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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-086 デンバー空港までのルートが決まった


 氷上の釣小屋は人気が高く多くの利用希望者が出たことで、ついにスケジュール表まで作られる始末だ。

 来年の冬にはもう1つ作ろうとライルお爺さん達が唐揚げを齧りながら話をしている。

 こんな世の中になってしまったからね。ちょっとした楽しみが心を癒してくれるのだろう。

 バリーさんやエンリケさんは、子供達を連れて釣りに行くみたいだからなぁ。

 そんなバリーさん達を見て、ウイル小父さんが家族サービスは大事だと俺達に教えてくれた。

 ニックやエディ達も父親に連れられて狩りを小さい頃からやっていたらしいけど、俺はお爺さんと一緒に釣りをした思い出しかないんだよなぁ。

 親父とお袋はどうなったんだろう? やはりゾンビ化してしまったんだろうか?

 研究所のシェルターの維持ができるのはせいぜい半年程度だろう。その前にシェルターを出ることになれば、ゾンビの群れに飲み込まれてしまうのは確実だ。

 長期滞在を意図したシェルターであれば、何らかの通信手段は持っているだろうけどまったく連絡が無い。

 生存者が5%にも満たないんだからなぁ。あまり希望を持たずに、自分達が生き残るために努力しなければいけないのだろう。


「中隊の方も無理をせずに、着実な前進を図るという事か……。グランドジャンクションまでは1日掛かるからなぁ。やはり中継点を作ることは賛成だ」


「グレンウッド・スプリングスの町を使うという事らしい。場合によっては中隊ごと引っ越すことになるやもしれん。その時にはグランビーに1個小隊規模の増員をするそうだ」


「デンバー攻略に使わせて貰えると?」


 ウイル小父さんの言葉に、レディさんが頷く。

 現在派遣されている兵士はレディさんを含めて6人だからね。さすがに少ないと考えたんだろうな。

 

「増員はありがたいが、兵種については少し考えさせて貰いたい。飛行場までの線路の被害程度が分からんからな。場合によっては線路の補修を行わねばなるまい」


「線路施設の経験のある工兵と言うことだな。了解だ。水上機での低空撮影は4月中旬に行えるだろう」


レディさんの話では、冬季の資材輸送は順調に行われているらしい。

 急造した跳躍爆弾は『ジャック』と名前が付けられたらしい。何故に? と聞いてみたら

『jack-in-the-box』という言葉を基にしたということだ。ニックにどんな意味と聞いてみたらびっくり箱をそう呼ぶらしい。

 確かに似たようなところがあるなぁと、ネーミングセンスに感心してしまった。

 そう言えば、目覚まし時計付きの爆弾には『フッド』、焼夷弾仕様の方は『ランタン』と名を付けたらしい。どこから採ってきたと聞きたいところだけどね。


「サンフランシスコで実証試験を行ったそうだ。結果は現在の爆弾の3倍近い数のゾンビを倒せるとのことだったぞ。工作船が日産10個の量産を始めたらしい。統合作戦本部にも結果を送ったそうだ。東の防衛戦にかなり寄与出来るに違いない」


「実証済と言うことか。それはありがたい話だ。それで、ここにはどれほどの数を?」


「雪解け前には200個を送るとの事だ。中隊長は、その内の半数100個をウイル殿に渡すと言っていたぞ」


 デンバー攻略の方が少し進んでいるからかな?

 まだ前に作った爆弾も残っているそうだから、両者を上手く使えば線路近くのゾンビをかなり減らせるんじゃないかな。


「その後も送って来るんだろう?」


「もちろんだ。サンフランシスコは軍の基地がある島からゾンビを掃討したところで一段落という事らしい。島への海底トンネル、それに橋は爆破したらしいから来年中には島からゾンビを完全に駆逐できると豪語していたよ」


 その後は対岸に火砲を並べて、ゾンビの群れを必要に応じて刈り取るらしい。ゾンビは泳げないということだけど、中身であるメデューサがクラゲを基に作ってあるのにおかしな話だ。

 陸上生物、それも人間に特化して体を乗っ取るということだから、水棲生物としての機能を失っているという事なんだろうな。

「ジャックを効率的に使えても、倒せるゾンビの数は1万体程度、デンバーの総人口を考えるとゾンビの数は20万体を遥かに超えるはずだ」


「1割にも満たんが、贅沢も言えんだろう。とはいえ銃弾の補給はこれからどんどん乏しくなるだろうからなぁ」


「その為にも備蓄基地までの道を作らねばならん。銃弾消費を考えると、かなり厳しい作戦を敢行せねばなるまい」


 砂漠の無人地帯に備蓄基地を作っているからなぁ。線路があるようだけど、果たして利用できるのかも問題だ。

 最悪はトラックでの輸送になるんだろうけど、道路を使うということはそれだけゾンビとの遭遇率も高くなる。

 レディさんが危惧するわけだ。


「我等が動けない間に、サンフランシスコよりF16でソルトレイクを爆撃するということだが、線路は攻撃するなと言っている。だが、無誘導爆弾のMark81だからなぁ。線路補修の経験を持つ工兵部隊を新たに設けることになりそうだ」


