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はじめてのにそうぼすとうばつ

 びーびーびーびー!


 突然鳴り響く警告音。

 他の冒険者の接近を告げるものだった。

 戦闘中ならこっちに優先権があるのだが、これは駄目だろうな。

 未だにモフってる二人を見てため息をつく。

 一旦出るか、討伐するか。

 どちらにしろ明け渡す他ない。


「おーい、他の冒険者が来たけど、こいつ討伐できるか?」


 毛玉に埋まっている二人に声をかける。

 向こうでもびーびー警告音がなっているから、壊れていた二人もちょっと正気に戻っていた。


「うう、まだ覚悟がー」

「執行猶予を要求します」

「じゃあ、ちょっと向こうに譲ろう」


 僕らは一旦荷物を持って、ボス部屋を出る。

 基本無干渉がルールなので、あんまり良くないんだが、一応向こうに声かけしておく。

 ちょっと離れていないと警告音がなるので大声でだ。


「中にいるの最大最強の毛玉ですよー! 倒していないんでおんなじの出ると思いますー」

「ここもかよー。わかったー。一応確認して、ダメそうなら出るよー」


 すでに他のボス部屋を回ったあとらしい。

 まあ嘘ついてボス部屋を専有するやつもいるから、一応確認するのだろう。


「僕らはどうする?」

「あの人達が討伐せずに出てきたらもう一度モフったらだめですか?」


 リザさん、それは反則です!

 瞳をうるませて上目遣いとか。

 しかしここは心を鬼にして拒絶すべき。


「もふもふでだいぶ時間くっちゃったから、もう一回やるときっと三層へはいけないぞ。猫ちゃんはいいのか?」

「そうだよ、にゃんこだよ!! ちさがんばる!」

「うう、りざもがんばる……」


 千紗とリザのテンションの高さが大違いだな。

 千紗は猫好き間違いなし。

 リザは猫よりもふもふがいいのか。でも猫も捨てがたいという感じだね。


 とりあえず脇によって休んでたら、入っていった冒険者が出てきた。


「疑ってすまんな。やっぱだめだったー。このへんは全滅だよ。おたくらもちょっと田舎に遠征したほうがいいかもなー」

「いえいえ、情報ありがとうでーす」


 冒険者たちが去っていく。


「ボス部屋空いたぞ。行けるか?」

「いくー!」


 女の子がイクとか言ってはいけません・


「くっ、殺します」


 これもくっころでいいのか? えろい人教えてちょ。


「じゃあ行こうか。上と同じで、リザが魔法攻撃。千紗が突進攻撃だ。ほれメイスを受け取れ。突進は冷気がどの程度か見極めてからだから、いきなり突っ込むなよ」


 突っ込むのは男の方だからな! でも男でもいきなりはダメです。

 とか下品なことを考えながらも、着々と準備を整える。


「リザ、いけるな。あんまり時間をかけているとまた別の冒険者が来るぞ」

「……わかった。殺る」


 三人一緒にボス部屋に入ってリポップするのを待ち構える。

 ちなみにリポップしきらないとまったくダメージは入らないからね。

 うっかり靄に触ると、ダンジョン生成のときと同じように触れた部分は動けなくなる。

 空中にがっしり絡め取られたようになるため、ノンアクティブな毛玉ならまだしも、いきなりアクティブになるモンスターだと至近距離から攻撃を食らうことになる。

 なぜか拘束が解けるよりモンスターが動き始める方が数秒ほど早いらしい。


「よし、リポップした! やれ、エリザベート・ド・ベルナールよ!」


 僕は真のフルネームを呼んで鼓舞する。


「我、エリザベート・ド・ベルナールが命じる。氷雪世界の精霊よ。何者もを凍てつかせる氷の砲弾をここに! 【アイスキャノン】!」


 リザの厨二病呪文が炸裂。

 威力はアブソリュート・ゼロとアイス・ブレードのちょうど中間あたりか。

 二層の毛玉はDEFが高いから、これでちょうど良さそうに見えるが。


「やったか!?」


 千紗さん。お約束ありがとう!

 セリフはお約束どおりだが、結果は違ってたようだ。

 いや、ある意味あってるのか?

 毛玉は完全に凍りついているが周辺の空気まで液化はしていないみたいだし。


「ちょっと確認するから待っててね」


 僕は固形燃料に火を着けて固まってる毛玉の足元に転がす。


「うん、溶けたところが再び凍りつく様子もないし、いいんじゃないかな? 千紗、イッてよし!」


 いかん。

 これも禁止ワードだよ。

 幼女に向かってイッてよしとか。エロ漫画でありそうなセリフだな。


「たぁあああ!」


 僕のイッてよしで、すっ飛んでイク千紗。

 目もイッちゃってないか?

