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うわさのびっぐまうすとうばつ

「もふったー」

「結構なモフりでした」

「はーはーはー」


 全力でもふりまくって満足そうな二人にと対照的に純華ちゃんはなんでそんな事後のような表情と恰好なんですかね?

 髪も服も乱れまくって、紅潮した頬に荒い息遣い。

 すごくエロいです。

 普段は清純そうなのでギャップがすごいことに。

 なんとも愛でがいのある女の子だ。

 お陰様でレベルが一二に【めでる なな】に進化? した。

 相変わらず効果が謎なので、ありがたみより、ヤバみが増している気がする。


「ちょっと休んで汗を拭け。ついでにお弁当も食べておけ」


 ここは荒野フィールドが近いのでちょっとだけ気温が高い。

 そのうえ激しくもふりまくったものだから、皆汗びっしょりだ。

 少女たちの太ももや首筋に流れる汗がなんともエロい。

 その様子はひとさまには見せられないので、ちょっと早いけどお昼休憩するようにうながす。


「はーい。リザちゃんお休みしよ。純華ちゃん大丈夫?」


 一番元気のある千紗がリザが立ち上がるののに手を貸し、腰砕けになっている純華ちゃんに心配そうに声をかけた。


「だ、だいじょうぶ……です」


 大丈夫じゃないです、純華ちゃん。

 立ち上がろうとしているのに腰が抜けたかのように足に力が入らないみたいだ。

 まじでイッてない?


「しっかりしてー」


 千紗が肩を貸してようやく立ち上がった純華ちゃんは、そのままよろよろとテントの方へ連れられていった。

 前のバニーと違ってビッグマウスはVIT値高いからな。

 この階層ではありえないくらいレベルの高い千紗とリザ+純華ちゃんの全力もふりでも消滅することもなく、ただそこに佇む。


「なんかもう、悟り開いてないか?」


 頭のあたりをぽんぽんするとわずかながら現れるその表情は、悟りを開いた修行僧のようだw

 ここまでされて無抵抗とはガンジーもびっくりの非暴力平和主義には恐れ入る。

 これでダンジョンのモンスターなんだぜ?


 ビッグマウスなんてそこにいるだけで危険なので、通常なら見つけ次第討伐推奨案件だ。

 こんなに長い間生かしておく事はまずない。

 ほぼ完全に透明? というか保護色? なので、プレイ動画? としてもパントマイムでもしているようにしか見えず、地味なのであんまりネットにアップされることもない。

 ほぼ見えない上にネット上でさえほとんど見かけない不憫なやつだ。

 WIKIでも攻略方法:まずは見つける、話はそれからだ。としか書かれていなかったりする。

 まあ、それ以外書くこともないんだけどね。

 見つけてしまえば煮るなり焼くなり好きな方法で攻撃しまくればそのうち消える。

 非暴力平和主義など弱肉強食世界のダンジョンでは全く通じないのだ。


「おにーちゃん、もどったよー」


 お昼休憩を終えた三人が戻ってきた。

 ちゃんと汗も拭き、制汗剤でもふりかけたのか皆いい香りがする。


「早かったな。じゃあ、早速だが討伐しようか?」

「えっ? 討伐しちゃうの?」

「当たり前だ。ビッグマウスはそこにいるだけで危険なんだ。放置すると自分だけじゃなく見も知らぬ誰かが転んで怪我をするかもしれない。荒れ地とかで転んで岩に頭でもぶつけるとレベルが低いうちはあっさりHP全損するぞ」


 大地は立派な凶器だ。

 ダンジョン内の物質にはATKがあるからね。


「いくら可愛くてもモンスターだからね。今はおとなしいけど何らかの拍子に凶暴化しないとも限らない。それにこれは試験のときの講習会でも言ってたはずだ。見つけ次第討伐するようにって」


 これまで知られている全モンスター中、討伐難易度ナンバーワンの地位を欲しいままにし、気がつくとあっという間に増殖していて、モンスター溢れの一因にもなっているんじゃないかとも考えられているモンスターがビッグマウスだ。


