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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-098 統率型ゾンビは鈴虫と似ている


「やはりジャック使えるな。ゾンビ相手ならジャックで十分に思える」


「工作船の作業員を増やしたらしい。ドローンで容易に設置できるから兵士を危険に晒す事もない」


 ウイル小父さん達がモニターに映る惨状を見ながら、他人事のように話をしてるんだよなぁ。

 もっとも、俺もニックの後ろからガムを噛みながらだから、他人を非難する資格はないけどね。


「次はランタンだな。時間は……20分後程後になる」


「この近くなんだろう? 一応兵士達に伝えておこう。驚くかもしれんからな」


 レディさんが客車の方に歩いていく。

 さて、今回はあの装置の出番は無かったかな……。

 そんな事を考えながらモニターのスイッチを消そうとしているウイル小父さんに視線を移した時だった。


「小父さん、ちょっと待ってください!! これって、あれじゃないですか!」


「何だと!」


 俺が慌ててモニターの一部を指差した場所に、ウイル小父さんが慌てて覗き込んできた。


「集まってるな……。レディ、ナナを連れて急いで来てくれ!」


 トランシーバーを取り出してレディさんに連絡を入れた小父さんが、今度は荷台に飛び乗ってエンリケさんにトロッコに来るよう伝えている。


 その間にも、ゾンビがどんどん集まって大きな集団を作り出した。

 間違いなく前回と同じだな。

 急いで集音装置を組み上げて、変調器を首から下げた。ヘッドホンはもっと近づいてから出良いだろう。とりあえず首に掛けておく。


「集まったな。やって来るぞ。現在はこの位置だが、今度は南にだけ広がっているようだ」


「北は動き難いという事か? 知恵がそこまで働くのか……」


「南のゾンビの動きに注意しながら、本体に接近するぞ。サミーが言う通りなら、今後の戦が楽になるからな。それを確かめるぐらいの時間はあるだろう」


 皆が俺に顔を向けて頷いているんだよなぁ。推測が間違っていないことを祈りたくなってきた。


「200mまで近づいたなら、エアバースト弾を撃ちながら後退する。1kmほど下がったところで迎撃戦をするぞ」


 今度は、ウイル小父さんに顔を向けて頷いている。

 出来るだけのことはしてみよう。場合によってはこれでは分からないという結果になるだろうけど、それも貴重な情報に違いない。


「サミーの用意が出来次第前進する。何時でも後退できるように速度は出さんぞ」


「その方がありがたいです。ナナには可能な限り上空からの監視をお願いしたいところです」


「元よりそのつもりだ。ドローンのバッテリーを交換して待機させているそうだ。トロッコが止まり次第、高度500mで上空監視をして貰う」


「先ずは、統率型ゾンビの声が他のゾンビの声と同じかどうかを確かめます。それが出来れば、次の装置が使えますから」


「了解だ……。準備が出来たようだな。レディ、全員乗車してるな?」


「全員の搭乗を確認している。何時出発しても大丈夫だ」


「それなら、出発だ。……エディ、ゆっくり進んでくれ!」


 ウイル小父さんがハンヴィーの屋根をドンドンと叩いて指示を出す。

 俺達を乗せたトロッコが東に向かって動き出した。


 上空をドローンが通過していく。ゾンビの集合地点に向かっているようだ。距離はおよそ1.5kmほどだろう。ゾンビの動きが良くなったとしても俺達の動きを越えるようなことは無いからなぁ。ゾンビの声を聞こえるまでには少し時間が掛かるだろう。


「ゾンビの集団との距離、およそ800m……。かなり集まっているようだ。前回よりも多いかもしれん」


「南の集団も、距離は同じぐらいなのか?」


「ほとんど変わらんな。線路がこの辺りから右に曲がっているから、現在の距離は同じでも右手が本隊より前に出ることになりそうだ」


「そのままモニターで監視していてくれ。距離200まで近づいたなら後退を始めたいからな」


 後ろからレディさんの「了解!」という声が聞こえてきた。

 すでに500m近くに達しただろう。ヘッドホンを耳に当てるとゾンビの声を聴き始めた。


 相変わらずコオロギに似た音色に聞こえるんだよなぁ。集団化しているから、賑やかに聞こえて来る。

 その中に、違う虫の音が聞こえる。

 はっきりと聞き取れるように共振周波数を変化させ、更に帯域も変えてみた……。

 今度はかなりはっきりと聞こえるな。通常のゾンビよりも500Hzほど高音で帯域が1.6KHzと言うことになる。

 だけど、この虫の音は鈴虫だよなぁ。

 声だけ聴いていると、心が休まる感じだ。


「ウイル小父さん! ビンゴです!!」


「見つけることができるんだな? ……エディ、後退だ。1kmほど西に向かってくれ!」


 ゆっくりとトロッコが止まり、今度は西に向かって進んでいく。

 急いで荷台から降りて装置をトロッコの邪魔にならない位置に置くと、今度は音を見る装置を組み立てる。

 これはヘルメットに色々と物が付いてる代物だ。ヘルメット自体はヘッドホンを付けたまま被れるような海軍御用達のヘルメットなんだけどヘルメットの左右に集音装置が付いている。

 2つの集音装置から得られた音声の強弱をヘルメットのバイザーのような透明なスクリーンにモノトーンの画像で表示する仕組みらしい。

 さすがに解析装置などを組み込んだコントローラーをヘルメットには取り付けられなかったようでバッグのように肩から下げることになる。

 先ずは俺が試してみよう。


「装置の準備が出来たら、再びゾンビに近づいてください。統率型ゾンビの位置が分かるようであれば、この装置をエンリケさんに装着して貰います。距離は分かりませんが、方向は分かると思うんですが……」


「そこまで期待はしないが、将来はそんな装置を持ちたいところだな。エンリケ! 聞いていたか?」


「了解だ。それだけでも、無駄玉を減らせるだろう」


 少しはマシな戦が出来るという事かな?

