10
拠点にはユウリとルランがいた。二人共、変装などしておらず、仕事用の黒い服を着ているため、セナからの仕事は終わったのだと分かる。
「あら、早いわね。もう麻薬がどこから流れてきたものなのかのか分かったの?」
「申し訳ございません。地域は特定できましたが、国までは特定できませんでした。」
ユウリは落ち込んでいるように見える。セナからの仕事を完遂できなかったからだろう。
「上出来よ。」
「えっ…?」
ユウリはセナの言葉に驚いて顔を上げた。セナは曖昧にはぐらかしたり、質問と違うことを答えたりするが、自分に尽くす相手が悲しむようや嘘をつくような人間ではない。それをユウリとルランよく知っている。セナが二人に証明してくれた。世界の全てを憎んで、恨んでいた時に二人を救って味方だと証明してくれたのだ。ユウリはそんな相手に失望されることが、ガッカリさせてしまうのが怖いのだ。セナはそれを正確に見抜いた。だから、ユウリがこれ以上落ち込まないように言葉を選んだ。
「今回、ロライのバックについてるのはかなり厄介で面倒な奴らよ。そいつらと繋がりのある地域だけでも分かったのだから。私は貴方達に感謝はするけど、失望したり、無責任に捨てたりしないわ。」
セナは微笑みながらユウリの頭をワシャワシャと撫でる。ユウリは嬉しそうに破顔した。
「あっ!ユウリだけズルい!セナ様、私もハッキングとか変装の準備とかしました!」
ルランは朝食を作っていたらしく、エプロンを着け、手や手首に料理の皿をのせてセナ達の近くに来た。そして、料理をローテーブルの上に置いて目をキラキラと輝かせてセナを見上げる。
「はいはい。ルランもありがとうね。」
セナは苦笑しながらルランの頭も撫でた。ルランは嬉しそうに破顔する。ユウリとルランは双子なだけあって、笑い方がとてもにていた。
「セナ様、朝食できてますよ。」
「わざわざ作ってくれたの?携帯食があるからそんな必要ないのに…」
携帯食とは、セナが作ったもので、一口分食べれば一食分の栄養素やカロリーを摂取できるという優れモノだ。そこら辺にある雑草や甲虫、飲食店などで廃棄された野菜や果物の皮などから作られている。味はセナ曰く「美味しくはないけど食べれる味」だそうだ。
「ありますよ。セナ様は食事を最低限しか食べないではないですか。そのせいで手足もすごく細いんですよ?」
ユウリの言う通り、セナは身長は女性の平均身長より十センチ程高いが、手足がとても細く、肉付きがいいとはいえない。セナの中では腹が満たせて栄養が摂れれば問題ないのだが、助手二人はいつも心配している。
「セナ様はその携帯食すらまともに食べていませんよね?」
ルランの言葉にセナは大人しく箸を手に持った。ユウリとルランはセナが食事をするまで情報を教えてくれそうにないからだ。
(最悪、倉庫にいる男を尋問してロライの拠点と麻薬の取引先の地域を聞き出してもいいんだけど…面倒なのよね。)
「はぁ…いただきます。」
セナは手を合わせてから朝食を食べ始めた。ユウリとルランも朝食を食べ始める。セナは自分の分を半分程食べ終えると箸を置いた。
「もういいのですか?」
「ええ。これ以上食べるとお腹がいっぱいになっちゃうもの。満腹の時は眠くなるし、体の動きも鈍くなるでしょう?それに、私は一、二週間くらい何も食べなかった時もあるのよ?これくらい大丈夫よ。」
ルランの問いにセナは事実にほんの少しの嘘を混ぜた。ユウリとルランは知る必要のない彼女の過去。セナは自分の過去に少しでも関係することは他人に言わない。セナに限らず、異能者は皆そうする。異能の覚醒条件は強い感情で生死の境を彷徨うこと。わざわざその状況を思い出そうとする奇特な人間はいない。
「まぁ、セナ様が大人しく普通の食事をしただけでも快挙ですからね。ルラン、これ以上は今日はいいんじゃない?」
「そうだね。セナ様が逃走しなかっただけでも快挙だもんね。」
「貴方達二人は私をなんだと思ってるのよ?」
ユウリとルランはセナが大人しく食事をしたことに満足した。
「僕「私達の恩人です!」」
セナの問いにユウリとルランは晴れやかな笑顔で即答した。
セナが食べなかった分はユウリとルランが食べるか餌付けに使うかしています。何の餌付けかはご想像にお任せします。
食事はしっかり摂りましょう(私が言えたことではない)。
いつか番外編を書こうと思っています。見たいシチュエーションがあったら感想と共に送ってくださるととても嬉しいです。




