はじめてのふぁっしょんしょー
一通りジュースを飲んでだべってお菓子を食べて、僕を除けばまごうことなき女子会? に、ちょっと居心地の悪い思いをするが、まあ今日の僕はばーさんにこき使われる使用人のごとしだ。
ジュースを注いだり氷を持ってきたりと、落ち着く間もない。
「さて、そろそろ古着の確認といこうかね、あまり遅くなると親たちが心配するからね。一応使えそうなのはタンスから出して陰干ししておいたから、しょうのう臭くはないはずだよ」
当初の目的などすっかり忘れているかと思ったが、まだまだボケてはいないらしい。
「さあ、みんなはこっちだよ。お前さんはこの部屋から出ないように。レディのお着替えだ」
ばーさんは女の子三人を連れて出ていく。
純華だけでいいのでは? と言うのは野暮だな。
女の子なんて友達の服を選ぶにも真剣になれる人種だ。
色や形のわずかな違いでこうも騒げるのか不思議だ。
襖の向こうから漏れ聞こえる、女子たちの甲高い声。
日本家屋はほぼ防音ないからね!
そんな中、トテトテと歩いてくる足音。
「じゃーん! どう? おにいちゃん」
襖を開けて見せつけるようにクルリと回る千紗。
「何故に赤ブルマ!」
いつもは紺色なのに、赤に白のストライプが入ったタイプのブルマを千紗が履いていた。
お前も着替えたのかい!
「導師、妾のはどうです? 似合いますか?」
「おまえは白ブルマかよ!」
こっちもか! リザよ。
その後ろからおずおずと出てくる純華。
「ふつうに紺ブルマだね! 安心したよ」
ブルマが普通かどうかは置いといてね。
って、なんでこんなにブルマばっかり持ってるんだよ! うちのばーさんは。
「なんだいなんだい。せっかく可愛い子たちが可愛い格好してるんだらお世辞の一つも言えないのかい」
ばーさんも戻ってきた。
「いや、お世辞じゃなく可愛いけど、なんでこんなにブルマばっかり持ってるんだよ! ばーさん」
「ああ? 何だそんなことかい。別に大したことじゃないさ。うちの親が転勤族でね。あちこち転勤するたびに、指定体操服が違ってたんだよ。部活なんかもやってたからそこのユニフォームも全部買い換えさ。一人だけ違ってたら目立つから嫌だって我儘言ってね」
謎はすべて解けた。
犯人はばーさんの親だ!
しかし転勤のたびに買い替えじゃ大変だったろうな。しかもこれだけの数があるんだ。転勤も一、二度とかそんなものじゃあるまい。
いや、転校で大変な思いをしている子供のために、少しでも負担が減ればという親心だったんだろうな。
子供ってちょっと違っているだけでいくらでも残酷になれる生き物だからね。
おそらくリザだってだいぶ浮いた存在だったろうことは、この間の母親との会話でもうかがえる。
服装がちょっと違っただけでも、そこからいじめへと発展するのだ。
「たいして着てもいないのに買い替えた体操服が山のようにあるんだよ。我儘言って買い替えてもらっただけに捨てられなくてね。この子達に使ってもらえるだけで、とっておいたかいがあるってものさ。この年頃には下手すると四半期に一回転校してたからね!」
やはりかなり転校がかなり多かったようだ。
豪快に笑う祖母だが、当時は友達との別れが相次ぎ、寂しかったのだろう。
その唯一の抵抗が体操服買い替えかもしれないな。
買い替えるのが嫌ならもう転勤はしないでという、無言の訴えか。
「白赤紺、後はグリーンとブルーなんかもあるよ! どこかの戦隊モノだってできるさ!」
美少女戦隊ブルマリアンとか結成しますか?
なんかちょっとAVをかでありそうだな。
「可愛いけど、体にあっているかが重要だからな! 動きづらくないか、ゆるすぎきつすぎないかちゃんと確認しろよー」
「なんだい、面白みのない男だね! こんな可愛らしいお嬢ちゃんだらけなんだから、ちょっとは口説いたらどうなんだい。このヘタレ孫が!」
「いや、こんなちっさな子口説いたら犯罪だから! へんな扇動するのはやめてー!」
「冗談さね。シャレもわからんのか、バカ孫め」
違いの分からない男ですみません。
「まだまだ色々あるから、時間がある限り着ていきな。気にいったのがあったらいくらでも持っていっていいからね」
「わーい。おばーちゃん大好き!」
「おー、そうかいそうかい。おばーちゃんも大好きだよ!」
女の子達を引き連れ再び隣室へ。
繰り返すきゃっきゃうふふ。
「じゃーん! 呼ばれて飛び出て、じゃーんぷ」
ジャンプしながら飛び出してきたのは。
「よりにもよってスク水。しかもご丁寧に旧スクかよ!」
「どお? にあう?」
「似合うけど、似合うけど! ダンジョンには着ていけないぞ?」
流石に旧スク女児連れてダンジョンになんか行ったら捕まります、僕が!
