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はじめてのすきるせつめい

 とりあえずボス部屋に行く前に確認しておくことがある。


「二人共、ライブカメラの音声を切ってくれ」


 僕は管理局のライブカメラと自分のPCに録画している方のライブカメラの音声のみスイッチを切った。


「切ったよー」

命令受諾(オーダー アクセプト)


 二人共戸惑うことなくスイッチを切る。


「よし。じゃあ、スキルについてちょっと確認するぞ」


 職業やスキルはできるだけ秘密にする。

 それが冒険者の心得だからね。

 ただ、指導する時は聞いておかないとアドバイスもできない。


「二人とも生えたスキルを教えてくれるかな?」

「わかったー。千紗は【とっしん】だよ!」

「職業が【騎士】にスキル【突進】か。ぴったりだな!」


 千紗の得た職業はひらがなで【きし】。おそらく【騎士】だと思われる。まさか【棋士】や【起死】とかじゃないはずw

 そして突進は突進攻撃時にATKとDEF、AGIに補正がかかる、千紗お望みのスキルだね。

 職業が【ランサー】じゃなかったのは残念らしいが、一応レア職だ。

 補正もランサーとほぼ同じだ。どちらかといえば防御のステータスが伸びやすい。

 得られるスキルも防御系が多いが、【突進】はATKも上がるので攻防一体型のスキルと言えるだろう。

 スキル区分でいくと【突進】はコモンスキルだが、あくまで生えやすいというだけで、レアやスーパーレア(SR)ウルトラレア(UR)のほうが強いというわけでもない。

 要は使い方や、その人の戦闘スタイルと合っているかが問題になる。

 近接戦闘したい人にとって遠距離魔法スキルは意味がないからね。


 また、コモンスキルは比較的扱いやすいものが多いというのも特徴だ。

 つまり習熟度が低くてもそれなりに効果があるという点では、レアやURと違って最初から戦力に組み込みやすい。


「千紗のスキルは説明するまでもないな。突進や突撃しての攻撃に勝手に補正が入る」

「何も考えず突っ込めばいいってことね!」

「いや、ちゃんと考えて突っ込めよ? 敵陣の中で孤立しやすいのがこのスキルだ。使い所が意外と難しいぞ」

「わかった! 考えて使う。確かにやり過ぎるとモンスターから離れちゃったりスタミナが切れて、みんなのところに戻るのが遅くなったりしてた!」


 それはゲームの話だけど、そのとおりだね!


「リザはどうだった?」

「妾は【こおりまほう】です」

「あちゃぁ。予想はできていたが、これまためんどくさいものを。まあ炎系や雷系よりましか?」


 エリザーベートの職業は【魔導師】。こちらもレア職だ。コモンだと【魔法使い】あたりになるが、魔法少女に憧れのリザにしてみれば【魔導師】は可愛くないらしい。

 魔法職におけるコモンとレア職の違いは、覚える魔法レア度の違いや傾向の違いだ。後の補正効果はほとんど変わらない。

 職業がレア職だとスキルもだいたいレアスキルになる。千紗がコモンスキルを覚えたのはありえなくはないが珍しい方ではある。

 【氷魔法】もレアだね。

 魔法スキルも職業によって覚えやすいスキルが違ってくる。

 【魔導師】は割と系統関係なし。攻撃魔法もあれば補助系の魔法も覚える。

 【魔法使い】だと特定の系統にスキルが偏りやすい。水系とかね。制限付きの一種と言われるため、特定の状況ではものすごく強い。

 そのため特定の状況に強いのが【魔法使い】、どんな状況でもそれなりに対応できるのが【魔導師】ということになろうか。

 どちらがいいとは一概には言えないが。


 一応学術的に言えば、魔法は一般魔法と特殊魔法に分けられる。

 一般と言ってはいるが、こっちは普通レア以上。珍しい部類に入る。

 特殊魔法は大体コモンだ。

 これは特殊相対性理論と一般相対性理論の違いと同じように、特殊魔法はある限定された魔法だけに特化したスキル、一般魔法は複数の特殊魔法のスキルをすべて含む魔法ということになる。

 【アイスボール】、【アイスランス】と言った個別の魔法スキルは特殊魔法スキルであり、一般魔法スキルの【氷魔法】はどちらも実現できるが、実現するには術者の高い熟練度が必要になる。

 ダンジョンに与えられるスキルだけではなくプレイヤースキル(PS)が必要なスキルなのだ。

 もちろん初心者向けではない。


「問題ない、使いこなしてみせる」

「意気込みは結構だが、練習は必要だ。ちょっとここで練習していこう」


 いきなり実践でレアスキルを使わせるのは怖すぎる。

 どう暴走するかわからないからだ。


「魔法については講義でもちょろっと説明したけど、スキルを得ないと説明してもあんまり意味がないから詳しくは知らないよな?」

「はい。妾の遠視能力は封印されているがゆえに」

「うん、できるだけ早くチャイルドロックを外してもらおうね。とにかく魔法のレアスキルというやつは汎用性に優れている代わりに、扱いづらいスキルと言われている。ここまではいいな?」

「はい」

「SRやURと比べればまだましだとはいえ、制御を誤れば仲間も巻き込みかねん危険なスキルが多い。氷魔法は火魔法や雷魔法と比べればまだましだが、それでも危険には変わりないんだ」

「理解している」

「だが理解するだけではなく練習が必要だ。その点特殊魔法系はさほど練習することもなく使えるものが多いので使い勝手がいいと言える。考慮すべき点も少ないので発動速度も早い。一般魔法は使いにくいが応用力に優れた魔法だ。使いこなせれば特殊魔法とは比べ物にならないほどの威力を発揮する」