 爆弾でどれほどのゾンビを倒せるかと言うと甚だ心もとないところがある。

 だが、やらないよりはやった方がましだということで爆撃を行っているに違いない。

 こっちに来てほしいところだけど戦闘機の整備は面倒だし、何といっても燃料が足りない。

 精々グランビーの飛行場から小型双発機を使って、手作りの爆弾を投下するぐらいになるんだろうな。

 飛行機の整備兵達が改造しているようだけど、上手く使えると良いんだけどね。


「グランドジャンクションの飛行場が使えれば、ハンヴィーよりも馬力のあるトロッコ牽引車を輸送できると言っていた。トロッコではなく客車や貨車を引くことができるぞ」


 ウイル小父さんが詳しい話を聞きだしてくれたけど、どうやら装輪式装甲車を改造しているらしい。

 装甲車だけど速度は時速100km程出せるらしいし、航続距離は500kmに達するとの事だから、客車や貨車を3両ぐらい曳くことは容易とのことだった。

 8輪駆動のエンジンは350馬力と言うことだからなぁ。これ以上の牽引車となれば本物のディーゼル機関車になりそうだ。

 それまでは現在使っているハンヴィーに頑張って貰おう。

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 長い冬が終わり、広場も所々土が顔を出してきた。

 さすがに4月に入ったからね。俺達もそろそろ動かねばなるまい。

 4月10日を過ぎたところで、グランビーの飛行場から双発飛行機がデンバーに向けて飛び立ったのは、線路とポイントの航空写真を撮るためのようだ。3日後に沢山の航空写真が届いたから、リビングの床を使って写真を張り合わせて地図にする作業が始まった。


「線路近くに落ちた爆弾もあるようじゃが、これなら問題は無かろう」


「デンバー駅近くはまだ張り合わせていないから分からんぞ。あっちは核の爆心地近くだからなぁ。線路が無事でも瓦礫に覆われているかもしれん」


「その時は、その時じゃな。デンバー駅近くにいくつものポイントがあるんじゃ。場合によっては線路を組み替えるまでじゃよ」


 ライルお爺さんが簡単に言っているけど、線路を新しく繋ぐようなものじゃないか?

 俺達に出来るかと考えてしまうんだよなぁ。


「良し、これはこの辺りで良いだろう。次の写真を張り合わせるぞ!」


 2日掛かりで写真を張り合わせて、3枚の地図が出来上がった。

 ポイントの様子も分かるんだから、かなり精密な地図と言うことになるし、沿線周囲の状況もこれで分かるからね。


 その晩になって、いよいよダンバー空港までのルート図を皆で確認する。

 

「この大きな三角を利用するってことか!」


「爆心地より5km以上北だし、砂利会社の大きな敷地内だ。砂山や砂利山はあるが住宅地もビルも無い。場合によってはポイント固定の作業があるだろうが、ゾンビの脅威は格段に小さくなるはずだ」


「後は……。何か所かポイントがあるが、飛行場まで線路は伸びている」


「これで行こう。さすがにデンバー駅に行くのは危険が多すぎる」


 ウイル小父さんの言葉に皆が頷いているから、これでルートは決まったな。

 後は線路周辺のゾンビを間引きしていけば良い。


「それで攻略の拠点をどこにするかだが……。ここで良いんじゃないか?」


 ウイル小父さんが写真を張り合わせた地図の一角を指差した。

 北西にウエルトン貯水池がある。ポツンと数棟の建屋があるけど、3階建てのようにも見える。屋上は平らなのも良い感じだ。


「確か倉庫だったと思う。周囲に住宅もビルも無いなら都合が良さそうだ」


「宿泊と補給が出来るなら十分だろう。ここを拠点化する前に、ウエルトン貯水池周囲の住宅街からある程度ゾンビを駆逐しておく必要があるだろうが、それはフッドとランタンを使えば良いだろう。出来れば支援部隊に迫撃砲で焼夷弾を打ち込んで欲しいところだな」


「初回はフッドとランタン、それに迫撃砲でデンバー入口北にある住宅街を破壊する。先が長いからなぁ。ゆっくりと前進することにしよう」


 拠点が囲まれることを防ぐという事かな?

 それならウエルトン貯水池の東にある住宅地を双発機で攻撃して欲しいところだな。

 86thパークウエイの北側なら線路を誤爆することもないだろう。

 ウイル小父さんに提案したら頷いてくれたから、後でレディさんにお願いしてくれそうだな。


「4月で拠点の脅威を低下させ、5月に資材を移動する。本格的な攻略は6月と言うことで良いだろう。周囲の住宅を破壊しながら、この3角形の東に移動できるようにすることを今年の目標にしたい」


「十分じゃないか。だが、この三角地帯周辺はかなり住宅が密集しているなぁ」


 エンリケさんが白板に貼った写真の地図を見て呟いた。

 それは俺も気にしていたんだよなぁ。進めば進むほど住宅街が続いていくんだからね。

 ゾンビの群れが押し寄せてくるのが容易に予想できる。


「ジャックを上手く使おう。住宅の奥はフッドとランタンになりそうだな。それと、ライフルの下にM203を取り付けているのは中隊から派遣された連中と俺とエンリケだけだからなぁ。HK69を10丁頼んでおいたぞ」


 HK69はドイツ製のグレネードランチャーらしい。最大射程が300mと言うことだから、色々と使えるんじゃないかな。

 

「去年と違って、ハンヴィーにもMk19グレネードランチャーを搭載している。かなりの強武装になったし、ジャックも使えそうだ」


 確かに強武装ではある。だが、津波のように押し寄せるゾンビの前でそれがどれだけ役立つのか……。

 その場でゾンビを相手にすることは無いだろう。後退しながらゾンビを狩ることになるんだろうなぁ。


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