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何でも屋の誓約  作者: 紫月 凛
一章〜何でも屋と元若頭様の世話係〜
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2

―――――


《異能》

それはその人間特有の能力。多くは後天的に覚醒するが、稀に先天的に持って生まれる者がいる。覚醒条件は生死の境を彷徨う程の強い感情を抱くこと。異能者の見た目は普通の人間とほぼ変わらない。見分け方は瞳の色。能力を使う時だけ紫色に変化する。異能者は普通の人間よりも身体が頑丈で身体能力が高く、感情で生死の境を彷徨い、生還しただけあって精神が異常な程強い。


―――――

 路地の奥にあるボロアパートの一室に入り、鍵を閉めずに眼鏡をとり、浴室に入る。浴室に入ると零華はすぐにシャワーからお湯を出す。最初は冷たい水が流れてくるが、気にせずに浴びる。排水口に流れていく水は真っ黒だ。零華は濡れた前髪をかき上げる。浴室の鏡には腰まで伸びた()()にアメジストのような()()の瞳の少女が映っていた。


「やっぱりこの色は目立つわね。」


 学校での無表情が嘘のように少女は人間が()()()()()()ような微笑みを浮かべていた。紫夜(しや)零華(れいか)という黒髪に黒色の瞳の少女は彼女の表での姿だ。本当の姿は銀髪に紫色の瞳の()()()()()()、セナだ。

 表で活動する時は基本、髪を黒色に染め、光の屈折を利用して瞳を黒色に見せる眼鏡を掛けている。


「紫色の瞳は()()()()()…ね。先に攻撃してきたのは()()()なのに。」


 セナは独り言を呟いてからシャワーを止め、脱衣所で仕事用の服を着た。黒色のワンピースにウエストポーチ、まだ乾いていない髪を適当に絞ってから簪でまとめる。

 裏の何でも屋、セナ。彼女は裏の仕事を基本は()()()請け負う。情報収集や人探し、殺しも。依頼主からの依頼と代金が釣り合っていれば手段を選ばずに行う。裏にはルールが存在しない。表にバレなければ何でもありなのだ。この国、日本で禁じられている個人的な復讐も裏では許される。

 この世界には表の社会と裏の社会が存在する。表の社会の人間は所属する国の法律と世界のルールに守られており、多くは裏の社会の存在を知らない。裏の社会の人間は表から弾き出された人間だ。存在するルールは実力主義のみ。弱肉強食。弱い者は淘汰される。表の社会のように分かりやすいルールなどいくつも存在しない。信用と実力が全ての世界。だから()()()も息ができる。

 異能者は表で差別され、排除される。存在がバレれば国に()()を管理される。衣食住から結婚まで全てを。異能者の人権など認められないのだ。人間は他とは違うものを恐れ、攻撃する。異能者は普通の人間には絶対使えない異能という特殊能力を持っている。人間達はそれを恐れたのだ。もし、自分達が襲われたら、と。人外(異能者)に太刀打ちできるわけない。だから管理すればいい、と。


(異能者も人間なのにね。本当にバカで哀れね。無知で弱い者は。)


 セナは内心で表の人間を罵倒しながらキッチンで料理をする。今日は彼女の助手達の入学式があるのだ。助手達は零華と同じ私立光明学園高等学校に入学する。そのための身分証などは裏では簡単に作れる。()()()()()()を専門に請け負う者もいればセナのように何処かへ依頼せずに自力で作る者もいる。助手達もセナに作り方を教わっているため、自力で作成可能だ。

 セナは助手達に入学祝いに手料理を食べたいと言われた。リクエストも聞いてある。強請られた料理がほぼ完成した頃、セナが今いるボロアパートの一室に近付いてくる二人の気配を察知した。


(帰ってくるの早いわね。)


「「ただいま帰りました。」」


セナの助手達が帰ってきた。

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