48. シュラバを治めるには私が悪役になるしかないのか
再開いたしました。よろしくお願いします~。
同時攻略、言い換えれば二股。もしくは複数人と広く浅くお付き合いする。もちろん、現実でもそういうことを上手にやる人もいるだろう。だが、ヒロインちゃんはそこまで器用じゃなかった様子。
アレックスは執着系だし、オスカーは直情的だから、この二人はぶつかるだろうと思っていた。
ヒロインちゃんの恋路を応援するわけではないが、オスカーとアレックスが喧嘩してるのは確かに見たくない。
ぽんこつで内容をほとんど思い出せない私が、修羅場イベントについて、実は少しだけ内容を覚えている。ゲームをしていたとき、私は同時攻略が苦手で、一人ひとり攻略対象を絞って、イベント回収をしていた。だからシュラバを見たことがなかった。それで一度、友人に頼んでシュラバイベントを見せてもらったのだ。
喧嘩を始める男の間でヒロインはおろおろするだけなのだが、選択肢によっては二人の好感度が下がらずにすむ。それは、イベントに悪役令嬢が飛び込んできたとき。悪役令嬢が出てくるかこないかは、ヒロインと悪役令嬢の好感度に左右されるそう。
私が出て行くことで、多分何かしらの影響があるだろうけど、覚悟を決めて三人の間に割り込んだ。傘は差してたよ。当たり前だけど。
「何をなさっているの?濡れてしまうから校舎に戻ったらいかが?」
急に私が現れたせいか、ソフィアが怯えたような眼をした。
「サシャに話は聞きました。あなた『魔術師の舞踏会』に、オスカーのエスコートで参加されるそうね?」
あなた、とソフィアを扇で指し示す。指差したら失礼かなと思ってやったが、わりとこのポーズ悪役令嬢っぽい。
ソフィアは返事をしなかった。また黙ってるつもりらしい。
「そして、その舞踏会のエスコート役はアレックスにも頼んでいたらしいじゃないの。どういう事かしら?何か行き違いが?」
「そうよ。あんた達ちゃんと話もしてないでしょう?」
サシャも一緒に話をすすめてくれる。
要は今度の舞踏会のエスコート役で争ってる。
毎年夏に、エヴルー侯爵家で行われる『魔術師の舞踏会』。国王陛下の第三子であり、侯爵令嬢となったミシェル様のデビューだから、今回はかなり大規模。離宮に閉じ込められていたお姫様のお披露目とあって、参加者は相当な人数にのぼるらしく、誰が誰をエスコートするのかで混乱しているとは聞いていた。
だがとりあえず、落ち着いてもらいたい。雨が降ってるから、夏とはいえ肌寒いのだ。
「あの……」
いつもだんまりのヒロインちゃんが口を開こうとした。それをアレックスが遮った。
「アリス、ソフィアを責めないでくれ。僕とソフィアが先に約束をしていたのに、オスカーが横から手を出してきたんだから」
「オレは、アレックスが約束してたなんて知らなかった。でも、正式に申し込んで、了解を得たのはオレの方だ」
二人が争いだしたから、私はそれを無視してソフィアに自分の傘を差しだした。演出なのか知らないが、女の子は体を冷やしちゃだめだよ。戸惑っていたが、彼女はそれを受け取った。
私はサシャの傘に一緒に入って、にっこりと笑って二人に言った。
「彼女に悪気はなかったのでは?一緒に参加しようと言われて、皆で行けばいいと思っていたのかもしれないわ。今回は先に約束をしていたアレックスがエスコート役になるのがいいと思うのだけど」
私は頑張って棘のないようにと話したが、ヒロインちゃんはさめざめと泣き出す。
「申し訳ありません、ルテール公爵令嬢!私が平民で愚かなばっかりに……」
んなこたあ言ってねえよ、と喉まで出かかったが、笑って受け流した。
仮にも王立アカデミーで学んでいるのだ。社交界のルール位わかっているはず。
「アリス、身分が違うからといってソフィアを馬鹿にするのは許さないと言ったはずだ」
「オスカーの言う通りだ。ソフィアを悪く言うのはやめて欲しい」
おや、何故私が責められているのだろうか……解せぬ……。
だが私を前に二人が結託し始めた。仲良くなるには共通の敵がいればいいのは間違いない。
そう思っていたら、サシャが私の肩をつついてきた。
「やっぱりなんか変……よね?」
「何が?」
「アレックスとオスカー、頑なすぎない?」
確かにそうだけど、もうヒロインちゃんに攻略されてるから仕方ないんだろう。
でもふと思いとどまった。どうして「仕方ない」と言えるんだろう?
聞く耳持たない二人と、サシャやエリアスの違いは何だろう?
(……やっぱり媚薬……?)
考え込んでいると、泣いているヒロインちゃんを慰める役割で、また二人が揉め始めていた。いつの間に集まったのか、校舎の入口あたりには野次馬の生徒がたくさん様子を伺っている。
とりあえず、今は「修羅場」を終わらせなければ。
(えーと、次は、ダンスも出来ず、ドレスも持ってないソフィアを馬鹿にするのよね、確か)
「ところで、ダンスは踊れるようになったのかしら?あなたは努力家だから、きっと上手になったでしょうね。ドレスはどうなさるの?制服で行くわけにはいかなくてよ?」
意地悪く言う私に、オスカーが宣言した。
「ソフィアのドレスはオレが贈ることになっている」
オスカーが「宝石だって準備している」と言ってたから、相当のぼせてるなあとまたドン引きしてしまった。エスコート役ではないオスカーが、ソフィアのドレスを準備すると言うのもおかしな話だから、私は言った。
「『魔術師の舞踏会』のエスコートはアレックスなのでしょう?先にお約束していたのだから。オスカーは彼女と一緒に『お菓子の舞踏会』にいらしたら?来週末ですけど、オスカーがドレスや宝飾品の準備しているなら大丈夫ですわよね?」
「来週末?!そんな!」
珍しくソフィアが口を開いた。本当に焦っているような顔だった。ドレスの準備が間に合わないのかもしれない。
「ちょっと、ちょっとお、アリスちゃん!さすがに無理じゃない?それに『お菓子の舞踏会』の招待状をオスカーにも勿論出したけど、次の日が近衛府の公式行事だから今年は欠席するって返事だったし」
「あら、じゃあ無理かしら?」
しばらく沈黙した後でオスカーが言った。
「いや、大丈夫だ。ソフィアのために出席するよ。ノワイユの名にかけて」
「オスカー様……」
ヒロインちゃんは少し戸惑っていた。何か違和感がある。私は彼女に向かって質問した。
「何か都合が悪いのかしら?」
「あの……その舞踏会には別の方とお約束をしていて……」
その台詞に、オスカーとアレックスが驚いていた。他にもいるんかい。
「誰かしら?」
「言わなければなりませんか?」
「それはそうでしょう。オスカーが納得しないわ」
「……エヴルー侯爵であるリュカ様です」
三つ巴か。ますます面倒になってきた。そしてオスカーがかわいそう。それが私の本音だった。
次は【49. 公爵令嬢という立場】です。次回更新予定については活動報告をご確認ください。
よろしくお願いします~。