 そんなに猫好きだったか?

 ガツンガツン氷が砕けていく。


「おりゃあああああああああ!」


 気合の一発でもふもふは光になった。


「さらば、愛しき人よ」


 何処かからパクってきたセリフを吐きながら毛玉との最後の別れを告げる。


「一応カメラ切っておけよー」

「はーい」

命令受諾(オーダー アクセプト)


 ボス戦で得たURアイテムは全部で二個、百パーセントの確率。

 これがソシャゲのガチャなら、即時修正とロールバック戻します案件だね。

 ここで外れが出ても三分の二の確率だから、まだけっこう高い。

 コモンアイテム並みの出現率の高さだ。


「あったー!」


 千紗が落ちていた『カード』を拾い上げた。

 うん、まぎれもなく、やつさ!

 まさか左腕に付ける銃とかじゃないよな?

 このダンジョンじゃ銃は役立たずだがサイコガンはどうなんだ?

 なんか効き目ありそうな気がする。


「えっとね、【聖女のドレス】だって!!」


 聖女のドレス?

 聞いたことないな。

 防具系か? それとも魔法とかのバフ系か?

 名前だけ聞くとそんな感じがするが、とりあえず説明書き見ないとね。

 そういや僕の職業には説明ないのに、なんでURアイテムには説明があるんだろうな?


「はい、おにいちゃん! 高く売れそう?」


 僕はそのカードを受取り、じっと見る。


「これって『性女』じゃん!」

「ん? だから聖女だって言ったよ?」


 いやいや。

 確かに記述は聖女ですよ?

 でもこの衣装どう見てもスケスケです!

 まぎれもなく、性女の衣装だよこれ!

 こんなの彼女らに着せたら絶対捕まる!!

 おまわりさんこっちです!


 こいつもキワモノというかネタアイテムだね。

 性能はと、聖属性魔法にプラス五十パーセントのMAT補正。

 職業が【聖女】の時、全ステータス二十パーセント上昇。聖属性魔法のMAT補正と重複する。

 うはぁ。キワモノアイテムのくせに性能たけー!

 マジ装備じゃねーか!

 聖女ならこのスケスケ衣装でも神々しいだろうからセーフか?

 いわばエロはNGがだ芸術ならOKという謎仕様。

 美術館ならモザイク無しだけどエロ本ならモザイク必須みたいな?


「ねえねえ、高く売れそう?」

「……うーん、よくわからん」

「おにいちゃんでもよくわからないことあるの?」

「そりゃあ、あるさ。ダンジョンができてたった七年だ。わからないことだらけだ」


 だけどこのアイテムはおそらく世界初。

 こんなエロアイテムが登場して、ネット業界? が黙っているはずがない!

 絶対バズる。


「見たことも聞いたこともないので、おそらく世界初。UR中のUR。もしこれが最初で最後だとしたらアイテムとしてはUR超えの【オンリーワン】。しかも聖属性魔法にプラス五十パーセントのMAT補正というぶっ壊れ性能だ。職業補正の方は聖女限定だからほぼ意味ないけど」


 【聖女】はUR職だからな。

 知られているだけだと数名しかいないはず。

 秘密にしている者もそれなりにいるだろうけど、少ないのは確かだ。


「えっ? 壊れているの」

「ちゃうちゃう。壊れてるとしか思えない高性能ってことだ」

「何だびっくりさせないでよ」


 千紗がぺったんこな胸を撫で下ろす。

 うん、まだまだすとんと撫で下ろせるね!

 膨らみかけって感じだったけど見た目はそうでもないな、って何見てんだよ!

 変なこと考えてたから、何言おうとしてたかちょっと忘れちゃったよ。


「えっ、えっと、性能バフ系にはプラス五十ポイントとかの絶対値系とこれみたいなパーセンテージ系があるんだ。例えばリザが聖属性魔法を覚えて総合MATが十だとする。プラス五十ポイントならMATの最終値は六十ポイントだ。これがパーセント表示だと十五になる」


「あれ? 同じ数値でもパーセンテージのほうが低い?」

「そう。レベルやステータスが低いうちはプラス五十のほうが優勢なんだが、これがレベルが上がると変わってくる。総合MATが百なら最終値は百五十。プラス五十ポイントと並ぶだろ? 総合MATが百を超えればパーセント表示のほうが有利になるってことだ。つまりこれは大器晩成型の装備だな。冒険者を長く続ければ続けるほどこの装備のほうが有利になるってことだね」

「なるほどー。なら高く売れるんじゃ?」

「この性能だけならね」

「他になにか問題でもあるの?」

「まずこの制限事項だな。『ただし他の防具、服などは装備不可』。前に出た【水着アーマー】と同じ制限がある。それから【聖女】なので、女性限定だね。【水着アーマー】は限定がなかったので男性でも真ん中でも着れる」


 うへぇ。

 女性限定にしてほしかったよ【水着アーマー】。


「あと年齢制限があるな。二十五歳未満」


 アラサーディスってるよ!

