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 第六話 血の鏡 

大変遅れて申し訳ございません。

やっと続きを書きました。相変わらずの不定期更新です。

 女王の部屋に散らばる死体の血が音を立てて空中に集まり黒い鏡となる。

 その鏡の中に一人の女が映し出される。

 ラベンダーピンクの髪にサーモンピンクの瞳。

 幼さを残した顔は天使のように愛らしい。

 でも体は成熟した女のものだ。

 そのアンバランスさが言われも知れぬ色香を漂わせている。

 そして醜い本性は見事に隠されている。

 だがその本性を知っている9体の【はぐれ者】は土下座して冷や汗を流しながら鏡の中の女から視線を逸らす。まるで一目見たとたん石に変えれれてしまうと言わんばかりに。


『お前達【精霊姫】を取り逃がしたのね』


 女は妖艶に微笑む。

 これ程恐ろしい笑顔があっただろうか?

 女のか体からどす黒い殺気が溢れ部屋の温度が下がる。

 床はうっすらと霜に包まれる。


「お許しください。お許しください。お許しください」


 メイドの格好をした【はぐれ者】は悲鳴を上げる。

 その身に刻まれた奴隷紋が黒く輝く。


「ぐっ……」


「ひぃいいいい~~」


「苦しい!! 」


「お慈悲を~フイロメア様~お慈悲を~」


「いだい~いだい~」


 8体の屈強な兵士の格好をした【はぐれ者】も痛みに耐えかねて声を漏らす。

 体中の血が沸騰したような感じだ。

 体からぶすぶすと煙が上がる。

 このまま折檻をされればものの1秒もしないうちに体から炎が上がり灰になりそうだ。

 あまりの苦しさに本体をさらけ出す。

 ゴブリン、スライム、コボルト、スケルトンどれも下っ端で醜い生き物ばかりだ。

【はぐれ者】となった彼らは醜い。

 フイロメアとて例外ではない。

 美しい女を喰らってその女に化けているだけだ。

 その正体は醜いモンスターだ。


「チャンスを……もう一度チャンスを……必ず……必ず【精霊姫】を見つけ出してその血を断ち切ります」


 涙と鼻水を垂れ流しながらフイロメアに嘆願する。


「そうね。 私は優しいから最後のチャンスをあげるわ」


【はぐれ者】達を統括した女が言う。


「女神の血を引く者を見つけ出して殺しなさい。忌まわしい女神の封印はあの女の子孫が生きている限り解けない」


 折檻が終わると【はぐれ者】の体から熱が引く。

【はぐれ者】達は己の躰に回復魔法をかける。

 ボロボロになった服はそのままにしておく。

 鏡の中のフイロメアは大きく腕を振る。

 兵士の血肉が再び空中に集まり一つの姿を模った。

 それはフイロメアにそっくりな赤子。


「さあその子を受け取りなさい」


 メイドの女は恐る恐る赤子に手を伸ばす。

 赤子は柔らかく暖かかった。

 思わず頬擦りするメイド。

 赤子の目が開く。フイロメアと同じサーモンピンクの瞳がメイドを見詰める。

 不意に赤子の手がメイドの髪にのびぶちぶちと髪を引きちぎった。


「ひぃいいいいぃいい~~~~~!!」


 赤子はポイっと血まみれの髪を捨てる。

 頬擦りがうざかったのだろう。


「私の分身を作った。怪力ぐらいしか能力は無いが。この子の名は私と同じフイロメアにするわ。この子を女王が産んだ子として育てなさい」


 こくこくと髪を毟られたメイドが頷く。

 メイドの頭から血が流れる。

 メイドはこの赤子が不気味でしょうがなかった。

 作られたばかりだと言うのに人の言葉が分かりみんなを監視している。

 怪力しかないと言っていたが恐らく【魅了】か【洗脳】のスキルがあるのだろう。

 メイドのルルは生まれてくる王女の為に用意されたおくるみに赤子を包む。

【はぐれ者】に王位を簒奪された瞬間である。


「必ずや【女神の娘】を見つけるのよ!!」


「はっはい!! 必ずや【女神の娘】の首をフイロメア様に捧げます」


 メイドと兵士は跪き頭を下げた。

 フイロメアの姿が揺らめき鏡の中から消える。

 空中に浮かんでいた血の鏡はばしゃりと床に落ち、ただの血に戻る。



 ガシャガシャと鎧の音がしてバンとドアが蹴破られた。

 ドアは魔法で閉められていたのだ。


「パメラ様!!」


【身体強化】のスキルを使いドアを蹴破った将軍が騎士を連れて部屋になだれ込んできた。


「これは……」


 30代のまだ若い将軍は部屋の惨状に絶句する。

 パメラ女王は息絶えていた。

 床は兵たちと魔物の死体で溢れていた。


「パメラ女王はお亡くなりになりました。魔族と魔物が現れ。女王とみんなを殺しました」


 ルルは神妙な顔をして嘘を吐いた。

 目には涙を浮かべている。


「我らの力がおよばず。パメラ様がお産みになった姫様だけはお守りする事ができました」


【はぐれ者】の兵士は号泣した。

 メイドのルルも【はぐれ者】が化けた兵士も見事な演技力だ。

 誰も彼らを【はぐれ者】と疑わないだろう。

 ボロボロの鎧血塗れの体。メイドは頭から血を流している。

 将軍と共に来た兵士も女王を救えなかった悔しさで涙を流す。

 だが……その中で将軍だけは違和感を感じた。

 レーベル家は代々王家の暗部として働いてきた。

 その勘が伝えるのだ。

 おくるみの中でスヤスヤ眠る赤子は偽物だと。

 シオドア・レーベ将軍だけは騙されなかった。





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 2019/5/7 『小説家になろう』 どんC

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最後までお読みいただきありがとうございます。

感想・ブックマーク・誤字報告ありがとうございます。

ちょっと手直します。ごめんなさい。


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