第50話 チェスナ特製おにぎりを食べよう
「で、これは田植機を使ってと」
同じゴーレムを乗せた田植機で、苗を植えていく。
こういうとき、ゴーレムって便利だ。手や足だけ作ればいい。
「ヤバイね、コーキ。ウッドゴーレムに、そんな使い方があったなんて」
「前世の知識があっただけだよ」
開発した人がすごいだけ。ボクは、なにもしていない。
「そうだ、コーキ。ポーションができあがったよ」
細い瓶に、薄いオレンジ色のポーションが入っている。
竹とんぼドローンで、霧状にした防虫ポーションを撒く。このポーションはボクが頼んで、パロンが作ったものだ。農薬ほど強くはないが、基本無害である。野菜やコメの味も、損なわない。
ドローン技術ができたことで、いちいち歩きながら撒かなくてもよくなっている。
完全無農薬といきたかったけど、やめた。周りの畑も無農薬栽培にする必要が出てくるらしい。虫の被害が、広がっちゃうんだとか。
ドローンには、クコとスライムが乗っている。ブランコに揺られながら、スライムはポーションを散布している。
「こんなもんかな?」
最後に、コンバインを作成した。ゴーレムをいっぱい作って刈り取るコトも考えたけど、コンバインを使って手早くやったほうがいいかな、と。まだ収穫までには時間があるため、倉庫にしまっておく。
数日後。
田んぼに、おコメができていた。
「うわああ、まさかとは思ったけど」
早すぎる気がするけど、このおコメはボーナスだという。
やはり世界樹が、成長を促進してくれたらしい。
今度は、ボクの分の田んぼだけではない。みんなの作物が、等しく促進されていた。スピードはボクのスペースより、わずかに遅いけど。
パロンが作った石窯で、おコメを炊く。
さっそく味見を。
「おお、これは!」
できあがったおコメに、ボクは感動した。
「なるほど。たしかにおいしいね!」
「これが酒になるとは。楽しみでならん」
クコはそればっかりだね。
「チェスナちゃん! あの道具はなんだ!?」
「うちでも、ぜひほしいぜ!」
行商人と冒険者一行が、またチェスナをナンパしに来た。
「こらこら。チェスナはみんなの財産だよ。帰った帰った」
パロンが、人払いをする。
「待てって。俺たちはただ、あの竹とんぼが気になっているだけさ」
防虫ポーションを撒いているドローンに、行商人が注目していた。
「すいません。あれは、売り物じゃないんです……」
ボクは、行商人さんに説明をする。
ボクの魔力で動いているから、ドローン単体としては売れない。たとえ魔法使い系の人が扱えたとしても、コントロールを一から覚えないといけないだろう。ラジコンの知識があるから、ボクでも操縦できるのであって。
「あれは、使い魔を動かすのとはわけが違うんだよ。ワタシにも、原理がわからないんだ」
「そうか。残念だな」
行商人が、肩を落とす。
「仕方ない。チェスナ。防虫ポーションだけ売ってあげて」
「はい。パロンさま。では、こちらをどうぞ」
薄いオレンジの液体が入った容器を、チェスナが行商人に売る。
「ありがたい。これで我が都市も、イナゴに悩まされることがなくなるだろう。俺の名前は、ウィード商会の【ダンディ】・リオンだ。彼らは、俺が雇っている護衛団だよ」
リオンは、ダンディを自称した。どう見ても三枚目の残念イケメンで、とてもダンディって感じではないけど。
冒険者たちも、見事なまでに男所帯である。
「コーキです。よろしく」
リオンたちと、友だちになった。
「あっ。おコメも食べていってください」
「いいのか? よそ者なのに」
「だからですよ。食べて、気に入ったら、購入を検討してください」
「そこまで自信があるなら、いただこう」
リオンが、食べる気になってくれている。
「待ってください」と、チェスナが商売用カウンターから出てきた。
「コーキさま。せっかくなので、わたしも炊き出しをお手伝いします」
チェスナ自らが、おにぎりを作る。
「コーキさま、こういう感じでしょうか?」
「いいよ」
ちょっと歪だけど、チェスナの分はちゃんとおにぎりの形になっていた。
「どうぞ!」
「ありがとう! お前たち、チェスナちゃん直々のメシだ! ありがたくいただこうぜ!」
男子校のノリで、リオンたち冒険者一団がチェスナ特製おにぎりを頬張る。
「いただきますっ。ああ、うめえ。これを商品化してぇ」
そんなにおいしいんだ。ボクもいただいてみよう。
リオンのいうとおり、チェスナの愛情こもった手作りおにぎりは、おいしい。力任せに詰め込んだボクのとは違って、優しい味だ。
「おいしいよ、チェスナ」
「ありがとうございます。コーキさま」
チェスナが、モジモジする。
「そういえばキミたち、ウィード商会の人だったんだね?」
ほっぺをゴハン粒まみれにして、パロンが指のコメ粒を舐めた。
「知ってるの、パロン?」
ウィード商会は、ツリーイェン、コラシェル、王都ダリエンツォをつなぐ、重要な立場にいる商会らしい。
「クレキシュに行く途中で、小さい街があったろ? そこを拠点にしているんだ」
「ネトルシップ財団とも、やりとりさせてもらっているんだぜ」
多忙なティンバーさんたちが対処できない案件を、引き受けることがあるという。
「そうそう。この村の情報を、ティンバー・ネトルシップ殿が王都に伝えたらしいぜ」
「ティンバーが、王都に?」
「ああ。あちらの王女、【ヴェリシモ・ダリエンツォ】殿下が、近い内に視察にいらっしゃるらしい」
(第四章 完)




