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天ヶ瀬裁判長。

夏の旅行は、皆を開放的且つ大胆にしてくれるが、それは時に自分に降り注いで来る毒の雨にもなりうる。著 田崎彊兵


「これより断罪裁判を行います。」

天ヶ瀬裁判長の元、裁判が執り行われる。

とは言っても、テーブルを囲んで、みんなでソファーに座ってるだけなんだが……。


「被告 湯川恵那 男子高校生を、その体をもって誘惑し、正常な状態を保てなくし、私利私欲の限りを尽くした事は、筆舌にし難い行為であるとし、懲役3万年を命ずる!」

「え、決まるの早っ!て言うか、懲役長いですよ! あと、服着させて下さい!」

湯川さんの名前、恵那って言うんだ……。

てか湯川さん、バスタオル一丁なんだが……。

しかも下着も付けてないという……。


「続いて、被告 田崎彊兵先輩! 度重なる浮気! 女性を見るいやらしい目つき!耐え難い!よって、私と同室の刑に処す!」

「異議あり、横暴だ!職権乱用だ!」

天ヶ瀬裁判長の判決に異議をとなえる奈緒裁判官。


「えぇい、四の五のうるさい! もう決まりました!私と先輩! 湯川姉妹は姉妹らしく同室で寝くされ!!」

天ヶ瀬裁判長の独断と偏見により、ゴミの様にロッジ外に放り出される湯川姉妹。

「待って、天ヶ瀬さん!誤解なんです!あと、せめて服を着させて下さい!」

ロッジの外からドアをドンドンと叩いて懇願してくる湯川さん。

「仕方ないですね、ほら。」

天ヶ瀬さんの怒りは凄まじいらしく、ロッジの扉を開けると、湯川さんの下着とスーツ類を放り投げる。

「あぁ、酷い!でも悪くない!」

湯川姉妹はもう一つのロッジに入って行ったようだ。


ーーーーーー。


何だろう……耐え難い殺気を感じるんだが………。

「先輩…………。」

後ろを向いたまま、天ヶ瀬さんが話し掛けてくる。

「な、なんでしょう…………。」

俺は恐る恐る天ヶ瀬さんに声をかける。

さっきから体中から殺気が溢れ出てるんだが…………。当たり前か………。


「私じゃ魅力無いですか? 私じゃ駄目ですか!?」

天ヶ瀬さんの真っ直ぐな眼差しから目を逸らす事が出来なかった。

「駄目じゃない……。でも、俺は天ヶ瀬さんの期待に応えられない…………。俺は浮気ばかりして、天ヶ瀬さんを悲しませた。天ヶ瀬さんの隣にいる資格がない……。」


パシンッ!


俺は天ヶ瀬さんに軽く両頬を叩かれる。

「浮気者。」

「ご、ごめんなさ……」

「謝らないで!」

天ヶ瀬さんは俺の両頬を手のひらで軽く押しながら、半泣き顔でキッと見つめてくる。

「もう、浮気しないで!記憶があっても無くても、貴方は私の彼氏!私は貴方の彼女!」

天ヶ瀬さんは半泣き顔からボロ泣き顔になっていた。

俺は天ヶ瀬さんのその顔を見て、これ程までに無い罪悪感にさいなまれた。

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