7 知らない場所
あけましておめでとうございます。
また少しずつ、更新していけたらな…と
よろしくお願いします。
陽がまだ上り始めた薄暗い時、新しい服を貰いそれに着替え身なりを整えていると視界の端にきらきらとした何かが通り過ぎた。
民族衣装の様な、少しダボッとしたような服が擦れて音を立てる。
まだ薄暗いからか、余計に光って見えたそれ。
着替え終わり、辺りを見回すもベッドの端に丸まっているヴァイスの姿しか見えない。
“……あら、竜の愛し子…可愛い可愛い我らの子…”
頭に響くように聞こえたその声。
驚き振り返ると、目の前それも目と鼻の先とはよく言ったもので鼻先に何か光っているものが触れた。
“…まだ、見えないのね…でも大丈夫、貴方の傍に私達は必ず居るわ”
ふわふわとその光は鼻先から離れ、空中をくるくると回り少し嬉しそうにそう言った。丸い光が喋っているようにしか見えないがその優しい光と声に心が少し温かくなったような気さえする。
その光に手を伸ばすと、手に自分から寄って来て触れた。触れた箇所が、じんわりと暖かくて手をゆっくりと引くとその光は徐々に光を落としてそのまま消えた。
「ソルーラ達だな」
「っ、ソルーラ…?」
声に驚き振り返ると、そこにいたのはウェルダだった。
「火の精霊ソルーラ、精霊には属性があってな今居たのは火の精霊ソルーラ。他には、水地風光闇があるがこれも本当に大雑把に分けての話だ。その下にはもっと細分化されたものがあり、相性がある。今日はその辺から話をして行こうかのう」
“火はソルーラ、水はエクティー、風はフルア、地はアール、光はシャーラ、闇はラクアル”
それぞれの属性の精霊達の名で、大まかに分けたもののよう。
これ以上に色々名前を聞いたけれども、一度には中々覚えられなかった。
この世界での精霊は、基本的には見えるものではなく魔力適性が高いもの程きちんと見える様で、普通に過ごしている人間達は見えるものは少ないのだとか。稀に、適性が無いのに見えるものもいるらしい。
炎は火の上位、氷は水と風の上位、植物は地の上位、雷は光の上位、異常状態系は闇の上位。
無属性は単体、回復は傷を治す程度なら水や地属性だが、大きなものになると光の上位になるためその使い手は中々いない。
精霊は力の塊のようなもので、その辺にたくさんいるもの。精霊にも階級があるらしく、精霊の上が上位精霊、大精霊、全ての属性を纏める精霊王。精霊王にもなると、何かをすると天災レベルのものになるようで基本的には力としてそこにあるだけだという。
基本的に生きるもの全てに等しく力を貸すが、それでも特別というものも存在するようで
「ーーーーそれが、お主じゃな“竜の愛し子”または“竜の御子”と呼ばれる者」
“竜の御子”それは精霊王とこの世界の竜の加護を受ける者。
そうは言っても、この世界での生き方はこの世界の赤子よりも知らない。
ファンタジー要素がどんどんと溢れ出し、目眩を覚えるが同時に期待と不安とが入り混じりどうとも言い表せない感情が溢れ出して止まらない。
20うん歳にして、この胸の鼓動が抑えられない。
なんて、言ってみたかった人生だ。
「……」
「迷い人は、殆どが魔法を知らぬ世界から来るという。受け入れられないのも無理はない」
「魔法って…」
「どうした?」
「…魔法って、私でも使えるんですか!?」
「おお、何じゃわしが気に病むことも無かったか。昨日も言ったぞ、お主は精霊に好かれておるとな」
物事の整理をして俯く龍に、少し話し過ぎたかと、しょんぼりし始めたウェルダだが子供の様に目を輝かせ少し大きな声でそう言った龍に目を丸くすると大きな声で笑った。
あの漫画の主人公のように、あの小説の主人公のように魔法を使えるようになりたいと思った。
「そうと決まれば、まずは魔力適性から確認じゃな」
嬉しそうに言うと、小走りで部屋から出ていったウェルダ。
“くきゅるー?”
「おはよう、ヴァイス」
“キュー!”
ウェルダのはしゃいだ音で目が覚めたのか、小さな声で確認をしてきたヴァイス。
◆◆◆
ウェルダが戻ってきてから少し。
少し大きめの瓶の中、きらきらと輝く小さなものが瓶の中に浮遊している。綺麗でそれを見ていると、瓶の側面にウェルダが触れると中のきらきらが一瞬にして花弁に変わりまるで重力なんて無いようにくるくると回った。
「わしの最適性は、地属性なんじゃ」
「地属性だから、花??」
「中身が何になるかは、その者の属性と想像力次第じゃ。ほれ、同じようにここに手を当てて想像してみろ」
ウェルダが手を離すと、また先程までのきらきらに戻った。
少し触るのが怖いが、意を決して触ろうとすると肩の上にドスッと重みが加わり驚くが片手で肩の上のヴァイスを撫でた。
瓶に手を伸ばすと、ゆっくりと触れた瓶はカタカタと音を立て
「んん?拙い、手を離せ!」
「っ……!」
揺れが大きくなったと同時に手を離したからか、特に何も変化は無かったが慌てて声を出したウェルダが瓶を確認した。
「うーむ……流石は“竜の愛し子”と言ったところか…先ずはその力の制御からじゃな。まさかとは思ったが、これ持ってきておいて良かったわい」
要するに、常に蛇口が壊れた水道のようなものらしく魔力が駄々漏れ状態とのこと。
そんな状態で魔法を使おうものなら、暴走は避けられない。
ぶつぶつと言いながら、ウェルダは服のポケットから白と黒の宝石のついたピアスを取り出し手の上においた。
「ピアス?」
「普通の使い方なら、これに魔力を溜めていざという時に大魔法をつかう補助装置なんじゃが…少しはマシになるじゃろう。付けられるか?」
「大丈夫です。綺麗な石…」
「そうじゃろう?それは、魔石と言って魔物の体内に出来る核のようなもので、これはその中でも上位のものの欠片。元は一つだったものじゃ」
手に取り、それを色々な角度から見ているとウェルダにそう言われ感心しながら身に付けると、特に身体が重くなったりとかそんな物はなく少し身体が軽くなったような気さえする。
「うむ、似合うな。ほれ」
見てみるか?と、目の前に差し出された鏡を見て驚いた。