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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-099 赤の起点に向かってトリガーを引け


 コーヒーを飲み終えたところで、トロッコが東に進んでいく。

 直ぐに線路の遠くから、ゾンビの群れが進んでくるのを見ることができた。

 七海さんが監視用ドローンを飛ばし、高度を上げて前方の群れと右手のゾンビの群れを同一視野に収める。

 

「高度500mが丁度良さそうだな。前方のゾンビ集団がおよそ3千体、右手のゾンビの集団も数は同じぐらいだろう」


「前方のゾンビとの距離、400……350……」


 ハンヴィーの銃座でMk19グレネードランチャーを噛めるエンリケさんに、ニックがレーザー距離計でゾンビとの距離を教えている。

 ウイル小父さんとレディさんは俺と一緒にモニター画面を見つめていた。


 ニックが距離250mを告げる声と同時に、グレネードランチャーが1秒間隔で3発のエアバースト弾を放つ。

 俺達が使うグレネード弾より少し長い弾だから、それだけ装薬が入ってるんだろう。最大飛距離は1kmに達するらしいからね。


 数秒の間を置いて、再びエアバースト弾が発射される。今度も3発だな……。


 モニターにエアバースト弾の炸裂が映し出されると、それまでのゾンビの動きに変化が現れた。


「やったか!」


「サミー! 赤が消えたぞ!! 倒したってことだよな!!」


 ウイルさんとエンリケさんの大声が同時に聞こえて来る。

 ゾンビがそれまで西に向かって統一行動をしていたのだが、今はバラバラに動いている。群れが膨らんで見えるのは、その場から四方に移動を始めたのだろう。


「エンリケさん! 命中したようです。次は右手の群れですよ!!」


「了解だ! これなら無駄弾をあまり撃たんで済むぞ!!」


 その場で銃座を回転させ右手のゾンビの群れに狙いを定めている。

 短い間隔で3発……。それで群れが止まった。


「上手く行けば3発でし止められるのか……。前回はかなり消耗したのだが」


「あれは峡谷に誘い込んだから何とかなったようなものだ。群れのどこに統率型が潜んでいるか分からないからなぁ……。せっかくだから、エアバースト弾を線路上にゾンビに撃ち込んでやれ。予備を2箱持って来てるんだからな」


「そうするか……。エディ、トロッコはこのままで良いぞ!」


 グレネードランチャーの横にあり銃弾箱には30発のエアバースト弾を入れておいたらしい。9発使ったんだから残り21発で集まったゾンビを始末するつもりのようだ。


 トロッコの方向に歩いて来るゾンビもいるんだけど、マリアンさん達が100m近くに来るまでに倒してしまうんだよなぁ。

 ショットガンの出番は今回無しのようだ。


 エアバースト弾が切れたところで、ウイル小父さんがグランビーへの帰投を指示する。

 すでに17時近いからね。この辺りで野宿するのはまだ早いという事だろう。


 デンバーの西の斜面にある大曲で夕食を取る。

 レーションだからお湯を作れば直ぐに食べられる。ポットを3つも用意したそうだから、食後のコーヒーも直ぐに飲めそうだ。

 

「予想以上の成果が出たな。山小屋に中隊長を呼んでサミーに簡単な報告をお願いしたいのだが?」


「グランビーに到着するのは22時頃だろう。出来るなら明日の昼食後が良いな。ゆっくり休ませてやりたい」


「それぐらいの分別はあるつもりだ。了解した」


 帰ってから簡単な説明をすることになるのかと思っていたんだけど、助かった感じだな。上手く説明できるように、今日やったことをまとめておこう。オリーさんにも状況報告を送った方が良いかもしれない。ゾンビの情報はいくらでも欲しいに違いない。


