になるのも無理はなかった。


 美羽とサシャは主に伯爵家と出会った経緯などの話をした。

サシャは興味深く聞き入り、時には驚き、時には怖がって、美羽の話を引き出した。

美羽も気持ちよく話をさせてくれるサシャのことが好きになった。

話は、他のメイドが風呂の準備が出来たと伝えにくるまで続く。


 風呂には、サシャもついてきた。


「ミウ様、お体を流させていただきますね」

「うん、ありがと」


 サシャは美羽の体を洗ったが、終始デレデレとしていた。

それを見たジョディは、事情を知らないサシャが、使徒である美羽に不敬ではないかと心配したが、美羽もニコニコとしていたので、余計なことは言わなかった。


「ミウ様、抱っこして差し上げましょうか?」

「うん、してしてー」

「うふふふ。さあ、こちらにいらしてください」


 サシャが美羽を前向きに抱っこして、湯船に浸かった。


「ミウ様ー、気持ちいいですかぁ」 

「うん! 気持ちいいよ」

「わ、私に抱っこされるのはどうですか?」

「サシャに抱っこされるの好きー」

「うふふ、嬉しいです」


 サシャが美羽を抱きしめる。


「きゃー」


 美羽も、笑顔になり声を上げる。


 (サシャをつけて正解だったようね。ミウちゃんも喜んでいるし)


 ジョディは微笑ましく見ていた。

しかし、やきもちを焼いている者もいる。


「サシャったら、わたくしがおねえさまをおふろにおさそいしたのに、ずるいですわ」

「あら、レーチェル。美羽ちゃんが取られて寂しいの?」

「さびしいですわ。おねえさまとなかよくしたかったですのに」

「じゃあ、私が抱っこしてあげようか?」

「ううう、じゃあ、おかあさま、おねがいしますわ」

「仕方ないっていう雰囲気の言い方が、微妙に傷つくわね。まあいいわ。レーチェルいらっしゃい」


 風呂を出る時も、サシャが体を拭いて、服まで着せてくれて、至れり尽くせりだった。

美羽もサシャもずっとニコニコしている。

やきもちを焼いていたレーチェルもなんだかんだ言って、美羽のそばにいられるからご機嫌のようだ。


 風呂から上がったら、直接食堂に行ったが、和やかな雰囲気の美羽たちに対して、先に食堂で待っていた男性陣は寂しそうな顔をしていた。


 モーガンもカフィもいつもではないが、一緒に風呂に入ることがあった。

しかし、今日は美羽がいることから、ジョディに一緒に入ることを禁止されていたから寂しい思いをしていたのだ。


「お母様、やはり今度は僕も一緒に入らせてください」

「おにいさま、それはダメよ。おねえさまがはいりたくないんですもの」

「うっ」

「そういうことよ、カフィ。我慢なさい」

「おにいさまはおとうさまとはいってください」

「僕はミウ様と入りたいんだよ」

「私は嫌よ」

「ううう」


 美羽に再びキッパリと断られて、涙目になってしまうカフィだった。


 食事は、今までよりも豊富な食材をふんだんに浸かった料理で、とてもおいしかった。



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