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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
806/806

H-806 準備品は前例に倣って


 拠点を移動しながら地下施設を攻撃すると聞いて、エルザさんは目を丸くしオットーさんは笑みを深めている。

 シグさんはそれこそ海兵隊の戦いだと感じ言っているんだよなぁ。

 俺としては、それだけ作戦が雑になってしまうと心配なのだが……。


「容易に移動できるドローンのコントロールシステムを別途作ることになりそうですね。サミー君達もドローンを使うのでしょうから、それも合わせて考えておきます。ですがコントロールシステムには電力が必要ですよ。私が製作するドローンは燃料電池を用いることになりますが、弧損のドローンであればバッテリーですから、充電装置を含めて3KWHを超える発電機が必要です。1台と言う事にはならんでしょうから、発電機2台と安定化電源を加えてパッケージ化して置いた方が運搬も容易でしょう。それも私の方で対応しましょう」


「よろしくお願いします。どこに拠点を置くかということですが……」


 モニターに偵察衛星画像を映し出す。

 画像の解像度が良いからかなり拡大できるから、屋上の様子も結構良く分かるんだよね。


「フリーダム作戦の部隊は現在何処まで南進しているんでしょう?」


 俺の問いに、エルザさんがノートパソコンを開いて衛星画像を広げた。

 レーザーポインターを使ってモニターに輝点を合わせた場所は、ニューヨーク市の北250kmほどにあるオールバニイ市、それと北西450kmほどにあるボストン市だった。


「一カ月後にはオールバニイ市を開放できるとのことでした。ボストンはさすがに難航しております。またロングアイランド島は島中央にあるロングアイランド・マッカーサー空港を現在攻略中です……」


 ニューヨークの北と東から攻撃するようだな。それ以外にもスタティン島を手に入れているから南から圧力もかけられる。軍艦をアッパー湾とロングアイランド湾に浮かべれば海上からの攻撃も可能だし、迫撃砲を台船に乗せてハドソン川を遡上させて攻撃することも可能だ。飛行場はロングアイランド・マッカーサー空港を手に入れれば攻撃目標まで100kmにも満たない。

 だけど砲爆撃を繰り返してもゾンビを殲滅させることは 出来ないからなぁ。

 推定でも数百万体を超える数だ。陸上戦力の前進を指示した時でも200万体を下回るとは思えないんだよなぁ。


「さすがに統合作戦本部もニューヨーク市全てを手に入れようとは考えていないでしょう。オールバニイ市から南進するのはハドソン川の東を手に入れようとしているように思えます。ニューヨーク市の中心街であるマンハッタン島を手に入れることでニューヨーク市の攻略終了を宣言すると思いますよ。その後はニューヨーク市を5大湖沿いに西に向えば良いわけですからね。フリーダムの作戦終了を宣言するには十分に思えます」


「ニューヨークを全て手に入れるわけではないという事か?」


 シグさんが驚いた口調で問い掛けてきた。


「ある意味プロパガンダ的な要素が高い作戦です。とはいっても、フリーダム作戦の遂行でアメリカ北東部の6つの州を開放もしくはそれに近い状態に出来るんですから、大成功と言えるでしょう。ニューヨークが一段落したならフリーダムに参加した部隊は大きく組織を変えることになるでしょうね。都市部を叩く陸上部隊と入植者を防衛する騎兵隊が沢山出来るかもしれません」


「我等は陸上艦隊に組み込まれるという事だったな。ウイル艦隊とマリアン艦隊に半年毎移動ということだから、今回はたっぷりと休暇を貰ったのだが……」


 シグさんがいかにも残念そうに言っているんだけど、顔の笑みがだんだん増して行くんだよなぁ。楽しみでしょうがないということなのだろう。


「話を戻します。……と言うことで、俺達の攻撃目標はハドソン川の北に重点を置きたい。とはいえニューヨークに地上部隊が進行したならハドソン川に架かる橋を渡るゾンビの数は半端な数ではないでしょう。あらかじめ手を打てばそれだけ数を減らせます。そこでハドソン川の西に1か所。これを最初の拠点とします。次にマンハッタン島に1か所、3つ目はブルックリン地区に設けたい。3つ目にゾンビが押し寄せて来たなら、湾内の航空母艦もしくはリバティ島に退避しましょう。俺達の作戦期間は第3拠点を放棄するまで、もしくは作戦開始30日とします」


「移動方法はエルザ少佐に任せるぞ。拠点は高さ10階以上のビルの屋上にファストロープで降下することが可能な場所で、上階が事務室であることが望ましい。アパートは上階のゾンビを追い出すのに苦労しそうだ」


「了解です。場所の選定と移動手段それと必要な資材について再度打ち合わせを希望します」


「なら、明日統合作戦本部を訪ねる。サミーの同席は無理だろうが、後で確認させれば十分だろう」


 シグさんとエルザさんで最終調整ということかな? そう言えば……。


「生物学研究所から、研究員が2人同行します。ニューヨークに生息するゾンビを最初に調査した時に同行してくれた人物ですから、この作戦に同行しても問題は無いでしょう。降下はウインチを使うことになるでしょうね」


