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最終話:神話となりて



 目が覚める。枕元にはちゃんと勇者様からもらったサインがある。


 それを確認した俺は、勇者様から最後に言われた言葉を思い出した。


「コン様は先ほど、『誰が貰っても同じことができた』と仰いましたが、それは違うと思います。確かに、“全肯定”があればとりあえず平和に過ごせはするでしょう。されど、ヤミヌスを平和に終わらせられたのは、間違いなくコン様だからだと思います。どうか、自分を誇ってください」


 この言葉すらも、“全肯定”だから言ってもらえた、と解釈することはできるだろう。でも、俺は素直に受け取ろうと思った。


 ……実を言えば、ずっと考えていたんだ。もし“剣聖”を得られていたらと。

 “全肯定”は自分で使っているという感覚が薄かったのもあったと思う。

 それでも、勇者様の言葉を聞いて、ようやく自分を“全肯定”できるようになった気がする。


 そうだ。“剣聖”ならヤミヌスを更生させることはできなかっただろう。それに、昨日は自分の意思で発動できた。


 今なら、俺の“スキル”は“全肯定”だと胸を張って言える。

 晴れやかな気分になった俺は、ベッドから起きて朝食を食べに向かった。



 これからしばらくは忙しくなるんだろうな。陛下はヤミヌスが消えたことを広めるだろうし、そうすれば俺がますます称えられることも予想できる。



 ──それでも構わない。今回は自分で選択したことだから、自信を持って賞賛を受けようじゃないか。そして、これからも自分の意思で“全肯定”を使っていこう。そうすれば、皆が傷つかなくてもよい世界を作れるかもしれない。


 窓ガラスに映った俺は、どこか憑き物が落ちたような顔をしていた。









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 ここは、学校の教室のようである。まだ小学校に入学したての子供たちは、真剣に読み聞かせを聞いている。


「コン様のお言葉を聞いたヤミヌスは、ようやく自分の間違いに気が付き、自分から消えることを選びましたとさ。おしまいおしまい」


「面白かった!! もう一回読んで!!」


「先生! コン様ってなんでこんなにカッコいいの?」


 子供の一人が質問を飛ばす。先生は少し考えるそぶりを見せ、答えた。


「それはね、コン様は良くないものをいっぱい消したすごいお方だからだよ」


 先生は続ける。


「先生も知らないんだけど、コン様が活躍する前は、“争い”っていうのがあったんだって。それで沢山の人が嫌な思いをしたんだよ。でも、コン様が“争い”はやめようって言ったおかげで、皆は“争い”をやめて平和に暮らしていくようになったんだ」


「ぼくも知ってるよ。昔は“悪口”っていうのもあったんだってね。悲しいことを言う人がいたんだけど、コン様がやめようといったおかげで皆誉め言葉しか口にしなくなったんだ」


「まだ小さいのによく知ってるね。もっと上の学年になったら『コン様学』ていう教科でも習うから楽しみにしててね。『誰かに話すときは、私に言うつもりで話しなさい』ってコン様がおっしゃったんだよ」



 では、“もっと上の学年”の教室をのぞいてみよう。丁度『コン様学』の時間だ。他の授業ではたまに居眠りをしてしまう生徒もいるが、『コン様学』のときは皆熱心に聞いている。


「今日は“宇宙同盟”の復習から行きます。ジャンさん、説明してください」


 ジャンと呼ばれた生徒が起立した。


「はい。“宇宙同盟”は“コン様歴”2年に結ばれた、地球とマスカッタ星の条約によって成立した同盟です。やがて、コン様の威光を知った他の星々も加わり、いまでは340の星が参加しています。コン様が念じたおかげで、今はどの星にも30分あれば行くことができます」


 かのジョン=レッドイーグルの子孫、ジャン=レッドイーグルが答えた。




 街の方へ行けば、そこかしこでコンを称える歌が聞こえる。

 街の中心、プリメント大聖堂では、一月後に開かれる“肯定祭”の準備をしていた。


 毎年、コンの誕生日に開かれるこの祭典は、天上の民たちも参加することで有名である。かつては天上の民は地上に来ることができなかったが、コンの尽力の甲斐あって自由な行き来ができるようになった。大層感謝した天上の民たちは、かつて呼ばれていた「神」の名を否定し、自ら天上の民と呼称するようになった。コンに助けられ続けた自分たちに「神」と呼ばれる資格はないと考えたからである。なおその後、「神」の称号が誰を指すことになったのかは言うまでもないだろう。




 ~完結~


 この十日間、読み続けていただきありがとうございました。完結を迎えることができて、とても嬉しいです。これも、ひとえに皆様に見ていただいたおかげです。

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