[ 最終幕.エピローグ/自分達の時間 ]
「20年って意外と早いもんだね」
机の上にテキストを並べPCで文章を打ち込みながら彼は呟いた。
「そうだね。あの人の意志を受け継いで今があるんだよね」
彼の後ろで片付けを代わりにしていた彼女が言った。彼が書いているレポートには年に数回開いている『平等の会』で使用することが書かれている。
あの20年前の不思議な出来事から、何も出来なかった自分達だけれど少しでも力になりたいと思い、ような人々の支えになろうとして今日に至るわけだ。
まあ、かれらにも「自分の時間」というものがあるわけだから、毎月何度も会を開いてはいないのだ。それに、『生きる』大切さと伝え支えることも重要だが、今ここにある時間をあたりまえに過ごすのも大切なコトだ。
今度、先生も読んでみようかな、あいつ使って、と彼は思った。
「でもさー、今でも思い出すなぁ、帰りの事」
懐かしげに彼女がぽつりと言うと、彼も頷いて喋り出す。
「たしか、バス停でだったよな」
奇々怪々なパーティーの後こんなコトがあった。
『内田、ホント後で説明するからさ、言わなかったら賠償金としてアイス毎日おごってやるって』
『関元、冬にアイスはっ……』
『ちょっと待って! 今何て言った!?』
『だから、アイスを――』
『冬はさむいですよって』
『武野は違うって。関っチ、その前!』
『その前? だから「賠償金」として―――』
『みんな、帰るのちょっとタンマ! 貰うの忘れているよね、賞金!!』
《…………ああああ!!》
「あいつと自分は賞金を賞金を貰うの忘れて、先生は大事な休日を失ったんだよな……」
そして、取り憑かれた内田は自分の意識と記憶を数時間抜けてしまっていた。
失ったモノは、大きかったり小さかったりそれぞれだけど、その失ったモノの中で得られたモノも意外と大きかったりする。
「……先生、ゴメンナサイ」
「まぁ、良かったんじゃないの? 先生も先生で性格がイイ方向に変わったし」
「う~ん、イイのかな?」
よくないのは、帰ってそのあとのことだ。地図で「イシナカ村」を調べても、インターネットでその町の事を調べても可笑しなことに出てこなかった。
……後から思ったが、これは偶然なんだろうか? 「イシナカ村」・「名賀石 笑子」、そして彼女が度々口にした「かなしい」という感情。全て、文字に繋がりがあるんじゃないか。
良いことは得られた。だけど、オカルト体験はもう懲り懲りだ。オカルトマニアじゃないし。
「なぁ、今度の元旦、久しぶりに森口先生も誘って初詣一緒に行かないか?」
《そうだな》
和室からひょっこり顔を出した関元僚とキッチンに立っていた内田郷美と白いプリントを持っていた武野に向かって返事をした。
森口誠修 先生、元気かな? 彼と会うのは数年振りだな。そう思いつつ、みんな自分の仕事に戻った。
LACK TIME 。 欠けた時間の中からおれ達の物語は始まった。
そして、その物語は続いてゆく。
どこまでも……




