よちよち幼児編③
案の定、私は迷子になっていた。
「私を降ろしたレイシオが悪いんだ」
そう、呟いたが、返事は返ってこず、あたりはシーンとしている。レイシオのせいだ。レイシオにとっては、レイシオが責められるのはとても理不尽なことだとは思うがしょうがない。そうしていないと、三歳の私の心は怖くて今にも泣き出しそうだからだ。
すると、遠くで私を呼ぶ声が聞こえた。これはきっとレイシオだ。
(レイシオが私を見つけてくれた!)
そう思って、その声に応えようとしたとき、ふと一つの考えが頭の中をよぎった。
(これ、今捕まったら、怒られる上に今度から絶対降ろしてくれなくなるんじゃ…絶対強制抱っこの刑だよね!?)
声が近づいてきている。隠れないと、と感じ、草むらの影に身を隠し、中庭の奥の方へと進んでいった。子どもだから通れるような低木の間の小さな隙間を通っていくと、少し開けた場所に出た。そこには大きな噴水と、その噴水の傍に小さな男の子が座っていた。男の子はどこか一点を見つめていて、私には気づいていないようだ。よく目を凝らして見ると、この子の顔も凄く整っていた。
(この世界はイケメンしかいないの!?)
そんなわけがあるはずが、いや、あるのか…と考えていると、自分の目の前に影が落ちた。なんだと思って見上げてみると、そこには男の子が立っていた。
「ひゃ」
「あなたは、だれ?」
そう言って男の子は不思議そうに顔を傾げた。さっきは遠くだったので気づかなかったが、こうして近くで見ると幼い。この子は私と同い年ぐらいではないだろうか。
「ぼく、ルイ!あなたは?」
そう、男の子が無邪気に聞いてきた。この子、もの凄くかわいい、かわいすぎる。この子の笑顔で全てが浄化されそうな勢いだ。あまりの可愛さに気を飛ばしていると、男の子が少し距離を詰めてきた。
「ねぇ、おなまえは?」
「わたしは、シェルシア!」
しまった。あまりの可愛さに萌え死んで、大事なところを噛んでしまった。そう、反省していると
「シェル!ぼくのことはルイってよんで、よろしくね、シェル」
そう言ってニコニコ笑うルイ君を見て、私の本当の名前はセルシアだと訂正することはできなかった。




