表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
77/713

H-077 半人前だけど、巣立ちの準備はして貰えそうだ


 バリーさん達の引っ越しが全て終わったのは、俺達の引っ越しが済んで3日目の事だった。

 子供達も一緒だから2段ベッドを残すことになったから、ちょっと窮屈な部屋になったらしいけど、キャンピングトレーラーよりは大きくなったと喜んでいるようだ。

 子供達が大きくなるまでには広場の片隅にログハウスを作って子供達で暮らせるようにするとのことだ。

 子供達ばかりで心配になってしまうんだけど、食事とシャワーを山小屋で済ませるなら、火を焚くのは薪ストーブだけになるから心配ないといっていたんだよなぁ。

 子育ては、国によって違いがあるんだろうな。この国では自主性を重んじるようだ。


「親子が一緒の部屋に寝るのは珍しいことだからね。俺達だって赤ん坊のころから子供部屋だったんだぞ」


「俺は小学生になってからだったな。それまでは母さん達と同じ部屋で寝てたんだ」


「日本人は過保護と聞いたことがあるぞ。それにしてもジュニアスクールまで一緒の部屋とはねぇ……」


 感心してるというか呆れているだよなぁ。だけどそれが日本では一般的だと思うんだけどね。

 世間話をしているだけでも、ニック達には色々と教えて貰えるから助かるな。


「それで、明日からテリーさん達が加わってくれるんだね?」


「1日遅れたけど、まぁ仕方のない話だよなぁ。荷物の半分はトレーラーに残してきたとテリーさんが言ってたよ」


「家族単位でトレーラーを曳いてきたからなぁ。どんな暮らしになるか分からないから、いろいろ積み込んできたんだろうな」


 俺達はそれほど持ってこなかったけど、それは山小屋に事前準備をしていたからだろう。

 冬に備えた衣服とちょっとした日用品ぐらいだからね。

 学校関連の品物は全て置いて来てしまったけど、ハイスクールが再開されるとも思えない。俺達6人ともハイスクール中退と言うことになるんだろうな。


「ところで、俺達の最終学歴はハイスクール中退ってことになるんだよな?」


「残念ながらその通りだ。事故の前なら碌な就職口があるとも思えないけど、今のこの国は人口不足も良いところだからなぁ。体が丈夫なら引く手あまたと言うことになるんじゃないか?」


「やはり体力が必要か……。サミーじゃないけど、自主トレはしないとな。ダンベルを此処に置いといてくれないか?」


「5kgを2つで良いよね。さすがに10Kgはきついぞ」


「サミー、そんなダンベルを使ってるのか?」


 エディが驚いているけど、筋肉が付かないからなぁ。頑張って少し重いダンベルを使ってるんだが、長く続けるなら5kgで十分だろう。


「10kgダンベルを使って、その体だからなぁ……。もっと肉を食べるんだぞ!」


 エディの勧めに、苦笑いを浮かべながら頷いた。

 こればっかりは人種の違いということになるんだろう。だけど体重計についている体脂肪率計では10パーセント以下を保っている。

 見掛けと違って、立派な筋肉質だとオリーさんも言ってくれたからね。


「その上に、あの変な縄跳びをするんだろう? 真似をしたけど、どうしてできるか理解できないんだよなぁ。だけどボクサーは縄跳びが重要だと言ってたな。フットワークの練習には最適らしい」


「だけど、サミーのように縄跳びしながら反復横跳びなんてしないと思うよ。サミーの身の軽さは、あんな練習の成果なんだろうけどね」


 雪の閉じ込められた生活なんだけど、上手い具合にトンネルの駐車場があるからね。

 ウイル小父さんやバリーさん達もたまに顔を合わせるから、それなりに体力の維持を考えているのだろう。

 昼食後には、レディさんが子供達相手に体操をしているほどだからなぁ。

 あまり姿を見せないのは、俺の横で一服しているエディとニックなんだよね。


「駐車場内の車を移動して結構大きく場所を開けてくれたし、コンクリートの床に板を貼ってくれたから裸足で訓練できるのが良くなったね。最初は寒いけど、直ぐに体が火照って来るんだ」


「マーシャルアーツも教えてくれるかな?」


「レディさんが子供達に教えてたぞ。エディ達が頼めば喜んで教えてくれると思うよ」


 うんうんと2人が嬉しそうに頷いているけど、結構レディさんは強いんじゃないかな?

 アザだらけになってサウナに入って来る2人が脳裏に浮かんでくるんだよねぇ……。


「さて、給水を行うか。そしたら石炭をスコップで2杯も入れればしばらくは放っておけそうだ」


 タバコを備え付けの灰皿に入れて、俺達の役目をこなす。

 この蒸気機関があるおかげで文明生活ができるし、暖房も出来るんだからなぁ。

 廃れた原因は排煙にあるらしいけど、この状況下でなら誰も文句は言わないだろう。

                 ・

                 ・

                 ・

 ニックに蒸気機関のお守りを任せて、俺とエディはリビングにやって来た。

 ウイル小父さん達が焚火の周りに集まり、小母さん達は薪ストーブのベンチでおしゃべりしながら編み物をしている。

 七海さん達は……、南西の一角に絨毯を敷いて子供達に昔話をしているようだ。

 