「がんばります、導師。よろしくご指導願います」

「そうか。僕も魔法スキルは持っていないというかこれまで、スキルは一つもなかったからね。ちゃんと教えられるかわからんが一般的な練習方法を説明するね」


 僕はネットや論文などで見たスキルの効率的な練習法を披露していく。


「まずは小さな氷粒を作って見よう。そうだな、イメージしやすいように製氷皿で作った一粒の氷を思い浮かべて、手の平の上に作ってみようか」


 これがアイスボールとかの魔法スキルなら、威力(MP)と飛ばす方向くらいしか意識する必要はないんだが。その代わり飛ばさずにその場で氷を作ることはできない。

 【氷魔法】だと、形、大きさ、温度、飛ばす方向、飛ばす速度などのパラメータを意識する必要があるらしい。

 しかも形、大きさ、温度、飛ばす速度の総合値で使用MPが決定するから、やり過ぎると一気にMPが枯渇する。

 アイスボールの魔法スキルならMPが五十の人は、MP十を使えば五発のアイスボールが放てると計算が可能だが、氷魔法で同じことをしようとすると、形、大きさ、温度、飛ばす速度を常に一定にした上で予めそのパラメータでの使用MPを把握しておく必要がある。

 このいつも同じ形同じ大きさ同じ温度同じ速度を保つのはとてつもなく難しいのだ。

 人間走るだけだっていつも同じ速度では走れない。

 そういったことをリザに説明しながら、氷を作る練習をさせていく。


「まずは同じ大きさ、同じ温度、同じ形の氷を作れるようにするんだ。ステータスボードも出しっぱなしで使用MPが一定になるようにね」

「……難しい」


 氷は出せるようになったが、同じ形、同じ大きさというのはやはり難しいようだ。

 同じ温度かどうかは温度計がないのでわからない。

 まあ、溶け方で温度が低いか高いかくらいはわかるけどね。

 表面がすぐに溶けていくものは温度が高い、霜がついて冷気が流れ落ちていくものは温度が低いという具合に。

 それで一応同じものかどうかを判断している。


 練習を初めてすぐにリザの手のひらが氷で一杯になる。


「手が冷たいです」

「手の上でなくてもいいぞ。自分からいくぶん離れたところにも作れるはずだ。ただし、自分から離れるほど難しくなるし、MPも使う」

「むう。とりあえずゴム手袋二重にする」

「それはいいな」


 意外と機転が利くなエリザベート。


 リュックのポケットからもう一セット予備のゴム手袋を取り出し手にはめる。

 そして【氷魔法】の練習を再開。


「MPの減り方も注意しろよ。減る量だけでなく、減る割合もだ。使い切るとボス部屋で魔法が使えなくなるからな」

「問題ない。このくらいなら、練習している間に回復している」


 おう、それは回復力が高いのか? それとも使用効率がいいのか?

 詳しい検証が必要だな。

 魔法系のスキルはMP管理できて一人前だからね。

 特にレアスキルだと、MP管理が難しい。

 一人前になるには時間がかかるのだ。


「ちょっと時間がかかりそうだから、草原フィールドに入って陣地を作ろうか?」

「そうだね。黙って立っているのも疲れちゃった」

「ご迷惑をおかけします」

「迷惑じゃないさ。リザの氷魔法が使えるようになれば、うちのパーティーでは大幅に火力アップだ。千紗の【突進】はスライム相手だと出番が無いしね」

「そうだった! もうドロドロネバネバはいやぁ!」


 うん、粘液まみれのJSはなんかエロかったね。

 一八禁指定してもいいくらいだ。


「その点リザのような氷系や炎系の魔法はスライムに対し絶大な威力を発揮する。他の魔物にだって効果は抜群だ。氷系は周りへの被害も比較的少ないし氷系に耐性のある魔物はこの辺のダンジョンでは少ないからね。いいスキルが生えたと思うぞ」


 炎系だと辺り一面火の海とかシャレにならない事態になることも稀ではない。

 特に森林とか草原フィールドで季節が秋や冬だったりすると最悪だ。

 枯れ草や枯れ木があっという間に燃え出す。

 ダンジョンの不思議パワーでそのうち元に戻るけどね!

 だが火や煙に巻かれれば普通に死ねる。


「ありがとうございます、導師」

「うん、そうだよ! 千紗が守ってリザちゃんが攻撃。おにいちゃんが指揮でいいパーティーになるよ!」

「うう、妾が守護者なのに……千紗に守ってもらうなんて」

「いやいや、攻撃は最大の防御って言うだろ。攻撃力が高ければ高いほど安全性は増すんだ。敵の殲滅に時間がかかればかかるほど、前衛の危険性が増す。前衛と接触する前に倒してしまえばまったく前衛に危険はないだろ?」

「はっ、その通りです、導師。一撃必殺の魔法を身に着けてみせます」

「うん、がんばれ」


 やる気になったリザを生暖かい目で見ながら、草原フィールドに足を進める。

 結構ちょろい?


「このへんでいいか。リザ、とりあえず練習はストップして陣地を作るぞ」

「ほーい!」

命令受諾(オーダー アクセプト)


 前回とは別の役割を割り当て陣地を構築していく。

 僕はもちろん【みまもり】だ。

 このスキル、効果がまったくわからん。

 見守っていれば発動するのか、どういう効果があるのか。

 ダンジョンの神様、僕に【ヘルプ】のスキルをください。

 じゃなければ、このスキルについて詳しい人はいませんかね?

 まあそんなスキルはこれまで生えたって人は公表されていないけどね!


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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script?guid=on異世界のジョブズに、僕はなる ~定年SEの異世界転生業務報告書~
もよろしくお願い致します。こちらは異世界ファンタジーになります。
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