第49話 農耕器具作り
「パロンがそこまで、強い発言をするなんてね」
「だって、少なからずワタシたちの生活にまで影響しているはずじゃん。でも、ワタシたちは異世界から来た人物は、コーキしか知らない。こちとら、長寿のハイエルフだよ? そんなワタシたちにさあ、伝承が行き渡っていないなんておかしいじゃんか」
たしかに。
仮に勇者か魔王、もしくは宗教団体の誰かが転生者だった場合、もっと世間は快適になっているはずだ。
しかし、その文明は見当たらない。
「勇者か魔王だって、ひょっとしたら転生者だったかもしれない。それなら、変わった文明を持った一族だったって証明になる。しかし、それら文献をワタシは見たことがないよ」
ボクが思っていたことを、パロンも語った。
痕跡があれば、ボクにだってわかる。
どこにもないということは、ボク以外に転生者はいないってことか。
エルフのパロンが、ボク以外の転生者を知らないって言うなら、そのとおりなのかもね。
事実、クレキシュ大渓谷の技術は、魔法が中心だった。科学力が使われていたが、それも一部である。文化レベルも、相当低かった。魔法に依存している様子が、うかがえる。
「だから、安心しておコメを育てたら?」
「それもそうだね」
おコメに罪はない。
ありがたく、ボクたちでいただくことにしよう。
「ささ、おいしいおコメを作ってくれるんだろ? 作業に戻ろう」
「そうだね」
種モミを苗にしている間、田んぼを作る。ゴーレムにも手伝ってもらい、適当な広さに耕す。本当にアバウトだ。探り探りで。魔物の死体を混ぜた腐葉土を、肥料にした。スライムも手伝ってくれる。
「はあ、はあ、ひい」
クワを振りながら、思った。ボクたちだけでやると、ちょっと時間がかかり過ぎかな、と。
広すぎて、全然先に進まないや。パロンが作った農具でも、手間がかかる。
移民のみんなが手分けして耕してくれても、人力では限界があった。
「麦も大変だけど、コメも苦労するね」
イチから作るとなると、どんな作物も一筋縄ではいかない。
牛が鋤を引いて、がんばっている。
のっそりのっそりと、田んぼが出来上がっていった。
それもそれで、癒やされる。
とはいえ、もうちょっとスピードを上げたいね。
「よし」
ボクは倉庫から、壊れたイスや古くなった馬車を出す。用途をどうしようか、悩んでいたものばかりだ。腐らせてキノコを生やすか、腐葉土に混ぜちゃうかと思って、一応保管しておいたのである。
今は、トレント世界樹がくれた鉄もあった。これなら、アレが作れるかも。
「ここをこうして、こうだ」
頭の中に機械をイメージして、組み立てていく。
「できた!」
壊れた馬車を、田んぼ用のマシンに改造した。ゴーレムと融合させて、ボクがいなくても動かせるようにする。我ながら、いい出来ではないか。
「コーキ、なにそれ?」
「トラクターだよ。ボクのいた世界にある、農作物用の機械……カラクリだね。手早く畑を耕せる、道具なんだ」
さっそくトラクターに乗り込んで、畑を耕す。
ハンドルを動かすボクの姿に、アザレアやガルバが羨望の眼差しを向けている。
「やってみます?」
「頼む! 乗せてくれ!」
ボクは承諾して、みんなの分もトラクターを作った。
これで、鉄は使い切っちゃったかな。
「一つの田んぼにつき、一台ですよー」
「おーう」
移民たちが、それぞれ自分たちの田んぼで、トラクターを動かす。
ボクの魔力で動く木製トラクターが、畑を田んぼに変えていく。
仕組みもボクはよくわかっていないし、耕運の知識なんてなにもない。
けど、たしかにトラクターは動いている。他の人が動かしても、十分に働いていた。
「すっごいね。すぐに田んぼができあがったよ」
「こういうのって、手でやったほうがいいのかな、って思っていたけど」
異世界を題材にした作品でも、コメ作りってたいてい手作業だよね。
「ドローンができたからね。トラクターなんかも作れるんじゃないかって」
ボクも手作業にするか迷ったが、結局トラクターなどの農業機械を使うことにした。あと、作れるから、というコトもある。冒険に出る可能性もあるから、誰かに任せたいという考えもあった。
あっという間に育った苗を、泥に植えていく作業を始める。
この調子で、どんどん田んぼ用の機械を作った。
「さて、ボクは田植え機も作っておこう」
田植え用の機械も、開発する。
「ねえコーキ、ワタシはどうしていようか?」
パロンたちのおコメは、ボクが作っているからね。クコも、することがない。
「じゃあ、作物用の防虫剤を作ってくれる? 空から撒けるように、道具も作っておくよ」
栄養がたっぷり詰まっている作物は、虫も大好物だ。また、病気にもなりやすい。
虫が逃げていき、病気をも防げる薬品は、作っておきたい。
完全無農薬野菜は、たしかに健康的である。
けど、他の畑も同様の処置をしておかないと、被害が出てしまう。土から作り直しになっちゃったり。
そのため無農薬栽培者は、それ以外の農家に嫌われたりするのだ。
薬学に詳しいパロンなら、きっとその問題を解決してくれるはず。




