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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-090 大曲里でゾンビを迎え撃つ


 そろそろ日付が変わろうとした時だった。

 ウイル小父さんが、客車から出てきた七海さんにドローンでの偵察を指示する。

 夜間でも大丈夫なのかと、七海さんに顔を向けると小さく頷いてくれたから大丈夫と言うことなんだろう。

 再び客車の屋根にアンテナを付けて、コントローラーの間にブースターを接続する。

 ハンヴィーの荷台の後ろに取り付けたモニターにケーブルを接続し終えると、直ぐにドローンが飛び立った。

 ドローン下部の赤色LEDが点滅しているから、流れ星のように東に飛んでいくドローンをしばらく見ることができた。


 ウイル小父さん達がモニター画像を食い入るように眺めている。

 画像の右上に高度が示されているが、その数字は300mだ。

 全体が緑のモノトーンなのは赤外線画像と言うことになるのかな。


「いた! 前回よりも近付いているな」


「集団の大きさも変わっていないようだ。やはり我等を追って来ているということになるのだろう」


「それもあるが、速度が増してないか? この辺りはどの辺になるんだ?」


 七海さんのところに行って、ドローンの位置を確認する。ゾンビの戦闘集団の位置を素早く書き取って、ウイル小父さんに手渡すと、地図の上にその位置に赤い丸を付けてくれた。


「数km先ってことか! 俺達が歩くより少し遅いぐらいだから、2時前にはあのライト付近にまで到達するぞ!」


「迎撃準備をしなければならんな。銃弾はたっぷりとある。ここは大曲の上だから、ゾンビが大曲に向かうか、この急斜面を登り始めたらトロッコを後退させよう。エディはハンヴィーの運転を頼むぞ。俺の指示があったら、直ぐに後退させるんだ。支援班には申し訳ないが、数発放ったなら急いで撤収準備をしてほしい。M4カービンは持って来たんだろう?」


「全員が持ってますよ。銃弾もマガジン6個を常備してます」


 支援班の分隊長が大きな声で答えている。

 M224は口径60mmの迫撃砲だ。地上1.5mで炸裂するエアバースト弾のようなの砲弾が弾薬箱に8発入っているらしい。15kgを越える弾薬箱を戦場で担いで移動するんだから、兵隊は体力が命なんだとつくづく考えてしまう。

 3基のM224で合計24発が放たれることになる。1基当たり2箱用意して来たらしいから再度攻撃を加えられることになる。

 

 ジェリ缶2つに水を運んで来てくれたから、七海さん達が少し濃い目のコーヒーを俺達に入れてくれた。さすがに俺には苦すぎるからお湯で薄めて貰いスティックシュガーを2つ入れて飲むことにした。

 マリアンさん達が呆れた表情で俺を眺めているんだよなぁ。


「サミーの甘いもの好きは聞いているけど、それで太らないんだから私達の敵ってことになるんでしょうね」


「ちゃんと運動してますよ。余分なカロリーは運動で消費するのが一番です」


「その運動が問題よねぇ……。あれって運動なの? 私にはサーカス団に入るための練習にしか見えないんだけど」


 床上30cmほどに張ったロープを渡っているところを見たのかな?

 バランス感覚の良い訓練になるんだよね。体幹を保つためにもバランスは重要だからなぁ。たまにクリスが真似をして床に落ちてるんだけど、諦めずにやっているからその内に綱渡りが上手になるんじゃないか。


「自分の動きにあった能力を高めようと努力している感じですね。やってみたらどうです。姿勢をきちんと保つ訓練にもなりますよ」


「やったのよ。それで床にしりもちをついてたわ」


 ジュリーさんが、マリアンさんの黒歴史を披露してくれた。顔を赤くしてジュリーさんの肩をガクガクと揺らしているけど、本人は全く気にした様子はない。

 真似する人がいるかもしれないと思って低い位地にセットしていたことが幸いだったかな。もっと高くしていたら頭を打っていたかもしれない。


「でも、その腕であのダンベルで訓練してるんでしょう? もっと筋肉がついても良さそうに思えるけど……。サミーの体重はどれぐらい?」


「65kgですよ。俺がジュリーさんに聞いたら、頬が赤くなってるんでしょうけど」


「女性に体重は厳禁だからね。それにしても軽いのねぇ。エディは75kgを越えてるよ」


 エディは良い体格をしているからなぁ。ニックだってそれなりなんだけど、俺はどうしても見劣りしてしまう。少しは体脂肪を増やした方が良いんだろうか?

 何時の間にか他の人達も混じって、世間話をしていると荷台の上が騒がししいのに気が付いた。他の連中も急に話を止めて、ウイル小父さん達に顔を向けている。


「やって来たんですか?」


「ああ、来たぞ。昔と違って今は海兵隊も良い装備を持っているな。暗視スコープにかなりはっきりと映っている。距離は1kmほどだ。全員戦闘準備に入れ。レディは支援部隊の士気を頼む。エディはハンヴィーの暖機を始めてくれ。投光器は現状のままで良いだろう。最初はグレネード弾だ。手持ちが無くなり次第銃弾に切り替える。以上だ!」


