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キャッスルガード・ヒーローズ  作者: 栗原寛樹
ジェスト、ゲームオーバー対策に乗り出す
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結局ほとんど解決してなくないか?

 僕は三度、光の下へ。


 ガートランドが目をこすりながら言った。


「てかジェスト、結構考えてんのな」

「なにそれ、気持ち悪い」

「お前、俺をそういうキャラに仕立て上げようとするのやめて」


 ガートランドの言った僕の考えとは、すでにジュリアさんに説明した近場の村侵攻のことだ。さっきルシェイナさんに話したとき、ユージンとガートランドも聞いていた。


「イイリコさんに村一つプレゼントって、ジェストさん、やり手っすね」

「ああ、それいいかも」


 それなら姫代子も悪い顔しないだろうし、エイタローも喜んでくれそうだ。

 だがすでに日が傾き始めている。三人しかいない僕らでは、夜は実質的に野外では行動不可だ。外に出るくらいなら寝た方がマシ。


 ついでだから僕は用事をすませようと思っていたが、その前に現状を一応確認しよう。


「じゃあ、何度目かわからんけど今からするべきことを確認してから、念のため城の探索を続けよう。もしかしたら防衛戦が有利になるようなのがあるかもしれない」

「たとえば?」

「なにかだよ。わかんね。今のところ解決したのはタクティシャンが誰かってこととこっちのリーダーが誰かってこと。嬉しくないけどこっちの戦力もおおまかにわかった。ここまではおっけ?」


 頷く二人。


「僕らが取り得る道は二つ。襲撃がどの程度の間隔で来るのかを正確に把握するか、僕らのいない間に襲撃が来ても耐えられるという準備をするか」

「襲撃の間隔っていうのは難しいっすね、きっと。ヘルプにもありませんし、となるとNPCがなにか知ってるか、あとは図書館くらいしか調べるところないっす」

「戦闘忌避組が城をうろうろしてる。城の中について、そいつらがなにか知らないかも聞こう。あとはフレンドも出来るだけ増やしたい。出来れば顔の広そうなヤツ」

「それで、結局どっちを取るんよ? 俺は先のこと考えるの苦手だからジェストに任せようと思うけど」


 ガートランドめ、楽しやがって。

 ユージンは、さっきのせりふから考えると、あんまり襲撃間隔には期待していないようだ。僕らがログアウトする長さによっては、どちらにしろ耐える分の戦力が必要になるのが理由である。


 だから、


「戦力確保。そのためには僕としてはどうしてもタクティシャンを動かしたい」

「ですね……まあ、ニート組がやる気を出すのが一番なんすけど。昨日の感じじゃ、全員で戦えば相当もつはずっすよ」

「うん。ただ連中を動かすのはノリアキングでも難しかったから、僕らが二三日でどうにかできるとは思えない」

「だから一人で戦局を左右しうるタクティシャンになるっすね。ただまあ、ゴミじゃなかった場合っすけど。村を攻めた結果使い物にならないとかなったら最悪っすね」

「そんときは、もうそんときだ」


 がりがりと地面にすべきことを書いていく。


「今のところタクティシャンはジュリアさんに任せる。だから次は攻めるところを探さなきゃならない。地図開くよ」


 左目を閉じ、メニューからワールドマップを表示した。三人で共有する。


 まだ黒塗りの大地。かなり広い。その一番右下が、僕らの砦、サンダマスヴェリアだ。


「この大陸の南東の端、ちょうど半島になっているところがサンダマスヴェリア。北東に道が延びていて、ウルフ狩りの平原と森になってる。こっちの方はかなり先まで見えるけど、それらしきところはない。となると、反対側」

「半島の先の方か」


 メタ読みになるけれど、WWで似たような土地がある。半島の付け根に城、半島の先に漁村、という形。


「たぶんある。丘の向こう側だから城からは見えないけどね。明日は、それを確かめたい」

「外に出るっすね」

「そう。そんで問題になるのがメンツだ。僕らは今、後衛に寄ってる。盾が欲しい。あとシーフかハンター。もしかしたらガンナーでもいいかも。とにかく遠目の効く職業」

「盾一人はこっちのツテでなんとかなるっす。フレで一人、昨日臨時組みまくってたのがいるんで。さっき通信したときはフリーでしたし」

「じゃあ、あとはもう一人前衛と『鷹の目』類似スキルが使えるヤツ。拠点見つけたら敵の戦力も確認したい。小隊メンツの確保と、あとはウルフの肉を食料に入れて、ついでに買い物がてらファーマシストになにかそれっぽい村とか見なかったかきいてみよう。これが今から明日の朝までにすること」

