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転生業務日誌 ~転生神はつらいよ~  作者: 酔生夢死


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20/57

 番外3‐1 ハーレム王は命がけ!?序 『鬼龍院零夜の場合』

(´・ω・`)今回は第3話の転生後の話です

駆け抜ける疾走感って大事ですね……


※ネタバレ:主人公は死にます

 ――これまでのあらすじ

 鬼龍院零夜はひょんなことから異世界へと転生する機会を得た。

 神はこの世界を救う為に、俺に“創造する能力”を与え、沢山の女の子とイチャイチャしろと命令したのだ!

 かー、命令じゃ仕方ないわー、本当は辛いけどやるしかないわー。

 という訳で、異世界でハーレム王に俺はなる!



「なんだけど……何で森スタートなのさ」


 周囲を見回す限りの森、森、森!

 木ばっかりで女の子どころか人っ子一人見当たらない!

 あ、でもファンタジーだし森の中だから隠れ里的な村にエルフと住んでるのかな?


「よし、そうと分れば早速散策を……」


「…………!」


 今、遠くの方で悲鳴のような物が聞こえた気がする。

 いや、アレは絶対女の子の悲鳴だ!


「よっしゃ、早速テンプレ的展開! ここで助けてハーレム要員にしてやるぜ!」


 俺は悲鳴が聞こえる方へ走り出した!



 (しばら)く走っていて、ある重大な問題が発生した。

 それは……


「ゲホッ……ゴホッ、ゼィ……ゼィ……ゼィ……腹痛い……」


 そもそも運動なんて学校の体育くらいしかしていない学生が、森の中をそんな早く走れるわけがなく。

 あっという間に息が切れた。

 チクショウ……ゲームとか小説だと主人公はもっと機敏に動いてたぞ!


「と、とにかく……行かないと……」


 声のする方へヘロヘロしながら歩いていると、向こうの方からデカい熊が女の子を追いかけているのが見えた。

 しかも、追いかけられている女の子の頭には三角状の物が付いている。


「あ、あれこそファンタジーの王道のケモ耳獣っ娘か! しかもあれは犬耳! 犬系獣っ娘キター!」


 それを見た瞬間、俺の中から疲れが吹き飛んだ。

 早速、俺は神様から貰った能力を発動させる。

 イメージするのはあの熊をブッ飛ばせる武器……最強のイメージをここに結ぶ!

 俺がやっていたゲームの中で、最強の剣士が使っていた黄金の剣を創造する!


「来い! 最強の剣!」


 金色(こんじき)の輝きが周囲を照らし、俺の手の中に光が集まる。

 前を見るとケモ耳獣っ娘と熊がもうすぐ近くまで来ていた。

 見てろよ、今からこの剣で叩き斬ってやる!

 しかし次の瞬間、俺の手の中に現れたのは半透明のつるっとした物体だった。


「ってなんだこれ!? ところてん?」


 剣を作ろうとした筈なのになんでところてんが!?

 つか、ところてんが止まらねぇ!


「ええい! こうなったら熊をところてんに沈めてやる!」


 イメージするのは最強のところてん!

 熊をも飲み込み沈めるところてんの海を!


「いっけー、俺のところてん!」


 その瞬間、手の中が強く輝き、大量のところてんがダムの放水の様に流れ出した!


「え? あ、ちょ!?」


 異変に気が付いた犬耳獣っ娘は、慌てて道の脇にあった岩の陰に隠れた。

 当然、彼女が隠れるまでを見ていた熊は岩の前で立ち止まり、ゆっくりと彼女に近づいていた。


 少女を襲おうとしていた熊に襲い掛かった物、意外それはところてん。

 森の中というシチュエーションで、幅1m程度の細道を覆い尽くし、熊を飲み込む勢いで大量のところてんが流れ込む。

 特に意味の無いところてんが熊を襲う……!」


 しまった!

 本当ならここで、『お前がナレーションしてんのかよっ!』ってツッコんで欲しかったが、ツッコミ役がいない!

 そしてもう一つ、ある重大な問題に気が付いた。


「と、ところてんが流れ出している……!?」


 元々、地面を踏み固めて作った様な道だから、穴の中ならいざ知らず、こんな平地ではところてんで埋めるにも圧倒的に量が足りなかった。


「どうする……どうするっ、早くしないとあの子が……!」


 そこで俺は気が付いた。

 今まで俺は想像力が足りなかったから、こんな物(・・・・)しか作れなかったのだ。

 つまり、想像力をフル活用すれば、想像通りの物が作り出せるはず……!


「そうと分れば、」


 勝負は一瞬……!

 ギリギリまで引き付けて奴が俺の目の前に来た瞬間、その時しかチャンスはねぇ!

 ところてん(まみ)れになって激昂している熊は、俺に向かって突進してくる。


 イメージしろ……奴を倒せるイメージを。

 今の俺に必要なのは常識に囚われない形……あの熊を圧倒するイメージ!

 俺の意識に呼応するように、光が今までにない以上に光り輝き辺りを照らした。

 そして俺の目の前に熊がやってきた瞬間、俺は目を見開いてイメージを具現化する……!