 まさにねずみ算で増え続ける、迷惑極まりない存在。それがやつだ。

 それがこんなにあっさり見つかるってことは、かなり増殖していると見て間違いないだろう。

 ここで一匹くらい見逃してもたいしたことないと思うのは間違いだ。

 まだ生態? はよくわかっていないが、一説によると一日で二倍に増えるなんて言う見解を示す学者もいる。

 そうなればわずか八日で二五六匹一六日で六五五三六匹にもなってしまう。

 これは極端にしても、あっという間に増えるのは間違いない。


「うん、わかった。じゃあ、千紗がやる?」

「いや、まずは純華ちゃんにやってもらう」

「えっ、わたしですか?」

「そうだ。純華ちゃんはまだ大物倒したことがないだろ?」

「はい」

「だから大物を倒す大変さをここでちょっと体験しておこう」


 ボス部屋の最大ビッグマウスは更にこれより大きい。

 ほぼ自動車並みの重量だ。

 DEFは毛玉ほど高くはないので、低レベル者でもダメージは入るがVIT値が高く、それに連動するHPもむちゃくちゃあるので、倒すのはけっこう大変だったりする。

 もふりで多少HPが削れただろうが、そんなの屁の突っ張りにもならない。

 VITの高さは回復力にも影響するらしいから、多少ダメージを与えても時間あたりの攻撃力、いわゆるDPSが回復力を上回らない限り絶対に倒せないのだ。


「じゃあ、武器構えて。ごー!」

「やぁあああああ!!」


 純華ちゃんが武器(ポール)を構えてビッグマウスに振り下ろす。


「うっ、やっ、たっ、てぇ~い☆」


 どこかで聞いたことのあるような掛け声をかけながら鉄の棒(百均のジョイント・ポール)を滅多打ちする。


「はぁはぁはぁ……先生、これってダメージ入ってるんですか?」


 しばらく打ち続けても全く動じないビッグマウスくん。

 ほんとタフだねぇ。

 純華ちゃんは第二層では敵なしのレベル五。

 こちらはダメージを負わず相手にだけダメージを入れられるだけのステータスがある。

 しかしどう見てもダメージが入ってるのは純華ちゃんの方。

 せっかく拭いた汗が再び溢れ出している。


「純華ちゃんのATKなら間違いなくダメージは入っているよ。ただ武器がしょぼいから、おそらく入っているダメージはほんのちょっとで、こいつはHPや回復力もクソ高いから、このペースだと倒すのにはまだまだかかるね」


 ダメージが一〇入っても八回復されたら結局二しかダメージが入っていないてことだからね。

 これでHPが一〇〇〇とかあったら五〇〇回もぶっ叩かないといけないことになる。

 しかも休み無しにだ。

 休んだら更に攻撃回数が増えることになるからね。

 これが味方のタンクなら頼もしいばかりなのだが、敵なら厄介極まりない。


「そんなぁ~」

「千紗も手伝おうか?」

「そうだな。今度は三人がかりでやってみようか。標的は大きいけど互いにぶつからないように気をつけてね」


 連携というほどのことでもないが、狭い範囲に複数のメンバーがいたときの体験をさせるのにはいい機会だろう。


「やるぞー」

命令を受諾(オーダー アクセプト)

「みんな、ありがとう」


 三人が寄ってたかって叩き始める。

 千紗は左側、リザが右側、純華が正面を担当するようだ。

 相手はうごいていないからフォーメーションもクソもない。

 ただ足を止めて叩き続けるだけだ。

 いくら標的がでかいとは言え、うっかり鉄の棒を振り回せば隣に当たりそうな程には接近している。


「あまり横には振らないでね。長もので連携して戦うときは、基本的に上から下か下から上に攻撃するか突きを使う。当たらないと思っていても、横から誰かが割り込んでくるかもしれないし、よろけて攻撃範囲に入ってくる可能性もあるからね」

「「「はい!」」」


 接近戦中は自分の横ってまるっきり死角になるからね。

 車を運転していてスピードが上がると視覚が狭まると言われるように、集中しているときって、目の前しか見えなくなる。

 横に誰かが立っても気が付かずに打ち据えてしまうなんて事故が後をたたないくらいだ。

 なので複数人で連携して戦うときは、武器はよく目に入る正面から外さないことが大事だ。


「ふわぁ~」

「やりました」

「よ、ようやく……おわり……ですか、はぁはぁ」


 三人がかりで滅多打ちにしてようやくビッグマウスは光になった。

 みんな汗だくで体操着がちょっと透けちゃってるよ。


「おつかれさん。ドロップはっと」


 僕は下に落ちていた塊を抱えあげる。


「それってお肉?」

「ネズミ肉だな」


 ラップのようなダンジョン特有の膜に包まれピンク色したその塊は約一〇キログラムほどか。

 結構重い。


「もしかしてそれ食べられるの?」

「おう。結構うまい、らしいぞ」

「うへぇ」


 千紗が気味悪そうにうつむく。

 発見が難しいモンスターで僕も数度遭遇したことがあるだけだから、肉のドロップは初めて見る。

 ほとんどのドロップがスライムよりちょっとましなくらいの魔石だから、アイテムとしてはレア物だし、取得確率とすれば、遭遇率の低さもありスパーレアやウルトラレアと言ってもいいクラスだ。


「これでも買取価格百グラム千円だ」

「えっ! 千紗百グラム千円のお肉なんて買ったことないよ!?」

「和牛ですとA1クラスくらいでしょうか。そんなに高いわけじゃありませんね」

「たっ、高いよ! リザちゃん」

「買取価格だからね。末端価格(売値w)だと三千円から四千円ってところかな」

「なんでそんなに高いの?」

「そうだな。まずビッグマウスの肉はレアドロップだってことだな。ビッグマウスの討伐数が少ないしドロップ確率もレアだから市場に出回る数が少ない。その上味もA5ランクの和牛と比べられるくらいだから、値段もそれをベースにつけられる。まあ、ネズミ肉を好んで食べるひとがいない分割安? だけど、食べると経験値が入ると言われているから冒険者には人気な食材だ」


