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僕の勝手気ままでアンオフィシャルなものがたり考  作者: 南瀬匡躬


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僕の思う、単語というアイテムの話ー時代相を交えてー

 以前、余興回でBGMと僕の創作にかかわるお気に入りの曲の話をしたことがある。個人的な所感である。今回は曲ではなく歌詞にみるファッション・トレンドや流行物のアイテムの話。時代相ってやつである。なので音楽にも少々関係はするが、メインは文筆の話である。物語の味付けの話でも一部参考になる。


 僕は普段から八十年代から九十年代の曲をよく聴く。この頃がインプット最盛期なのである。すると今ではあまり聞かれなくなったアイテムの単語が歌詞中にそこそこ出てくる。勿論、当時、これらの言葉は最先端のアイテムを歌詞の中に取り込んで、新しい時代や日常の演出として使われていたものである。そう時代相を歌詞や物語の上で取り入れ最新アイテムを活かして「現代生活の今」を演出する雰囲気的な手法だ。


 明治や大正の文豪たちが随筆や作品中で蓄音機やラジオ、デパート、自転車、自動車、円タク(一円タクシー)、モボとモガ、映画館、帝都、観劇などの単語を作中で使うことによって、時代的な都市化の雰囲気や時代相そのものにその当時の最先端の現代コンテンポラリーを刷り込む表現に成功している。この時代相には土地、銀座や浅草といった当時の繁華街の地名、名詞も使われることも多く、演出上とても効果があった。

 逆の意味の時代相でもこの方法は使えて、歴史小説のジャンルでのアイテムにもなる。過去や歴史上、その時代に登場したり、頻繁に使われているものをさりげなく紹介文で記すことで物語の時代相や背景で雰囲気を醸すのにも使えている。

 戦前物の書いている人なら漫画『ハイカラさんが通る!』に登場するアイテムで埋められるはずだし(女学生、軍人、震災、竹久夢二などなど)、外国なら『ジャーロックホームズの冒険』に出てくるようなアイテム(キュー植物園、インド遠征、マントルピース、二頭だての馬車、アイルランドやスコットランド方言などなど)もその時代を表す記号として読み手に認識されるはずである。


 そういったものに照らし合わせると僕の聴く音楽の歌詞の中には八十年代、九十年代の時代相や雰囲気を呼び起こす当時最先端の単語がちりばめられている。あまりこの時代を描かない僕には用のないアイテムなのだが、自分が青春時代を送った頃なので単語を聞いているとそこそこ懐かしさはある。


 テレフォンカード、オレンジカード、発車ベル(今はチャイムっていうよなあ)、クラッチ(いまやAT車が多くなったもんな)、キャッチホン、コークハイ(今は格好いいお酒はハイボールかな?)、ビデオデッキ、マイコン(PCのこと)、ブラウン管(テレビの比喩でよく使った)、ドーナツ盤(レコード盤)、聖徳太子(一万円札の俗語。のちに諭吉)、ナタデココ、ポケベル、ピッチ(PHS)、たまごっち、ティラミス、ベイエリア、ジュリアナ、ネガフィルム、現像、カセットテープ、MD、エイトトラックテープ、CDチェンジャーなどなど枚挙に(いとま)もない。


 時代のアイテムや単語を活かすことによって、その時代に読者を引き込むというのは重要だ。映像という武器を持たない文章物語にとっては、それらは大切な時代相の小道具なのである。

 映画の『三丁目の夕日』などではCG映像を上手に使って時代相を表現している。都内を走り回る廃止された都電や作りかけの東京タワー、コーラの販売開始、純文学の大ブーム、ダンスホール、集団就職の上野駅、カレー粉という本当に粉から作られるカレーライスを「ライスカレー」という単語変化、児童雑誌の台頭。これらを並べられただけで僕の心は一気に一九五〇年代にタイムスリップする。同じ理由で『バック・トゥー・ザ・フューチャー』でも一九五〇年代のアメリカが演出されている。文章屋は、言葉、単語でこれらを表現するため、一種の職人的技術(ノウハウ)のような気もしなくない。


 媒体は違えど懐古感や時代相の演出というのは、風景や情景と同じレベルで、いやその軸の一部としてアイテムや単語が僕たちをその時代に一気に(いざな)ってくれていると思う。なので、バブル期のディスコに集まるモブ群やタクシーで万券を颯爽と渡すモブの金持ちなどの映像を出す代わりに、ジュリアナの名称やボディコンなどという単語がその時代を演出してくれるのだ。


 最後に初歩的な話だが、こんなバブル期を横目で見ていた同時代を生きた僕だが、実態は貧乏学生であり、扇子を回してお立ち台で踊るすごい格好のブラウン管の中のお姉さんたちに興味も持たず、おとなし目の女性としかお付き合いしていなかった。車も持っていなかったし、パーティー券を売り歩いてもいないし、まじめに大学に通い、神話や文学の授業を楽しみに、オーディオ屋のバイトをしていた学生だった。同じ時代に存在していたとしても、ただいただけで体感や共有はしていない。古今東西、文学好きとはそんなもんである。今でいう陰キャなのかもしれない(笑)。スピルバーグの映画、南野さんの「ハイカラさんが通る!」や薬師丸さんの「探偵物語」、そして大滝さん、杉さん、佐野さんの軽快なナンバーをヤマハやケンウッド、ソニーのオーディオで聴いていた音楽好きで文学好きな大学生だった。あしからず。

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