 世のアラサーに女性に謝れ!


「なら千紗は着れるね!」

「千紗は着ちゃいけません! 児ポ禁です!!」

「じぽきん? 制限事項にあるの?」

「制限事項にありまーす」


 カードにはないけど法律にはあるんだ。

 嘘じゃないぞ!

 違反すると捕まるやつだ、僕がだけど!


「じゃあ、しょうがないね。かわいいから着てみたかったのに」


 ちょっと千紗が着てみたところを想像してみる。

 いい。

 けどダメです! お父さんは許しません!

 だれが、お父さんじゃい!


「てことで、色々制限があるので、出してみないとどのくらいの値段がつくかわからないね」

「【アイテムボックス】みたいにわかりやすいのが良かったかも。でもあれって、売るか使うか迷うアイテムだよね」

「そうだな。このカードはまあ、使う人いないから売りに出してもいいんだが、オークションだと欲しい人がまったくいない可能性もあるからね。下手すると最低落札価格で買われちゃう可能性がある」

「最低落札価格って?」

「オークションに出す時これ以下の価格では売りませんよって値段。つまりこれに一万円の値段をつければ買う人がいれば最低でも一万円で売れる。かと言って高めの値段を付けると見向きもされず売れないことになる。そのためオークションサイトには一円スタートとかにしていかにも安く買えそうに見せる商品もあったりするけど、こっそり最低落札価格付ける人もいたりして、一万円以下じゃ売らねえくせに一円から始めるんじゃねぇとか言う批判もあるので、痛し痒しかな」

「なんか難しいね」

「そうだな。僕もオークションについては詳しくないから、これもとりあえず保留して、【聖女】の職業持ちと直接交渉したほうがいいかもね。不特定多数だとそもそも【聖女】じゃない人が多いだろうし、それで転売されても面白くない」


 誰かが買って転売なんてよくある話だけど、【聖女】持ちの人が参加しているかいないかで大きく値段が変わる気がする。

 この『はずか死』装備が我慢できればだけど。

 まあ、使うときまで上に何かを着ていてもいいしね。

 普通の装備なら制限なしなはずだから、これを着ていても効果はあるはずだ。

 他の装備があると【聖女のドレス】の補正効果はないけど、必要な時に上に着ている装備を外せば使える。

 どうせ【聖女】は後衛だ。

 近接職が頑張れば脱衣する時間くらいは稼げるだろう。

 そう考えればけっこういい装備かもしれない。


「知り合いに【聖女】の職業持ち知っていないか聞いてみるよ。おそらく【聖女】は【聖女】同士で、ある程度繋がりがあるはずだ。そこから芋づる式に話を広げて聖女同士で競り合ってもらうのが一番高く売れそうだし」


 UR職にも関わらず職業を公開してるってことは、公開するデメリットより公開するメリットのほうが上と考えているからだろう。

 公開した場合同じ【聖女】が接触してくる可能性が高まるから、情報交換もしやすくなるだろうし、メンバー集めにも職業公開が必要になる場合がある。

 特に赤の他人なんかと組む場合には。

 基本的につながりを求めての公開のはずなので、同一職業ならつながっている可能性は高い。

 いい情報なら自分だけで秘匿しちゃう可能性もあるけど。


「うんそうだね。お願いするよ。リザちゃんもそれでいい?」

「問題ありません。では、導師と千紗ちゃんがそれぞれURアイテムを持っているから今度は妾の番ですね」

「うん、お願いね」


 僕はリザにカードを渡す。

 千紗みたいに着てみたいと言い出さなかったから、こっそり開放して着てみるとかしないだろうし。


「言っとくけど絶対開放しないでね? 開放するとその人に所有者登録されちゃうから」

「もちろんです」


 着たら脱げない呪いのアイテムじゃないけど、その人しか使えなくなるからね。


「さて、みんな。カメラを戻して、一旦戻ろうか? そろそろ純華ちゃんの試験終わるぞ」

「たいへーん。純華ちゃんまたせちゃうよ」


 戻って着替えてとなるとちっとギリギリかも。


「急いで戻るぞ!」

「「おー!」」


 駆け足で戻った我らだった。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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script?guid=on異世界のジョブズに、僕はなる ~定年SEの異世界転生業務報告書~
もよろしくお願い致します。こちらは異世界ファンタジーになります。
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