二人で翌朝を迎える意味。
「嫌……ですか?」
ダブルベッドに戸惑った俺だが、天ヶ瀬さんからは予想だにしない返答が返ってきた。
「嫌じゃない、嫌なわけない!」
勿論、嫌な訳がない!ただ、今までフラフラしてた様な俺が……いいのだろうか。
一緒に寝る資格なんか……。
「寝て下さい、先輩!」
天ヶ瀬さんは俺を寝転がすと、俺の上に四つん這いになって上から覗き込んでくる。
「へへっ!………先輩!」
俺は小悪魔の様にいたずらっぽく微笑む彼女を直視出来ずに、目を逸らしてしまう。
『へぇー、顔、逸らしちゃうんだぁ。』
耳元に囁いてくる天ヶ瀬さんは妖艶で、いつもと違う香りがした。
その香りに段次第と頭がクラクラしてくる……。
『先輩、どうしたんですか?』
更に耳元に囁いてくる天ヶ瀬さん。もう、我慢なんて出来なかった。
「天ヶ瀬さんっ!!」
俺は気がつくと、むしゃぶりつく様に彼女の唇を奪っていた。
俺は四つん這いになっている彼女を無理矢理に抱き寄せ、ずっとずっと濃厚なキスを交わした。
彼女も嫌がる事なく受け入れて舌を入れてくる。
「彊兵、彊兵、彊兵!!」
「マリア、マリア、マリア!!」
お互いに体中を弄り合いながら夢中でキスを交わした。
ーーーーーー翌朝。
ベッドの上で二人は横になっていた。
致してしまった……。
「どうしたの、彊兵?」
マリアが俺の様子が気になり、顔を覗き込んでくる。
「あ、いや、何でもない……。おはよう、マリア。」
「おはよう、彊兵!」
マリアは起き上がると、名前で呼んでくれて、キスしてくれた。そんな一つ一つが嬉しかった。
昨日だけの出来事じゃなかったんだな……。
「さて、俺も起きるか…………はぅ!」
見ると、マリアは俺の下半身の辺りでモゾモゾしている。
朝から元気だね………マリアさん!
俺のゾウさんがまだ起きるなと言っているので、もう少し寝転がっている事にした。
「マリア……………ちょっ!」
俺達の朝ご飯はもう少し後になりそうだ。
「ごちそうさまでした!」
マリアが手を合わせてくる。
まだ、俺達は何も食べてないんだけど………。
「と、取り敢えず朝ごはん作ろうよ!」
R18の境界線を彷徨う俺は急いでキッチンに向かう。
「彊兵は料理上手なの?」
「うん。昔から家族の分も作ってたからね。」
「私も料理勉強しないと、彊兵に嫌われちゃう!」
「そんなんで嫌わないから(笑)」
お互いに他愛もない話だが、それでも嬉しくて嬉しくて……。
ーーーーーーその時だった。
ドンドンと扉が叩かれる。
マリアが扉を開けるとそこには湯川姉妹が立っていた。
「おはようございます、彊兵先輩!」
「彊兵君、おはようございます!」
わ、す、れ、て、たーー!!
ここが天国から地獄の一丁目に早変わりしたのは言うまでもなく……。
「おはようございます、お二方。今丁度、朝ご飯食べてた所なんです。ご一緒にいかがですか? ね、彊兵!」
ーーーーーー彊兵?
場の空気が一気に凍り付く。
「あ、あの、天ヶ瀬さんは確か、彊兵君の事、先輩って呼んでましたよね。 どういった心境の変化で……。」
まるでテレビの芸能リポーターの様に話し出す湯川姉。
「ちょっと待って!」
奈緒ちゃんは靴を脱ぎ真っ先にベッドに入り込む。
「いつものマリアちゃんの香りとなんか違うなと思ったら…………。」
「女性ホルモンがバンバン、性欲ビンビンのニオイじゃないですか! もしかして二人………!」
疑われてる。高校生なのを忘れて、つい夢中になってしまったが………。どうしたら……。
「二人が、なんですか?」
マリアが口を開く。
「私達は昨日、確かに一緒に寝ました。濃厚なキスを交わしました。抱き合いながら寝ました。 それが何か?」
マリアは知っているんだ。二人が何も反論できない事を。
マリアは二人をキッと睨みつけると
「お二人は、彊兵と一緒にいる覚悟はおありですか!? 一生、添い遂げる覚悟がおありですか!?」
そう言い放った。
この意味が何なのか、分からないが……何かをマリアは知っているような気がした。




