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クスッと笑えるコメディ短編集  作者: 秋月心文


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7/7

最後までカエル

本作品は、最初から最後まで徹底的にウザいです。

ウザさに弱い方は、健康に配慮してお読みください。


言いましたよ


言いましたからね


 変な店に来てしまった。

 この店では、特殊なルールがある。


「とりあえず生カエル」

「鳥つくね1つカエル」


……という感じで、語尾に「カエル」をつける必要がある。

 どういうルールだよ。


 店員に聞いてみる。

「この店、なんで語尾にカエルをつけるんですか?」


「申し訳ありませんカエル。

 語尾にカエルを付けていただけませんと応対できない決まりになっているのでございますカエル」


 敬語なのか、ふざけているのか、サッパリわからない。


「この店、なんで語尾にカエルをつけるんですかカエル」

「そういう店だからカエル」

「理由になってないんですカエル」

「そこはあえて楽しんでいくのをおススメいたしますカエル」


 店員が真顔で言う。

 どうやら徹底しているらしい。


「じゃあ、生ビールをお願いします」


「申し訳ありませんカエル。

 語尾にカエルを付けていただけませんとご注文をお受けできない決まりになっているのでございますカエル」


 この店のテンプレートで返された。


「生ビール一つくださいカエル」

 店員が復唱する

「生ビール一つカエル」


「……」

「どうなさいましたカエル?」

「いや、なんでもないです」

「なんて言われましたカエル?」

 ひとりごとにも、こんなツッコミが入る。


「なんでもないですカエル!」


 とりあえず飲む。

 うん。

 普通にうまい。

 料理も注文してみる。


「枝豆ください」


「申し訳……略……ございますカエル」


 またしてもテンプレート発言だ。


「枝豆くださいカエル」

「枝豆一つカエル」


「焼き鳥くださいカエル」

「焼き鳥一本カエル」


「冷奴くださいカエル」

「冷奴一つカエル」


 やばい、語尾にカエルをつけるのが慣れてきた。


 しばらくすると、隣の客が店員を呼んだ。


「すみませんカエル。枝豆カエルくださいカエル」


「枝豆カエル一つカエル」


 枝豆カエル?


 いや、やっぱり変だ。


 あらためてメニューを見ると、カエルが優遇されていた。


 生ビール       5000円

 生ビールカエル     500円


 枝豆         3000円

 枝豆カエル       300円   


 という感じで、メニューがカエルの有無で値段が違いすぎる。

 どうやら、今までかなり高いものを注文していたらしい。


 俺はメニューを閉じた。


 なんだ、この店。


 料理は普通にうまい。

 店員も悪い人ではない。

 むしろ居心地はいい。


 ただ。


 語尾が全部カエル。

 それだけが気になる。


 更に困ることに、聞いているうちに、だんだんクセになってくる。


 気がつけば、もう深夜になっていた。


 お手洗いはあそこか……。


 お手洗いにはガラス板が設置されていた。

 よくわからないけど、たぶん鏡だろう。


 緑色の照明だ。珍しい。


 酔っているせいか、ボォ~ッと見ているのだが、

 あれ? 俺、こんなに緑色してたっけ?


 よく見たら、カエルじゃん!!

 目の前のガラス板にはカエルの姿が……。


 うわぁぁぁ……。


 声にならない悲鳴を出してしまう。


 手を洗う。手は普通だ。

 照明のせいか、手が緑色に見える。

 大丈夫なのか、俺。



 席に戻ると手を上げて、店員を呼んだ。


「おあいそをお願いカエル」


「承知しましたカエル」


 会計を済ませる。


 品名にカエルをつけ忘れただけで、ものすごい高い金額になっていた。

 財布の中がゴッソリなくなる。


 店員が頭を下げた。


「ありがとうございましたカエル」


 俺は無言で店を出た。

 もう、この店には二度と来ない。


 料理はうまかった。

 店員もいい人だった。

 居心地だって悪くなかった。


 ただ。

 何を言ってもカエル。

 何を聞いてもカエル。

 最後までカエル。


 もう限界だ。

 俺は店員を振り返った。


「また来てくださいカエル!」


「――」


 俺は叫んだ。


「帰るッ!!」

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 お読みいただき、心より感謝申し上げます!


 数ある作品の中から

 この物語を選んでいただき、

 本当にありがとうございます。


 少しでも楽しんでいただけましたら、

 ★や【ブックマーク】で応援していただけると、

 今後の創作活動の励みになります。

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