「拠点となるビルにヘリポートがあれば何の問題も無いのだが……」


「使用するヘリはブラックホークになるのでしょうが、地上走行ドローンは爆弾を搭載しますからかなりの重量になります。前回はシースタリオンやチヌークで運んで貰いました」


「ブラックホークは分隊移動用ですから、4機は必要でしょうね。シースタリオンは?」


「1機で十分だろうが、予備機も欲しいところだね」


 エルザさんの問いに、オットーさんが即答してくれた。


「細々した資材は前回の調査報告書にリスト化されているはずですから、それを参考にしてください。武装ですが、兵士の半数にMk14シリーズを持たせたいですね」


「戦士対策か?」


「そうです。さすがに自爆型がいるとは思えませんが前回も狙撃されかけましたからね。戦士の進化は予想が付きません。バレットも数丁用意しておいた方が良いでしょう」


 俺も言葉に、シグさんも頷いている。

 やはりバレットは頼りになるし、エディも狙撃手として腕を上げているからなぁ。


「とはいえ、サミーの武装はあまり期待しないでくれ。一応50口径のライフルを渡してはいるが、持参するライフルは44マグナムのマーリンだろうからな」


「サイドアームもリボルバーかい?」


 オットーさんが笑みを浮かべて冗談のように呟いたけど、その通りなんだよね。

 俺が小さく頷いたから驚いているようだ。やはり冗談だったみたいだな。


「射撃の腕が今一つだからなぁ。何を持たせても遠距離射撃は期待出来ん。至近距離ならそれで十分だろう」


 シグさんの言葉に、苦笑いを浮かべながら頭をかく。

 その通りだからねぇ。だけど指揮官が前線に立ってライフルを撃つようでは、かなり拙い状況だ。そのようなことが起こらないようにするのが指揮官の役目でもあるのだが……。


「とりあえずこんなところだろう。後は任せてくれ」


副官が纏めていた製作仕様のメモを横目で眺めていたオットーさんが俺達に告げた。再度連絡すると言って慌ただしくオットーさんが部屋を出て行ったのは、直ぐに設計を始めるからだろうな。

 残った俺達は、前回の調査報告書をモニターに映しだした。

 スタティン島奪回作戦時に陽動を掛けた時の報告書のようだな。

 報告書の末尾にしっかりとしよう機材のリストが記載されていた。レディさんは真面目な性格だからなぁ。俺には真似出来そうにないな。


「このリストに迫撃砲弾がありますが、武器のリストに迫撃砲はありませんね。それに爆弾がバケツ2杯とはどういう事でしょうか?」


 俺達の戦闘を見たことが無ければ、そうなるよなぁ。

 シグさんが説明してくれたけど、爆弾をバケツの数で数えるのは止めた方が良いのかもしれない。でも布バケツに入れて運ぶからねぇ。俺達ならそれでおおよその数が分かるんだよなぁ……。


 エルザさんがリストを見ながら、シグさんに色々と質問をしている。

 用途が分からない資材と言うのが結構あるようだ。

 玩具の潜望鏡やデモ隊鎮圧用の盾、携帯用溶接機等は確かに何のために使うのか考えてしまうだろう。


「サミーの士官教育はかなり適当だったこともあるのだろう。状況を見る目が我等とは少し異なるようだ。おかげでその対処法もかなり変わった物になる。だが結果的には私でも納得できることが多かったぞ」


「それでこのような品が出てくるのですね。軍の資材を使おうと考えるより一般品が脳裏に浮かぶということですか」


 どんな変わった品が軍にあるか分からないからなぁ。それなら過去に見掛けた品物を状況に合わせて使う方が素早く調達できそうだ。


「ところで射撃の成績は良いのかな? さすがにサミー並みでは困ってしまうが」


「M4コマンドーを使うつもりです。射撃の成績は上位をキープしています」


 うんうんとシグさんが感心したような表情で頷いている。

 シグさんの説明では、M4カービンよりもバレルの短いライフルらしい。と言うことは5.56mm弾を使うライフルだな。

 

「バレルが短いとそれだけ命中率が悪くなる。最大射程は350mだろうが、実際の銃撃は100m以内だろうから問題はあるまい、できればM203を付けたいところだ」

 

 兵士達が付けてくるだろうから、それ以外にHK69を幾つか持っていけば十分だろうし、グレネード弾を使うより爆弾や手榴弾の方が何かと便利だ。無理に付けることはないだろう。


「グレネードランチャーはそれだけあれば十分だろう。地上攻撃より周辺のビルに潜む戦士型ゾンビを倒すために使うぐらいだからな。それよりはバケツに入れた爆弾の方が有効だ。鉄パイプに火薬を詰めた促成爆弾だが、威力は手榴弾よりも高いし、ゾンビが投げ返す事も無い」


「了解です。沢山頼んでおきましょう。他には火炎瓶もあるようですが?」


「ビルの周囲に群がるゾンビ相手なら、長く燃える火炎瓶の方がゾンビの動きを制限できる。さすがにビルの内部には使えないが、拠点からの退却時間を稼ぐのには都合が良い」


 エルザさんの問いに、シグさんがどのように使うのかを説明してくれる。

 単に用意して貰うだけでも良いのだが、その使い道をあらかじめ教えておけばエルザさんも、用意する本数をリストの数字よりどの程度加味するかを考えてくれるに違いない。


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