うわさのすてっき
ライブカメラからの警報音がなる。
まだ午前中だが気の早い冒険者が来たようだ。
いや、先に来て優先権を確保して、その間回りの通常モンスターを狩って自衛隊が来るのを待つ作戦かもしれない。
「他の冒険者来たみたいだから、討伐の準備してねー」
少し離れている千紗たちにはまだ警報が鳴っていないようなので、僕が声をかけて知らせてあげる。
「わかったー」
「命令受諾」
「……うう、もう終わりですか。残念です」
ひとりしょぼんとして、まだ切り替えられないのもいるみたいだけど、とりあえず乱れきった髪型と服を直し始めているから、だいじょうぶだろう。
ていうかレイプ後にしか見えんぞその表情と乱れ方!
どんだけはしゃげばそうなるの!?
髪はあちこち跳ねまくってるし、体操服は胸まではだけ、ブルマが少しずり落ちてかわいいぱんちゅがちょっと見えてますよ?
っていうかぱんつまでちょっとずり落ちてない!?
こんなの僕はともかく他の奴らには見せられんな。
びーびーいってた警報が一旦止まる。
ボス部屋に人がいるのに気がついて少し離れたようだ。
「ほらー。早く支度しろよー」
最強最大の毛玉を倒してあげるんだから、多少待たせてもいいのだろうけど、あられもない姿を晒したままにするわけにもいかないからね。
僕は紳士だからw
「「「はーい」」」
あまりの惨状を見かねた千紗とリザが自分のほうが終わった後、純華ちゃんの支度を手伝ってあげている。
僕はその間にとりあえずテントを片付ける。
結局遊びに夢中でおトイレに行く子はいなかったね。
せっかくクリアを確保したのに残念だ。
キープ君のウィンドよ。君の出番もなしだったねw
テントをかたしている間に純華ちゃんのかっこうもとりあえず見られるようになり、なんとか討伐準備ができた。
「リザ。威力は今日のぴんくくらいでいいはずだ。やり過ぎるとドロップアイテムまで燃え尽きるから気をつけてね」
あれでもけっこうオーバーキル気味だ。
自衛隊の人が思わず拍手するし、お誘いを受けるくらいだからね。
「問題ありません。炎の精霊よ、我、エリザベート・ド・ベルナールの呼びかけに応えよ! かのものを精霊の焔で覆いつくせ! エレメンタル・ファイヤー!!」
一瞬で毛玉の周辺が炎に包まれる。
流石に二層の最強最悪種だけあって、ぴんくのようにあっさりは消えない。
ぴんくはでかいのと攻撃力が高いけどHPやDEF自体は低い。
素手でもHP全損してダメージが入り核を抜き取れるくらいだからね。
素っ裸になるのをいとわなければ冒険初心者でも苦もなく倒せる敵だ。
潜ってる途中で核を見失うと窒息死の危険があるけど、ヤバそうなら仲間に引っ張り上げてもらえばいい。
たまにスライムを吸い込んで肺までスライムまみれになり、窒息死しかけるやつとかいるらしいけど、仲間が素早く倒せば肺の中のスライムは光になる。
対する毛玉の最強最大はDEFもHPもけっこう高いからね。
初級冒険者じゃ手も足も出ない。裸になろうが倒せない敵だw
だがそれも、リザの厨二病魔法の敵ではないw
あっさり光になった!