「えー、これ可愛いのにー。なんというかエモい?」
今じゃコスプレかAVくらいしか見かけないからな!
小学生からすれば新鮮に感じるんだろうけど、それはまごうことなきアウトだ!
「導師、妾のはどうでしょう」
「こっちはライン入りか! でもやっぱりスク水」
「先生、わたしのこれ変じゃありませんか?」
やっぱり恥ずかしがりながら出てくる純華。
「うん、わかってたとも。これもスク水だね。ただし背中で紐がクロスしているタイプか。新型か?」
いや、僕もそんなに詳しくないけどね!
「三人共可愛いけど、早く着替えてこようね。風邪ひくぞ」
「はーい。ねっねっ、次何着ようか」
千紗が二人を連れて戻っていく。
次を見るのが怖いよ。
「じゃっじゃーん! これならどうだ!」
モデル歩きでやってくる千紗。
「この春一番の人気、デニムのホットパンツにストライプのオーバーニーソックス。それと合わせるのはおへそがわずかに垣間見えるちょっとセクシーなトップス。可愛らしさの中にほんの少しのセクシーさを備えたおすすめの一点です。って、何言わせんじゃい!」
モデル歩きしてくる千紗に思わずファッションショーの煽り文句っぽいセリフ言っちゃったよ。
「次はリザちゃんだよ! ちゃんとやってね、おにいちゃん」
リザが出てくる。
いつもおうちでモデルさんをしている彼女のウォーキングは見事の一言。
「お次はいつもクールな美少女が見せる意外性がテーマ。明るいオレンジのショートパンツとおしゃれなパーカーとの組み合わせで活発な少女を演出。それでいてアンニュイな彼女の雰囲気がただの明るい少女ではないことを伺わせる装い。危うい天秤のように揺れ動く少女の心情を表現したかのような作品です。……こんな感じでいかがでしょう?」
「即興にしては上出来?」
そこは疑問形にしないでほしかった。
「次は、純華ちゃんだよ!」
「えっえっ?」
千紗に押し出され、わけも分からずモデル歩きの真似っ子。
「これぞ正統派。涼しげなワンピースは彼女の魅力を最大限に活かす一品。ノースリーブのミニスカートがチャームポイントのこの服。清純かつ清楚でありながら少女の持つ生命力を存分に見せつけるむき出しの腕とスラリと伸びた足。どこもかしこも瑞々しい若さがこぼれんばかり。今の彼女以外着こなせるものはいないでしょう」
どうだ!?
「ううううう、はずかしいです」
あっ、襖の向こうに隠れちゃったよ。
「少しはマシなことが言えるようだね。だが、こんな幼い子達を口説いてどうすんだい!」
「さっきは口説けとか言ったよね!」
「冗談だとも言った! まったくこのバカ孫は。もしもの時はちゃんと責任を取るんだよ」
「もしもはありませんから!」
もしもしおまわりさんはあるかも。
三人が三人共別の魅力に溢れていて、つい心のなかで思っていたことが漏れちゃっただけだ。
「おにいちゃん、今までの中でどれが一番良かった?」
孔明の罠再び!
一番最後が無難に見えるが、正解とは限らないのが乙女心と秋の空。
今は春だけどな!
だがここは千紗を喜ばせるより我が人格を守るべきであろう。
おまわりさんはもういやぁ。
「うん、一番最後のが千紗っぽかったかな?」
どうだ?
判定を待つ間は、裁判でも受けているかのような緊張感をはらんでいた。
「おにいちゃんの意気地なし」
外れたー。
当たりはブルマかスク水か。
でも、おまわりさんは回避したぜ。
「導師、妾はどうでした?」
ブルータス、お前もか!
「やっぱり最後のかな? いつもとちょっと雰囲気が違って新たな魅力を発見したよ」
判定は?
「……妾もそう思う」
恥ずかしそうにもじもじ。
よし、当たりだ。
一勝一敗。
「あの、先生。わたしはどうでした?」
うん、これは素直に言える。
「最後のすごく良かったぞ。純華に似合ってた」
「ふわぁあああ……あ、ありがとうござい……ます」
真っ赤になって最後は聞こえないくらい小声になってしまった。
「決まったんなら、袋に詰めてあげるよ。だいぶ遅くなっちまったからね」
みればもう日が落ちかかっていた。
女の子たちは慌てて取って返し、着ていた服を袋に詰めてもらう。
「ちゃんと送っていくんだよ! バカ孫」
「わかってるよ」
「今日はおばーちゃんちでお夕飯食べてけって。送ったらまた戻ってきてね」
千紗が出掛けに声をかけてくる。
「お前ん所の親父には言ってある。じーさんももうすぐ戻るし、顔くらい見せていけ」
「わかった。送っていったらすぐに戻るよ」
リザと純華を伴って僕はばーさんの家を出た。
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