「エディ達か。こっちに座れ。ニックは蒸気機関の監視だな」


「そうです。今年はテリーさん達も参加してくれますから、かなり楽になりますよ。それで何の相談をしてたんですか?」


「デンバー攻略だ。じっくりと考えねばならん。前のような集団が現れたなら、上手くトロッコがバックできなければ簡単に飲み込まれかねんからな」


 コーヒーポットを俺達に回してくれながら、ウイル小父さんが教えてくれた。

 シェラカップを取り出して適当に注いでエディにポットを回す。バッグからスティックシュガーを取り出して、カップに入れるとカップ良く混ざるようにカップを揺らした。しばらくすれば少し甘めのコーヒーが飲めるだろう。


「機関車の接続は必要でしょうね。アイドリング状態にしておけば安心できます」


「それは俺達にも考え付いたことなんだが……。やはり中心部に近づくとゾンビが多きなることは確かだ。グランビイとデンバーの距離はそれほど無いから、小型機での爆撃も可能ではあるんだが、例の爆弾を使ってもあの通りだからなぁ。あまり効果は期待できん」


 爆弾1個で数十体にも満たないからなぁ。

 個別にゾンビを狙撃した方が遥かに効果があるんだが、銃弾の数だって限りがあるんだよねぇ。


「呼びかけ方式が一番効果が高いんだが、さすがにデンバーでそれを行うのは問題だ。たちまち数千体が集まりそうだからなぁ」


「銃撃を加えれば、更に集まって来る。だが、確実であることも確かだ」


 となると、その2つを組み合わせることではどうだろう?

 あらかじめ拠点となる建物の周囲に爆弾をセットして、タイマーではなく遠隔で爆発させれば集まって来るゾンビを抑制できるんじゃないかな?

 だけど、その場合に問題となるのは何処を拠点にするかだ。

 デンバー中心部まで線路は続いているんだけど、まだ住宅街までしか行きついていない。

 アメリカの住宅は平屋建てが多いからなぁ。

 拠点は出来れば3階建てほどの高さが欲しいところだ。


「グランドジャンクション攻略にはヘリコプターを使う予定ですけど、デンバーで使わせて貰う事も出来るんじゃないでしょうか?」


「拠点までの移動と撤退をヘリコプターで行うのか? 中隊本部と調整できそうだな。手榴弾をたっぷり運んでいくか」


「ゾンビは通りを伝ってやって来るんですから、途中に爆弾を仕掛けても良さそうです。出来れば遠隔で爆発できるのが良いですね。拠点から通りに先に向かって50mおきにいくつか仕掛ければゾンビの来襲の数を抑制することも可能かと……」


「なるほど、タイマーではなく遠隔で起爆させるのか。1個ではなく複数と言うのが良いな。ついでにあの目覚まし時計を持っていけば、脱出時にゾンビを他方向に誘導すらできそうだ」


「その方向で、計画書を作ってみるか。上手く纏めんとヘリコプターの借用が出来ないだろうからな」


 話の成り行きを聞いていたんだろうな。レディさんが俺にいつの間にか視線を向けていた。


「やはり中隊本部に欲しい存在だな。とはいえウイル殿が手放さんか……」


「サミーの事か? そうだな。デンバーの飛行場攻略の目途が着いたなら本人の意思を尊重したいと思っている。それまでは俺達の仲間だ。まだまだ海兵隊兵士に混じっての働きは出来んだろうし、彼の両親から面倒を見るように頼まれてもいる」


 ウイルさんから見ればまだまだ半人前と言うことなんだろう。

 だけど、子供は何時か巣立つものだ。そのタイミングはダンバーの飛行場と言うことになるなら、俺のやる気も上がる。


「書類は私の方で整えるつもりだ。ウイル殿のサインもお願いしたいのだが?」


「上手く作ってくれよ。ナナの方も一緒に頼む」


 今度は笑みを浮かべて頷いている。どんな書類なのかと考えてしまうけど、たぶん国籍の変更ということなんだろうな。

 今後の事を考えると、必ず必要になるだろう。上手く申請が通ることを祈るしかなさそうだ。


「オリーについても、動きがあるようだ。大統領直轄の研究施設への招きたいと話が出ているぞ」


「そんな研究施設があるなら協力したいと思っていますけど、どこにあるんですか?」


 オリーさんの素朴な問いに、レディさんが話してくれたことによるとデルマーバ半島にあるらしい。ワシントンの東の大きな半島だ。

 陸軍が何とか半島へのゾンビの侵入を阻止しているらしい。その為に橋を爆破したり、北部に東西の長い塀を作ったようだ。

 何とか自立生活が出来ているらしいけど、食料生産の為にだいぶ開墾を行っているようだ。


「生物学者の数が数人もいないということだ。あの論文を書く能力があるなら是非とも、と言ってたそうだぞ」


「でも、どうやっていくんですか?」


「当然飛行機だ。サンフランシスコから空軍のC-21Aを使う。3800kmの後続距離があるからな」


 それなら便利に使えそうだけど、生憎と乗員と積載能力があまりないそうだ。乗員が数名とはねぇ。荷物も1tちょっとらしいから本当に連絡用なんだろう。


「オリーの返事次第で、状況を調えるつもりだ」


「それなら、研究施設に向かいます。向こうの方がアメリカの為にもなるでしょう」


「賢明な判断だ。その旨伝えるが、移動準備に時間が掛かるだろう。準備だけはしておいて欲しい」


 オリーさんが頷いているから、俺達の元気なお姉さんはいなくなってしまうんだな。

 七海さん達もさぞかし残念に思うだろうけど、ゾンビ対策を円滑に行う為には、やはりその正体を確かめねばなるまい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
同じ部屋で寝てた憶えはないな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