 コントローラ―を肩にかけて、ターゲットとする周波数と帯域をテンキーで入力する。

 さすがに1kmも先だと,ヘッドディスプレイには何も映らないな。


 俺が準備できたと告げると、ウイル小父さんが前進を指示する。

 ドローンはまだ電源があるみたいだな。ヒバリのようにゾンビの群れの上空で滞空しているようだ。


 ゾンビに集団との距離が近付くにつれ、ヘッドディスプレイが薄いピンクになってきた。

 通常のゾンビと統率型ゾンビの周波数は近接しているから、通常ゾンビの声を拾っているようだな。

 まだヘッドホンにはコオロギの鳴き声だけだからね。


 ゾンビの集団がはっきりと見えた時、明らかにヘッドホンに鈴虫の鳴き声が小さく聞こえてきた。

 ヘッドディスプレイに、赤の濃い箇所が表示される。結構範囲が広いと思っていると、どんどん赤が一か所に集中して濃くなっていく。

 モニターを見ているウイル小父さんに報告しようとした時だった。

 時計回りに体を回転冴えている途中で、再び赤が集束した。

 これは……。


「小父さん、結果が分かりました。後退させてください!」


「分かったか!! エディ、後退だ。さっきと同じように1kmほど西だぞ」


 ウイル小父さんの言葉に、荷台に設けられた窓から誰かが手を振っている。乗ってるのはエディとライルお爺さんだよなぁ。

 あの手はライルお爺さんってことか?


 後退して停止したトロッコに主だった連中が集まってきた。

 簡単に概要を伝えたんだけど、統率型ゾンビが2体いるという俺の言葉に皆が驚いているんだよなぁ。


「前回は1体だったはずじゃ。今回は2体とはのう」


「だがそれをちゃんと見付けられたんだから大したものだ。それで次はどうするんだ?」


 ウイル小父さんの問いに、エンリケさんを指差して答えることにした。


「エンリケさんに、この装置を付けて貰います。すでに設定を終えてますから、これを被った状態で銃座に着いてください。今は透明ですけど、ゾンビの群れに近づくにつれこのヘッドディスプレイに色が着きます。最初はピンクでしたが、少しずつ赤が濃くなり1点に集中します。それが統率型ゾンビのいる場所です。……そうですねぇ、あれだけ近付けば腕を伸ばした先の50セント玉ぐらいに収束しますよ」


「結構収束するものだな。それなら3発ずつ撃ち込んで様子も見られそうだ。倒したなら、赤は消えるということになるのだろう?」


「そうなります。倒せたら、もう1体の方もお願いしますよ」


「了解だ! これで倒せたなら勲章ものだぞ」


「申請は私がしてやろう。次はもっと効率よく見つける装置に繋がるに違いない」


「上手く行けば線路のゾンビ排除もしないで済むな。エンリケ、頼んだぞ!」


 その前に、コーヒーだ! なんて言葉が出るぐらいだから、皆も嬉しいんだろうな。

 少しトロッコを西に移動したところで、コーヒーを飲みながら一服を楽しむ。

 七海さんが、「どんな声でした?」と聞いて来たので、正直に鈴虫と答えたら驚いていたんだよなぁ。

 集音装置を再生して、皆にも聞かせてあげたんだけどコオロギの中の鈴虫の音色を聞き分けることができたのは俺と七海さんだけだった。


「この音の中に統率型ゾンビの声があるっていうのか?」


「前に虫の音色だと言いましたよね。コオロギと言う虫の音なんです。その虫の群れに1匹の鈴虫が紛れ込んでいるんですよ。後で虫の鳴き声のサンプルを探してみます。結構違いがあるんですけどねぇ……」


「キャシー婆さんが、日本人は虫の声を言葉として聞いていると言っていたが、ワシ等にはそんな能力は無いからのう。山小屋で聞かせて貰ったゾンビの声も、今回の声もまるで同じじゃな。ノイズ以外の何物でもない」


「そうですか? でもコオロギの鳴き声の物真似が出来る人は結構いるんですよ。こんな感じですね……」


リィーリィーと口笛を吹くように真似をしてみた。

 俺の物真似があまりにも上手だったのかな? 日本の友人達には散々似てないと言われ続けたんだけどなぁ……。


「全くこの装置の音と同じように聞こえるぞ。俺達とは体の仕組みがそもそも違っているなんてことは無いんだろうな?」


 エディの言葉に、皆が頷いているんだよなぁ。

 俺は元日本人で、ホモサピエンスに違いないと思っているんだけどなぁ。


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