 グランビーの駅にハンヴィーを停めて、山小屋に帰った時には22時を過ぎていた。

 ワインやバーボンを飲みながら、今日の1日を振り返る。


「まだ信じられん……。最初が6発で、次が3発だぞ。赤が一番濃い場所を狙って撃っただけなんだがな」


「それだけサミーを信用してたんだろうな。サミー、エンリケが見ていた画像は録画されているんだろう? 後で皆に見せてやってくれ。同じようにMk19を使えば俺達にも倒せるかもしれん」


「しっかり録画してありますから明日の午後にお見せできると思います。それと、報告書が出来たならオリーさんに送りたいんですが」


「それは私がやろう。サミーの報告書を待っていると何時になるか分からんからな。骨子は明日の午後の説明で何とかなるが、補足が必要な時にはお願いするぞ」


 助かった! 笑みを浮かべてレディさんに頭を下げる。


「あの雑音が、サミーには2種類の虫が出す音に聞こえるなんて……」


「私も聞き分けられましたよ。サミーがあれを聞きながら月を眺めつつワインを飲みたいなんて言ってましたけど、私も同じ思いです」


 そんな事を七海さんが言うもんだから、皆が驚いてるんだよなぁ。


「そんなに良い音なのかしら? どう聞いても雑音なんだけど……」


「『ワビサビ』と言う言葉があるんです。それが少しでも理解できるなら……」


「あの砂と石で作った庭のようなものか? お前の親父殿に進められて、嫁さんを連れて行ったんだが、あれのどこが素晴らしいのかさっぱり分からなかったぞ」


 枯山水を見たことがあるんだ。まぁ、あれを見て良いと思う人は何処かおかしいんじゃないかと思った時期もあったんだけどね……。


「あの小さな庭で大海に浮かぶ島々を表現しているんです。あれを見つめながら座禅を組めば、脳裏に島に打ち寄せる波まで見えて来るらしいですよ」


「空想力を高める訓練と言う事かしら? 面白い試みね」


 クリスはまた違った解釈をしたようだな。だが、あながち間違っていないかもしれない。

 空想するのはたぶん人間だけに違いない。妄想ではなく空想することができるなら、思考実験を行うことだって出来るはずだ。


「まぁ、これでデンバーを東に進む上での最大の課題に対処することができるようになったことも確かだ。サミーから何かあるか?」


「もっと容易に統率型を狩る方法を考えてみました。現状はゾンビが群れを作らなければ対処できないんですが、かなり危険性が高い事も確かです。

 ヘルメットの左右に付けた集音器で統率型ゾンビの位置が分かるぐらいですから……」


 席を立つと、白板を焚火近くに運んで来た。

 簡単なスケッチを描いて、上空から統率型ゾンビの位置を確認する方法を説明する。

 

「統率型ゾンビの声が他のゾンビと異なることが分かりましたから、それを検知する方法はもっと簡単に作れるはずです。上空200mほどをドローンで飛行させながら統率型ゾンビを探して、迫撃砲の砲弾を投下します。地上1.5mで炸裂させることができるんですから、これで群れを作る前に倒せると思うんですが……」


「サミー、一言言わせてくれ。デンバーの飛行場が使えるようになったなら、間違いなく上層部はサミーを引き抜くぞ」


「技官ってことじゃな? さて、どこが一番高くサミーを買ってくれるかじゃな」


 笑い声混じりにライルお爺さんが俺を向いて呟くから、皆も笑いを堪えてるんだよなぁ。


「確かにそうなるだろうな。ペンタゴンに部屋を持てる可能性すらありそうだ」


「出来れば現場が一番に思えるんですけど……」


「国家と個人のどちらが大切か。海兵隊の士官や兵士、誰もがそれを知っているのだが……」


「こいつらは戦時徴集みたいなものだからなぁ。いや戦時よりも酷いかもしれん。爺さんは戦時徴集だったそうだが、それでも3週間程訓練を受けたそうだ。

 サミー、そういうことだ。現状は個人よりも国家、いや生き残った国民の為にもその能力を生かしてほしい」


 軍内部の移動と言うのはあるようだから、ここは小さく頷いておこう。

 帰化して3年になるらしいけど、あくまで名目だからなぁ。帰る国は無くなったみたいだから、これからはアメリカ国民として頑張るしかなさそうだ。


「軍人は命じられるまま……。と言う事ですか。現状で俺の希望が叶ってますから、協力したいと思います」


「そう、悲観することは無い。とはいえ、我等に近い場所を希望するぐらいは出来るだろう。現場で状況を見据えながら兵器の改良点を見付けられる技官は殆どいないんだ。戦闘経験のない技官が殆どだからなぁ」