 エディがハンヴィーの運転席に走っていく。

 運転席が左側だから、テリーさんは後部座席の左で応戦するに違いない。

 俺とニックは1両目のトロッコでHK69にグレネード弾を装填して、その時を待つ。

 七海さん達は客車の中に入ったようだ。邪魔しないようにとの事だろうけど、窓があるから、そこから援護射撃をしてくれるに違いない。

 マリアンさん達は客車の上に乗っているし、一緒の兵士は客車の前後にあるデッキに立っている。

 支援部隊の迫撃砲がトロッコのすぐ横にあるんだよなぁ。

 トロッコの周りは丸太の柵だから、ちょっと心配になって来る。


 胸ポケットから耳栓を取りだし装着しておく。

 ニックの肩を叩いて自分の耳を見せると、小さく頷きながら急いでで耳栓を装着している。

 気付いていなかったようだ。

 後で装着するより最初から装着していた方が、耳への負担も小さくなるに違いない。


 準備が終わったところで、ウイル小父さんに顔を向ける。

 小父さんはジッと東を睨んでいたけど、さっき手にしていた暗視スコープではなく、小型の双眼鏡を覗いていた。

 マリアンさん達が設置したライトで十分にゾンビが視認できる距離まで来ているということになる。

 ウイル小父さんがレディさんに腕を伸ばして指先を向ける。

 レディさんが頷くのを見て、今度は腕を上に上げた。その腕が振り下ろされるとハンヴィーのMk19が火を噴く。同時に3門のM224が砲弾を放ち始めた。

 2分も経たずに4門の砲火が止まると、支援部隊がM224をトロッコに急いで積み込んだ。レディさんが走って来てトロッコに全員が乗ったことをウイル小父さんに報告すると、支援部隊が乗り込んだトロッコに向かいながらM14に装着されたM203グレネードランチャーに初弾を装填している。


 いつの間にか、ライトが消えていた。

 ゾンビの群れに隠されたか、それとも破壊されたかだろう。確か500mと言ってたからなぁ。トロッコから数個のライトの明かりが線路上に伸びているんだけど、まだゾンビの姿は見えないな。


「来たぞ! 凄い数だな」


「俺には良く見えないんだが……」


「サミーなら見えると思ってたけどなぁ。線路の先を良く見てみな。何かが動いてるのが分かるぞ」


 言われる通りに線路の奥を見ていると、確かに動いているな。

 それに気付くと、線路の両側にも沢山の動くものがあるのが分かってきた。

 

「最大射程で線路際に撃ち込めば十分に思えるんだけど?」


「それで良いんじゃないか? あれだけ群れているんだからね。早めに5発放ったところで、銃撃に移ろう」


 ニックに確認してみると、俺に顔を向けて頷きながら答えてくれた。

 2人で放つグレネード弾は10発だ。

 どれほど効果があるかは疑問だけど、撃てばそれだけゾンビを倒せることは間違いないからね。


「400……、350……」


 レディさんが大きな声でゾンビの集団との距離を告げている。小さな短眼鏡を覗いているんだけど、あれってレーザー距離計なのかな?

 

「300……、まだ撃つなよ! ……250! 今だ、攻撃開始!!」


 20人ほどが一斉にグレネード弾を放つ。

 相変わらず、ちょっと間の抜けた発射音だ。

 1秒ほどの間を置いて、東で炸裂音が聞こえてきた。バァン! という花火みたいな音だけど、周囲に小さな散弾を撒き散らしているはずだ。

 いくつか炸裂焼夷弾が混じっていたらしく、炎がゾンビ達の群れをはっきりと見せてくれた。

 いったいどれぐらいの数がいるんだろう。ずっと奥まで黒々と蠢くゾンビの姿を見ることができた。


「手が止まっているぞ! まだグレネード弾はあるんだからな」


「御免。ちょっと驚いてたんだ。かなりの数だぞ」


「だから、これを撃ってるんだろう? 皆が5発ずつなら100発近い数だ。少しは減るに違いない」


 100発か……。1発で5体を倒せれば良いんだが……。

 そんな思いを浮かべながら、残りのグレネード弾を放っていく。

 これで最後と狙いを付けていると、いきなりトロッコが動き出した。

 慌てて適当に東に向かって発射したけど、どこに撃ってもゾンビの群れの中に落ちてくれるに違いない。


 HK69をトロッコの端に置くと、今度はM4カービンを手に取る。

 スコープ付きだが、光学照準の倍率が低いし、対物レンズの口径は20mm程あるからね。真っ暗では狙いを付けられないけど、ハンヴィーの前照灯と屋根に付けた投光器、それに客車の屋根にも投光器がある。

 数十m先ならゾンビの姿がはっきりと視認できるし、スコープを除けばもう少し先まで狙いを付けられるだろう。


「今度は銃撃だ。上手く当ててくれよ」


「トロッコが揺れますから、無駄玉が多くなりそうです。それでも頭を狙えば、外れても別のゾンビの頭部に当たってくれるかもしれません」


「それも考えられるな。連射ではなく単発での射撃だ。頑張ってゾンビの数を減らしてくれ」


 レディさんに励まされて、ニックと共にトロッコの側面に積んだ丸太に銃を押し付けるようにして射撃姿勢を取る。

 ハンヴィーの荷台と銃座から銃声が聞こえてきた。

 ゾンビとの距離がさらに短くなったという事かな?

 トロッコが大曲から離れ始めた。周囲は南西に向かって斜度がある荒地だ。のろのろと走るトロッコはゾンビとの距離を一定に保とうと考えているのだろう。

 ゾンビの顔がはっきりと見えたところで、照準器のレティクルをゾンビの頭部に合わせる。トロッコが動いているから照準が上手く合わないんだよなぁ……。

 ゾンビの頭部とレティクルが合った一瞬をとらえてトリガーを引く。

 照準器の中でゾンビの頭が爆ぜたのは後頭部まで銃弾が貫通したためだろう。

 先ずは1体……、幸先は良さそうだ。

 


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[気になる点] グレネード弾で線路が壊れていないかちょっと心配
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