「今度こそ……いけぇぇぇ!」


 俺の叫びと共に目の前に現れたのは……半透明の壁だった。


「ところてん創造術・(ウォール)!!」


 それは巨大なところてんの塊。

 熊の3倍はあるところてんの塊が目の前に現れ、周囲の木々を巻き込みながら熊を飲み込んだ。

 飲み込まれた熊は必死にもがくが、ここでイメージを止めない。

 創造能力で崩れた部位を次から次へと補修して行く。


 そうして崩れては直し、崩れては直しを繰り返している内に、中にいる熊の動きが完全に止まる。

 ところてんに溺れて溺死したのだ。


「ふぅ……何とかなったぜ」


「あ、あの……助けて頂いて、どうもありがとうございました!」


 熊に追われていた女の子が俺にペコリと頭を下げた。

 そして露わになるケモ耳!

 位置的には人間の耳より少し上あたりに生えている。

 時より、風に吹かれてピクピクと耳が動くさまを見て、俺は異世界に来たのだと改めて感動した。


「い、いや、女の子が危なくなったら助けるのが男の役目だろ?」


 ゲームの主人公を意識して女の子に笑い掛けるが、元々あまり異性と交流が無い所為で上がってしまう。

 ち、チクショウ!

 何でラノベの主人公たちは、平気で女の子に話しかけられるんだよ!


「男……やはり貴方は男性なんですね!」


「あ、うん。俺は鬼龍院零夜、零夜って呼んでくれ」


「レイヤさん……わ、私はこの近くの村のハナって言います! レイヤさん、助けていただいたお礼がしたいので、私の村にぜひ来てください!」


 そういうとハナちゃんが興奮したように俺の手を握った。

 心なしか目が潤んで顔が赤い気がするが……まさかもうルートは入っちゃったか?

 ふ、主人公はつらいぜ。


「いいよ。実は俺、気が付いたらこの森に居て、それより前の事が思い出せないんだ」


 これぞ、ネット小説お約束の『とりあえず記憶喪失って言って置けば過去を探られないよね!』だ。

 何度も見たシチュエーションだから、まず怪しまれる事は無いだろう。


「そうなんですか……それは大変でしたね。(という事は居なくなってもばれないっと)」


「ん? 何か言ったか?」


「いえいえ! さあ、こっちですよ!」


 命が助かって未だに興奮しているのか、高校生ぐらいの肉体をグイグイ俺に押し付けて来るので、肘辺りがとても幸せである。

 しかも、彼女の腰辺りにある尻尾がパタパタと振られて、俺の尻をペチペチと叩いているのも心地よかった。



 (しばら)く歩いていると、1m程の木の柵と茅葺き屋根の家が見えてきた。

 恐らくあそこが彼女の村なのだろう。

 俺たちが近づくと何か作業していた女性がこちらに気付いた。


「あ、ハナお帰り。隣は……誰だ?」


「ただいま、ココ姉さん! この人は森の中でグリードグリズリーに襲われていた所を助けてくれた()()()よ」


「へぇ……それはよく無事だったね」


 ココさんは見た目大学生くらいで、野良仕事が多いのか肌は小麦色に焼けていて身が引き締まっているにも拘らず出ていると事は確り出ている。

 ついでに言うと、男らしい大雑把な性格なのかタンクトップに短パンと非常に目に毒な格好をしていて、狼系のケモ耳と相まって非常に野性的に見える。

 そんなココさんがこちらを見ながら目を細める。

 何故だろう……物凄く背筋がゾクッとした。


「こりゃ、お礼をしないといけないね。よぉし、今夜は宴だ! ハナはひとっ走りして村長さんの所まで行って来て!」


「はい! じゃあ、ココ姉さんはレイヤさんをお願いしますね」


 え?

 見ず知らずの奴に、いくら知り合いを助けたとはいえ、そこまでするの?

 軽く混乱している俺を横目にハナちゃんはするりと俺から離れ、代わりにゴム毬に挟まれるような感覚と共に力強く腕を引かれた。


「じゃあ、ここからはあたしがこの村を案内するよ! 何たって久々の()()()()だからね!」


「あ、ありがとうございます」


 気持ちのいい笑顔をこちらに向けながら、そのまま連行されるように引き摺られて行く。



 ココさんに案内され、村を見て回っていた時に小さな違和感があった。

 何故か村ですれ違う人がみんな10代後半から30代前半の女性ばかりで、男性は愚か老人や子供の姿もなかった。

 そして俺は直感的に察した。

 そうか、俺が世界を救う方法はこれしかないと!

 そう俺は確信して、心の中でニヤリと笑った。




「ハァ……ハァ……はれ? ここは?」


「ちゅ……そんな細かい事は気にしなくていいんですよ。レイヤさん」


 この声は……ハナちゃん?

 何でだろう、体が熱くて頭がボーっとする……

 その癖、咽返る様な甘ったるい匂いと何か気持ちい感覚だけは鋭くはっきり感じられる。


「確か……宴で……?」


 何故か俺以外女性だらけので、勧められるままに料理や飲み物を飲み食いしたまでは覚えてる。

 だが考えられたのはそこまでだった。

 体の一部に強烈な感覚が走り、思考が霧散する。


「そうだよレイヤ、今はただ本能のままに動けばいいのさ」


 熱でもあるのだろうか、昼間の印象とは打って変わってココさんがしおらしく、それでいて獲物を逃がさぬ肉食獣のような色のある目でこちらを見ている。

 体中に纏わりつく柔らかさと共に、俺の頭の中で何か糸のような物が切れる音がした。

 意識を手放す寸前、遠くの方で黄色い悲鳴と獣のような叫び声が聞こえた気がした……


最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。

続きは本日17時に投稿します。

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