第5話 委員会決め
健康診断が終わった直後、体育館で上級生による部活動紹介が始まった。が、正直どれもピンとこない。
――俺は帰宅部でいい。部活するぐらいならバイトしたい。
紹介が終わると、次は委員会決め。俺がいた元の世界の高校では、体育委員と図書委員を経験している。
図書委員は週一活動で少し面倒だったが、体育委員は体育祭前後以外ヒマだ。狙うなら体育委員だな。
「委員を決める。まずは学級委員長だ。男1・女1の2名。立候補はいるか」
星咲先生の声に、1人の女子がすっと手を挙げた。
「私が学級委員長に立候補します」
「東郷か。お前が来ると思っていた。他に女子はいるか? いなければ東郷で決定する」
東郷さん、堂々としていてすげえな。自分から委員長に行くのは尊敬すらする。
(……いや、Mなのか? 東郷さんはMなのか!?)
「はいはーい! 宝輝ちゃんが委員長するなら俺っちやるー!」
なぜかノリノリで馬波が手を挙げた。
「いやいや、俺ちゃんがする! 宝輝ちゃん、どっちがいい!?」
島瀬も負けじとアピール。東郷さんは2人を見て、ため息をつき、おもむろに口を開いた。
「ありえない。お前らみたいなバカと組むなんてごめん。どっちも却下」
「はっはははっ! おもろ!」
「宝輝ちゃんおもろいわー!」
隣の時末さんがチョンチョンと肩を突いてくる。
「何が面白いのか私には分からんのやけど」
「いや、僕にも分かりませんよ」
「ちぇっ。ちょっと可愛いからって調子乗ってんじゃねーの?」
「そうだぜー。俺っちたちを怒らせねぇ方がいいぜ?」
「ふん。バカを舐める趣味はない。バカがうつる。――先生、男子の学級委員長はいりません。私ひとりで十分です」
「いや、男女1名ずつがルールだ。嫌でも受け入れろ。他に男子で立候補はいないか?」
シーンと静まる教室。誰も手を挙げる気配がない。
「ではこの2人のどちらかを――」
そのとき、1人の女子がピッと手を挙げた。
「はい! 先生! 推薦したい人がいます!」
声の主は希羅だった。
――あ、三島リーダーかな? なら納得だけど。
「誰を推薦するんだ?」
「私が推薦したいのは……牙城さんです!」
……ん? 聞き間違え?
「牙城。やるのか?」
やっぱり俺かー!!
「いやいやいや、やりませんよ! 俺、まとめ役とか向いてないですって」
「だそうだが……遊凪、なぜ牙城を推薦する?」
「牙城さんは、茶髪で雰囲気はちょっとヤンキーって感じだけど――」
「“感じ”ではなくガチでヤンキー」
隣の時末さんが即ツッコミ。
「本当は根が真面目で、頭も良くて、仕事もできて……」
「根は腐ってて不真面目で、ずる賢くて、仕事は私よりできない」
希羅が褒めてくれるのに、横から地味に刺してくる時末さん。比べる相手が強すぎるわ。
「仲間思いで観察力があって、優しい人です」
「興味ある相手だけに優しい。ガン見とチラ見の使い分けに自信がある。変な人です」
もう刺さる刺さる。
希羅の言葉は本当に嬉しいのに、時末さんの“俺だけに聞こえる音量”のディスが心にクリティカルヒット。
「ちょっと! 時末さん! 希羅の邪魔しないでくださいよ! 本当のことを言ってくれてるのに!」
「ふーん」
何その雑な返事! 好き放題言ったくせにぃっ!
さらに星咲先生が興味を示す。
「仕事ができると言っていたが……中学生の頃から一緒にバイトしていたのか?」
「え、中学生ってダメなんですか?」
「いや、ダメではない。小学生から働く者もいる。この世界では珍しくない。ただ、遊凪がお前を高く評価していたのが気になってな」
ああそういうことか。よかった、説明しやすい。
「同じバイト先で働いてましたからね。たぶん、その時見てくれてたんでしょう。――ありがとな、希羅。めちゃくちゃ嬉しかった」
希羅は照れたように微笑む。
「では――牙城で決まりだな?」
「やるとは言ってない!」
その瞬間、島瀬と馬波が食ってかかる。
「待て! こんなインキャが委員長とかありえねぇ!」
「そうだぜ! ヤンキーもどきに務まるかよ!」
誰がヤンキーもどきだ……。
「悪いが辞退するよ。クラスメイトがこう言ってるし」
「時間がない。他の委員も決める必要がある。島瀬、馬波、牙城の3人でジャンケンして勝った者が学級委員長だ」
「いや、なんで俺が入るんだ! その2人でやれよ!」
「黙れ。私に指図するな」
こっっっわ!! 何この先生!
「……もういい。負けてやる」
俺は深呼吸し、宣言する。
「俺はグーを出す。お前らはパーを出せ」
「その手には乗らねーぜ!」
「いくぜ!」
「「「ジャンケーン……ポン!!!」」」
俺は宣言通りグー。
……なのに、2人はチョキ。
「は? お前らなんでチョキ出してんだよ。パー出せって言ったろ?」
「こ、こいつ……本当にグーを出した……」
「あ……ありえねぇ……」
「ありえねぇのはお前らだあああ!!」
「よし、牙城で決定だな」
「う、嘘だろ……?」
星咲先生は心底疲れた顔でため息をつく。
――こうして俺は、学級委員長になってしまった。