「うす」

「おけ」

「それで、この作業と城の探索、二人に頼みたい。僕は一瞬ログアウトする」


 はあ? と二人の顔。

 いや、言いたいことはわかる。わかるからちょっと聞いてくれ。


「たぶん明日の朝……二分くらいで戻れる」

「ションベ」

「違う。僕らがゲームオーバーになる条件が本当に正しいか、制作者に質問してくるんだ」

「ああ、なるほど。アドバイザーっすか」

「……ヘルプに書かれていないことだから教えてくれない可能性もあるけど、一応ゲームの進行を左右する要素だ。教えてくれないならその理由も聞くよ」

「了解ッス。てか遅れたらジェストさん置いていくんで、心配しないでください」

「はあ?」


 今度は僕が目を丸くした。


「単なる斥候みたいなもんなんで。リアルで一分遅れるとこっちじゃ6時間っすからね。今が午後五時なんで、外で二分だと午前五時。さすがに日が昇ってから出発するんで、八時まで待ちます。つまり大体二分半。それより長引いたら、とりあえず城で待機しててくださいっす」

「ちょっと待て、じゃあ俺がログアウトするよ。ジェストはいた方がいいだろ、なんか、それ的に」


 こいつはなにを言ってるんだ。

 ガートランドじゃ絶対に二分で戻ってこれない。イメージだけど結構自信ある。そうなった場合、僕らはもう一人前衛を探さなきゃならなくなる。さすがに前衛を三人探すのは厳しい。


 ユージンは頭のいいヒーラーだ。他のライトメイジに任せるよりよっぽど信頼できる。となると、僕がログアウトするのが最も効率がいい。それに、帝ヨーシにはききたいことがいくつかある。


「それじゃあまあ、遅れた時は任せた。今日は……たぶん襲撃はないと思うけど、もしあったらすぐにメッセージくれよ。飛んで戻る」

「うす。遠慮無く」


 そして僕は、その場で再びメニューを開く。


 先にゲームマスターを呼び出すための手順を確認。向こうからしてみればサービスインしてから十分も経ってない。まだ席にいるはずだ。

 リアルでの時間は思った以上に貴重だ。帝ヨーシがすぐに反応してくれればいいけど。


 ログアウト。






 悪夢を見たあとのような感覚。


 筋肉がびくりと震えて、僕は目覚めた。


 うげえ、予想以上に気持ち悪い目覚めだ。なんかゆっくりと脳みそをつかんでいた手が離れていくような、心臓に入っていた腕が抜けていくような、形容しがたい不快さ。


 僕だけが感じるコトなのか、多少なれ誰でも感じるものなのか……とにかく、貴重な十秒を僕は悶々として過ごしてしまった。筐体のウィンドウには、ログインしたときと同じようなワールドマップが映し出されている。


 ありがたい、デジタル式の時計がついてるぞ。


「コール、マスター」


 口に出すと、筐体内部のマイクが僕の音声を拾って、すぐにアロハの男が映し出された。


「どうしたんだ、ジェストくん。休憩か」

「二分で戻るんで手短に聞きます」


 ちょっと失礼な言い方だが、こっちだってネクロマンサーに付き合ってるんだ。そのくらいいいだろう。


 1.ゲームオーバーになる条件は「軍団長」のデスとサンダマスヴェリア城玉座へのモンスターの到達で間違いないか

 2.他プレイヤーのリアル情報なんかは頼んだら教えてくれるか。

 3.襲撃のタイミングは教えてもらえるか。

 4.軍団長の権利は委譲可能か。


 ここまでで30秒。最後の質問は念のためだけど、間に合わないようなら返答を待たずにログインする。


「ふむ」


 という帝の相づちすら時間が勿体なく感じる。


「1から順にイエス、ノー、ノー、イエス」


 ありがたい。こっちの意図を読んでくれた。短縮のために二択で答えられる質問にしたんだ。


「時間が来たら途中でログインしてくれていい。補足する。サンダマスヴェリアへの襲撃はもちろん一回じゃない。ただシステム的な質問じゃないから答えられん。あくまでも攻略対象の情報だ。ヒントはゲーム中にあるから探してくれ。あと他プレイヤーの情報だが、プライバシーの侵害になるから原則的に教えられない。どうしても必要な場合は本人に私たちから連絡を取るから、実際に会って聞いてくれ。軍団長はいくつか制限があるが、旗を譲渡すればいい。旗のアイテムに詳細が記載されている」


 よし、よし。思った以上に簡潔に説明してくれた。最初の説明の時にグダってたのが嘘のようだ。


「一言でいい」


 ログインしようとした僕に、帝は話しかけてきた。


「ネクロマンサーはどうだい」

「まだレベル低いんでなんとも言えないですが、悪くないんじゃないですか」

「パーティには残れたみたいだな。安心したよ。まあ、君ならうまく立ち回れると信じている。だが念のため助言しておくと」


 あと五秒。


「君ら、このままだと全滅だぞ」


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