それと同時に炎は消滅し、熱風すら消え去る。
僅かの間にものすごい上達ぶりだね。
「カード拾う時はカメラ切れよー」
「わかってます」
リザはカメラを切ってカードを拾う。
それをすぐにポケットにしまい戻ってきた。
「じゃあ、みんな荷物持って! 行くぞ!!」
「「「おー」」」
とりあえず新しく来た冒険者パーティーには挨拶もせずに反対側から外へ出る。
僕たちが出たのを見て向こうも移動を始めたようだ。
よかったね。最大最強最悪の毛玉を処分してもらって。
もしまた毛玉だったらご愁傷さまw
それでも倒したところは見ていたはずだから、毛玉を押し付けられたと逆恨みすることはないだろう。
なにせ二百十六分の一の確率なので、運が悪いと二連続なんてことも稀によくあるらしい。
最強最大ではなく一段階低い程度でもちゃんとレベルを上げて装備を用意していないパーティーだときついかもね。
最低限のレベル上げで二層に来るようなやつだと、僕の持っているメイスのような鈍器で皆でタコ殴りにしても、倒すまでにけっこうな時間がかかるはずだ。
剣とかだとまったく歯が立たないらしい。
もふもふなあの毛だがDEF値がものすごく高いからね。
特に近接系にはめっぽう強い。
魔法に対する防御力は特にステータスとしては表示されていないが、隠しステータスとしてあるとはいわれている。
魔法の場合は物理現象としての防御はDEFで、魔法そのものへの防御は隠しステータスのMDFあるいはレジストでというわけだ。
そう言われるのも物理現象を伴わないホーリー・ランスなどはこれでスッキリ説明がつくからだ。
この魔法はモンスターのみに効果があり、光の槍が飛んでいく以外に物理的現象をまったく伴わないからね。
同程度のDEFとHPを持つとされるモンスターに同じ威力のホーリー・ランスを同じようにを当てても、討伐にかかる回数が誤差と言えないくらいの差があるとか、同じMP消費の魔法でも、属性が違うとダメージの入り方が違うとかあって、属性ごとにMDFやRESがあるなんてことも言われてたりする。
魔法も属性や魔法の種類ごとに、相手に与えるATKやMAT、DEFやMDFの割合や属性依存などが有り、モンスターへのダメージの入り方に違いが出るなんて考え方だね。
検証はまだ半ばだが、そのうち結論がでるかもしれない。
検証厨はどこにでもいるのだ。
とはいえリザほどの魔法の威力があればATKだろうがMATのダメージだろうが関係ないけどな!
どっちにしろオーバーキル間違いなしだから。
「移動しながらアイテム確認しようか。みんなカメラと音声切ってね」
「「「はーい」」」
みんながちゃんと切ったのを確認して、リザがカードを取り出す。
「導師、確認を」
僕はそのカードを受け取って、頭を抱える。
「また変なやつなの?」
「キワモノカードであることは確かだな」
「高く売れそう?」
「性能だけで言えば高く売れそうなんだが、制限事項がなぁ」
「他の物が装備できないとか?」
「いや、今度は年齢制限がきつい。なんと十八歳未満限定だ。逆十八禁だね」
このイラストを見ればわかる。
わかるんだがこれはけっこうきつい。
「十七歳までしか使えないってこと?」
「そうだな。性能自体はMNDプラス二十パーセント、INTプラス二十パーセント、MATプラス二十パーセントだから【聖女のドレス】に迫る性能だね。しかもこちらは年齢以外の制限がないからある意味使いやすいとは言える。魔法系のスキルさえあれば使えるからね」
「使いやすいけど高く売れないの?」
「ファンシー釘バットは絶対値指定だったので、十~十五階層くらいまでしか有効に使えないけどこれは十八歳になると使えなくなるからね。しかもURカードは一旦開放したら譲渡不可能だし。譲渡できれば化けるんだが。現実問題としてこれまでの冒険者は基本的に成人。つまり十八歳以上だ。十七歳以下の冒険者って、僕らを除けばそうたくさんはいないはず。人数も少なければ入ダン経験も少ない。親が金持ちで買い与えるとかでもしない限りお金のない人が大半だろう」
「なるほど? で、何のカードなの?」
「【魔法少女の杖】。いわゆる魔法のステッキだね! よくアニメとかで魔法少女が持っているやつだ」
男女の制限はないから、男の娘でも装備可だw
「導師」
「何だね、エリザベートくん」
「それは妾に使わせてください」
そういや、魔法少女に思い入れがあるんだっけ?