「簡単に死ぬような連中だからなぁ。訓練も適当にこなしてきたはずだ。俺だって部下にそんな連中は持ちたくない。技官の戦場視察の護衛を頼まれたことがあったんだが……。100m先に迫撃砲弾が炸裂した途端、逃げ出したからなぁ。わき目も振らずに一目散だ。あれには全員が目を丸くしたものだ」


 まるでアニメだな。その後どうなったのか気になるところだ。


「その点、サミーは申し分ない。偵察部隊に抜擢しても直ぐに活躍できるだろうからな」


「遠距離射撃を教えんといかんなぁ。近距離狙撃を誇るようでは、救護所が賑わいかねん」


 ウイル小父さんの言葉に、皆が大笑いをするんだけど……。意味不明なんだよなぁ。近距離狙撃しかできないのを笑うんなら理解も出来るけど、救護所が賑わう理由が分からん。


「とはいえ、サミーも少しは考えておくんだな。サミーを欲しがる連中が多ければ最終的に本人の希望と言うことにもなりかねん」


「了解しました。とはいえ、かなり先にも思えます。先ずはデンバーを何とかしないことには……」


「だいぶ横道にそれてしまったが、この白板のイラストは消さずにおいて欲しい。明日の中隊長にも説明して欲しいところだ。統率型ゾンビのよるゾンビの群れが出来る前に倒せるならグランドジャンクションの攻略を考える上でも助かるだろう」


 レディさんの話しぶりからすると、これを作るつもりかな?

 統率型ゾンビを倒せたなら、ゾンビの津波化が防げるかもしれないな。


「ところで、皆さんは先ほどのゾンビの声を長時間聞いていることができますか? ノイズと言ってましたから耳障りなのかもしれませんが……」


「無理だな。ラジオのノイズを聞いているようなものだ。それが何か問題になるのか?」


「隠れているゾンビを見付けることができるのではないかと……。俺達は目や耳で周囲を確認してますけど、どちらかと言えば目での確認が主になると思います。対して、ゾンビの場合は音で確認していますから、周囲の状況を知るには常時音を立てていないといけないはずです。夜のコウモリと同じ事です。となれば、ゾンビがいるなら、その音が聞こえる訳ですから、屋内にゾンビがいるかどうかを外から確認できるかもしれません」


「あの透明なバイザーに映し出すことも出来そうだが?」


「可能でしょう。ですが音を聞くだけならかなり装置を軽く作れます」


「全く……。アイデアマンそのものだな。何組か大急ぎで作らせよう。仕様の相談は後で良い。先ずは打診してみるつもりだ。とは言っても、あのノイズを長時間聴くことができる兵士がどれだけいるか……」


「小型化できるなら、30分交替で代われば良いだろう。それぐらいは我慢できそうだ」


 良い声なんだけどねぇ……。

 やはりワビサビを理解しては貰えそうにないようだ。


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― 新着の感想 ―
ノイズにしか聞こえないようなジャンクどもには、虫の音を出す楽器を作ってやって、幼少から音楽教育してやらないといかんなこれは
[気になる点] 逆にある程度まで群れを作らせてから一撃撃破とか、ゆくゆくは擬似ゾンビ音声を……妄想が拡がります。 統率型のゾンビは通常個体が成長した結果なのか、元から違うのか気になりました。オリーさ…
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