第15話 神気結界の練習
翌朝、美羽は外に出ていた。
動きながらも神気結界を使えるように練習をするためだ。
ゆっくり歩き、神気結界を発動してみる。
光り出しはするのだが、すぐに霧散してしまう。
何度やってみても同じだった。
「うーん、難しいなぁ。でも、できないと昨日みたいな時は守るものが何もないんだよね」
ゴブリンキングにレーチェルが襲われ、助けに行った時に走りながら神気結界を張れれば、ゴブリンキングの攻撃は防げた。一歩間違えれば死んでいたのだ。
美羽は、それを思い出して身震いする。
「うん、頑張る! 私」
今度は動かないで発動してみる。
発動をし始めたところで一歩動く。
少しだけ、発動し続けたがすぐに消えた。
「やった、少しだけ続いた。これで練習すればいいかも」
美羽はぴょんぴょん跳ねて喜ぶ。
そこに街を一回りしていたきんちゃんが戻ってくる。
「美羽様、うまく行ったのですか?」
「ちょっと長く発動しただけだけどね」
「おお、一歩前進ですね」
「うん! 前進前進!!」
「その調子で頑張りましょう」
「よーし、頑張るよぉ!」
感覚を忘れないように、またやってみる。
発動させながら、ソロ〜っと一歩出てみる。
美羽の真剣な顔にきんちゃんが微笑む。
途中で消えてしまったが途中までは確かにできた。
美羽は、楽しくなってきた。
スキップをしながら発動してみる。
今度は最初から動いていたのに途中までできた。
「やったー。ラッテーラー、ラッテーラー」
「ラッテラッテラッテーラー」
美羽が掛け声をあげれば、きんちゃんが後を追いながら応える。
誰にも習ったことのない、即興の踊りを踊る。
美羽もきんちゃんもくるくる回ったりぴょんぴょん跳ねたり手を振り回した。
なかなかのリズム感である。
楽しそうにそこら中を舞回り、何度も何度も神気結界の発動を練習した。
美羽が舞えば舞うほど桜の花びらが散って、幻想的な光景が広がる。
素人の踊りのはずが、神気を纏えばそれだけで、天使の舞になる。
「きれい」
「うわぁ」
「本当、美しいわね」
レーチェル、カフィ、ジョディの3人が美羽と美羽の描く桜の軌跡を陶然として見つめていた。
それには気づかず、美羽は楽しそうに桜と共に舞っている。
「おかあさま、わたし、おねえさまのおどり、ほんとうにすきですわ」
「僕も……」
「そうね、2人とも。私も好きよ。あれを見れている私たちはついているわね。まさに天使の舞だもの」
「「はい」」
美羽が踊り終わるまで、3人はずっと見ていた。
「ふー」
「美羽様、ずいぶん持続時間が増えましたね」
「そうだね。どんどん上手になっているのがわかって楽しいよ」
「はい、この分でしたら、実戦で使えるようになるのもすぐでしょうね」
「うん! 戦いで使うのは怖いけど、自分を守らないとね」
ふと、3人が見ているのに気がつく。
「あれ、レーチェルたちがいる」
「今気が付きましたか? かなり前からいましたよ」
「そうなの? 全然気づかなかったよ」
「気配察知も練習しないと危険ですね」
「うーん、やることいっぱいあるなぁ」
「そうですね、1つずつ取り組んでいきましょう」
「うん、そうだね。おーい!」
美羽は3人に笑顔で呼びかける。
3人も手を振りかえしてきた。
「おねえさまー、あさごはんにしませんかー」
「はーい」
美羽は3人に向かって駆け出した。
美羽が駆け去った後に1枚の桜の花びらが泳いだ。
朝食後、お茶や果実水を飲みながらくつろいでいると、ジョディが口を開いた。
「美羽ちゃんは今日の予定は?」
「冒険者ギルドで残りの報酬をもらうのと、教会に行こうかなと思ってるよ」
「報酬は御使い様とはいえ、小さい子が持って歩くとよからぬことを考える輩が出てきてもおかしくないのよね。
マジックバックを貸しましょうか?」
「マジックバッグって何?」
「あら、知らないわよね。このバッグよ。容量以上のものが入るの」
そう言いながら、座ってた椅子をバッグに入れた。
「すごいすごい」
「これはこのテーブルの大きさくらいしか入らないけど、あると便利よ」
「あ、でも大丈夫だよ。きんちゃん」
すると、きんちゃんの目の前に昨日モーガンから貰った報酬が出てきた。
「まあ、魔法なの?」
「うん、そうだよ。私はまだ使えないけどね」
すると、きんちゃんが補足を入れる。
「使えないことはないのですが、美羽様はまだ魔力のコントロールがうまく行っていないので、周囲を巻き込んで事故になりかねないのです」
「えへへ」
そう言われて、なぜか美羽は照れてしまう。
「そ、そうなのね。それは危険ね。でも、きんちゃんが隠せるなら、大丈夫ね」
「うん!」
「おかあさま、わたしもいきたいのですけど」
「僕も」
「あなたたちはダメよ」
「どうしてですか!」
「あなたたちが行くと護衛を多く出す必要があるわ。それでは美羽ちゃんに迷惑がかかるの。
それに美羽ちゃんも1人になる時間も必要よ」
「それはそうですが」
レーチェルとカフィがしゅんとする。
美羽が、そんなレーチェルを見て、微笑みながら、頭を撫でてあげる。
「戻ってきたら、遊ぼうね」
「おねえさま……はい! まってますわね」
そこでカフィが声をあげる。
「あ、あの」
美羽がカフィを見て、首を傾げる。
その仕草がものすごく可愛い。
カフィはそれをみるだけで、喋れなくなってしまった。
「……」
「おにいさま、なんですの? おねえさまがまってますわよ」
「い、」
「い?」
「いや……何でも……ないです」
そんなカフィを見て、ジョディは思う。
(他の女の子なら背中を押してあげるんだけどねぇ。相手が御使い様だから、自分の子を勧められないのよね。
自分で頑張るか、折り合いをつけてね。カフィ)
カフィはしょんぼりしてお茶を飲んでいた。
そんな様子を見た美羽は
(いっしょに遊びたいのかな? でも、男の子は面倒だからいいや。ごめんね)
美羽は大人の男は恐れているが、男の子供に対しては恐れているということはない
しかし、あまり関わりたいとも思っていなかった。
カフィからしてみたら、美しい美羽と仲良くなりたい。あわよくば結婚までしたいと思っている。
しかし、御使いの美羽にどう話しかければいいかわからないのがジレンマになっているのだ。
その気持ちをなんとなく察してしまう美羽が、面倒に思い余計に避ける原因になっているのだが、そこをカフィに気付けというのも無理な話だろう。
ともかく、カフィの美羽に対するアプローチは続くことになる。
美羽はスルーし続けるのだが……。