「僕はかまわないけど、みんなはどう思う?」
「いいよー」
「わたしもいいと思います。一応わたしも使えると思いますが……」
「そうだね。今のところ性能的に言えば聖女のドレスに迫る。年齢制限も君ならまだあと七年も使えるから問題ないし。とはいえ公平に分けるとすればどちらかってことになるだろう。もし聖女のドレスの装備条件に抵触したら、同時には使えない可能性もあるからどちらかを選ぶとしたら聖女のドレス一択になるだろうね」
「はい、そう思います」
「ならそれは妾が使わせてもらいます。……これで魔法少女にまた一歩近づける」
最後、リザは小さくつぶやいた。
「どうすれば使えるようになりますか? 血を一滴垂らすとか必要ですか?」
「それは冒険者カードの登録でしかも創作だね! 第一HP全損させないと、針なんか刺さらんから」
「そうでした」
そういや処女膜とかどうなるんだ?
HP全損しない限り破れないのか?
一応穴はあるから中まで入れても血が出ない?
それともノックバックが起こってはじき出される?
やってみた人いないのかなw
「カードに開放の方法が書いてあるからその通りにすればいい。基本的にカードごとに開放の仕方が違う。そして開放した人しか使えなくなるから、みんなも注意してね」
「「「はい」」」
「じゃあ、エリザベート・ド・ベルナール。皆の合議の元、このカードは君のものとなった。受け取るが良い」
「謹んでお受けいたします」
リザの厨二病心をくすぐるセリフを吐きながらリザにカードを受け渡す。
僕と契約して魔法少女になってよ、とは言わないからねw
あれはやばすぎる。
「では、開放の儀式を行います。『魔法の国より来たれ! 我がしもべよ!』」
リザがそう言ってカードを天高く掲げる。
ずがーん!
稲光とともに雷鳴が轟く。
リザの着ていた服が下着ごと閃光の中で弾け飛んだ!
みえ!
次の瞬間、足にファンシーなブーツとオーバーニーソックスが装着。
腕にはこれまたファンシーな手袋と手首にリボン。
そこでようやくファンシーなパンツとブラが装着され、これまたファンシーなミニスカ魔法少女ドレスがその上に転送されてくる。
ニーソとミニスカの間の絶対領域が裸のときよりエロいのはなぜだろうなw
最後は頭部と首にファンシーなアクセサリーやリボンが付き、手にはファンシーな魔法のステッキが現れて完成だ。
うん、見事な変身バンク!
しかも日曜朝の女児向けじゃない、深夜帯の大きいお友達向けアニメのだ!
もろツルペタが見えちゃったよ!
これはタイーホ?
いや、だいじょうぶだ。
こんな事もあろうかとカメラは切ってあるw
「えー、なにこれ!? 変身するの!?」
「そうみたいだね」
「うむ。完璧」
リザが自分のかっこうを確認して満足気にうなずく。
「おにいちゃん、こうなるとわかってたの?」
「いや。カードには書かれていなかったね。まあ、たまにこんなこともあるみたいだけど。僕らが普段見ているステータスボードにだって隠しステータスがあると言われているからね。アイテムカードにも書かれていない隠しステータスや機能がある可能性は前から指摘されているんだ」
「えっと、体操服ばーんっていってましたけど、だいじょうぶなんですか?」
「多分だいじょうぶ。カードに戻せば服も戻るはずだ。こういうネタカードは他にもけっこう出回ってるからね。見映えがいいから動画とかけっこう上がってるぞ」
前に蒸着だとか着装だとか叫びながら防具カードを装備している動画を見たことがある。
なんか昔のヒーロー物の変身シーンをリスペクトしているとか聞いたけど元ネタは知らない。
「なら、解除する時はまたあんな感じなんですか?」
「どうだろうね。アイテムごとに違うとしか。やってみるしかないね」
「リザちゃん、変身はテントの中でやりましょうね? ね?」
純華ちゃんが笑顔でリザに詰め寄っていく。
「えっ? あっ、はい」
あまりの迫力にさすがのエリザベートも腰が引けていた。
純華ちゃん的にあれはアウトだったらしい。
いや、僕的にもアウトだけどね!
なのになぜ【めでる ろく】に上がってんですか!
レベルも十一に!
階層レベルの限界突破しちゃってますよ!
もう自分がよくわからない。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
ブックマーク、評価等していただければ励みになります。