 ダンジョン産の食物には皆経験値があるとされ、できるだけレアで高レベルのモンスタードロップなら多くの経験値が入ると言われている。


「どうする? みんなで食べるか?」

「千紗はパス」

「妾も遠慮しておこう」

「わたしもネズミ肉はちょっと……」

「そうだな。ほっといても経験値は入るし。これでも売れば一〇万円くらいにはなるはずだし」

「一〇万円! やったー。お小遣い増える」

「一人二万五千円だね」

「そんなに貰えるんですか!?」

「冒険者の報酬は基本頭割りが原則だからね。普通はここからパーティー費用を引くんだけど、今はクラブ活動費が出ているから、換金すれば自分の取り分は全部もらえる」

「現ナマが補充できたら早速明日のおやつ仕入れにいかなくちゃ。純華ちゃんはどうする?」

「わ、わたしはとりあえず貯金しておきます」

「リザちゃんは?」

「うちに帰ればお菓子は捨てるほどあるので、研究資料(魔法少女アニメ)でも買います」

「千紗だけエンジェル係数高い!。そっかー。これが胸囲の格差社会か!」


 千紗さんや、エンジェルじゃなくてエンゲルね。

 エンゲル係数って中学生で習うんだっけ?

 あと胸囲の格差社会でも驚異の格差社会でも検索すると胸を比べる画像が出てくるのはなんででしょうかね?

 まあ、君らはまだ格差が殆ど無いけど!


「そういえばわたしレベル上がりました」

「千紗は上がってないよー」

「妾もです」


 ここにも格差が出始めたか。


「まあ、レベルは低いほうが上がりやすいからね」


 おなかぺろんの純華ちゃんを特に愛でていたからそっちに経験値吸われた可能性もあるか。

 愛でていただけの僕が上がるのも謎だけど、スキル的に言って愛で方によって偏りがあるかもね。


「そっかー、ならそのうち追いつかれちゃうかもね」

「高レベルになれば一桁レベルなんて誤差みたいなものだから。スキルや装備で簡単に覆るから気にすることはない。レベルなんてどの階層まで安全かという指標にすぎないからね」

「うん、装備は早く充実させたい!」

「そうだな。流石に三層以下に行くのにその鉄の棒はないか」


 千紗でもレベル九超えているから三層に行ってもまず問題ないんだよな。

 レベル一〇が絶対安全圏とは言え、九でもボス部屋で最大最強モンスターに挑むとか、よっぽどのことがない限りピンチにはならないはずだ。

 まあ、純華ちゃんはまだレベル六だからちょっと心配なんだけど。


「URアイテムどれか売っちゃう?」

「それなー。リザちゃんが【魔法少女の杖】使っちゃったし【アイテムボックス】と【聖女のドレス】【ファンシー釘バット】は保留中。売れるのは【水着アーマー】くらい?」

「【水着アーマー】かぁ。マニア向けだっけ?」


 どういうマニアかあえて語らないけど、特殊な性癖の人でないと手を出さないアイテムだろうことは間違いない。


「そう。特殊な層向けだからはっきり言って値段が読めない。オークションに出すタイミングによってはこのお肉より安いかもしれない。もし高く売るとしたら事前にマニアが興味を引くように誘導しておかないとだめだろうな」

「やっぱり売れそうなモノ、もっと集めるしかないかな?」

「そうだな。【水着アーマー】が絶対に必要な場面が出ないとも限らないし、注目を集めるにも時間が掛かるからすぐの現金化は難しい」

「じゃあ、またボス部屋に行くんですか!? またもふもふ毛玉がもふれる?」

「いや、まだ最大最強毛玉まで回っていないんじゃないかな。午後は自衛隊が二層に来るみたいだし、毛玉は片付けられている可能性が高いな」


 なんか長いこと見守っていた気がするがまだお昼。

 朝毛玉を倒してからさほど経っていないから最大最強毛玉が復活していない可能性が高い。

 その上自衛隊が来たら即座に討伐されてしまうであろう。

 ピンクのやつに比べて毛玉は準備するものがないからね。

 せいぜいATK補正値の高い武器を手にするだけで。

 自衛隊のレベルなら防具さえいらないだろう。

 さすがの毛玉も十階層以下を主戦場とする自衛隊員の手にかかればあっという間に討伐必至だ。


「なので、行くんならぴんくのやつかなぁ」

「残念です」


 純華ちゃんはがっくりと項垂れた。


「あははは」


 あまりにも残念そうなので思わず乾いた笑いが漏れた。


「およっ。うわさをすればなんとかって、ほんとだね! ぴんくみっけ!」

「えっ?」


 今なんて言いました? 千紗さんや。

 僕は背筋が凍りつくほどの恐怖に襲われた。


すみません。

ここで第二部終了です。


第三部開始までしばらくお待ち下さい。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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script?guid=on異世界のジョブズに、僕はなる ~定年SEの異世界転生業務報告書~
もよろしくお願い致します。こちらは異世界ファンタジーになります。
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