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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-737 スナイパーユニットを使おう


 今日は西のショッピングモールに砲撃を加える。

 何といっても野球グランドが4面程作れるほどの大きさだからなぁ。台船に搭載した榴弾砲の射程範囲ではあるんだが、かなり遠距離であることは間違いない。でも3発放てば1発ぐらいはどこかには当たりそうだ。

 一応狙いは南西部分なんだけどね。 

 さてどうなるのかと、準備を整えてコーヒーカップを手にしながらモニターを眺めていると、シグさんのカウントダウンに合わせて最初の砲弾が放たれた。

 窓を開けているから砲撃音がヘッドホンを通しても大きく聞こえる。ジュリーさん達は両手で耳を覆っていたけど、あれが正解かもしれないな。シグさんは両耳タイプのハンドセットを使っていたけど、砲撃が終わると同時にハンドセットを外して耳をゴシゴシやっていたからなぁ。


 今度は十数秒後にモニターに炸裂炎が広がった。

 上空500m程の高さから撮影しているから、ショッピングモールの建物全体が見えていた。その大きな建物の3か所にしっかりと着弾している。


「少し外れたな。弾着が北東にずれている」


「次は修正した砲撃ですから、当たるでしょう。建物内は大騒ぎですよ。まだ建物から出てくるゾンビはいませんが、次の砲撃前には出てきそうです」


「それなら、ドローンは待機で良いよね。調べたいゾンビはいないんでしょう?」


 ジュリーさんの問い掛けに、顔を向けて大きく頷いた。

 ドローンを降下させてもこのざわめきだからなぁ。声の種別を分別するのも少し無理がありそうだ。

 次の砲撃は10分後だから、タバコに火を点けてモニターを眺める。

 数分が過ぎた頃、建物から湧き出すようにゾンビが出てくる。

 直ぐに、ジュリーさんがゾンビの群れに向かってドローンの高度を落としてくれたけど、映し出されたゾンビは通常型ばかりのようだ。ドローンに搭載された集音装置からも通常型の声しか聞こえない。

 とはいえ建物の中のざわめきは近づいただけ大きくなっている。その声をスペクトルアナライザーで見ると、結構いろんなゾンビの種がいるのが分かるんだけどねぇ……。


「見る限りでは通常型だけですね。統率型は紛れていませんが、建物内部にはいろんな種のゾンビがいるようです」


「まだ出て来ないという事か。次の砲撃が始まるぞ。2分前だ!」


 今度はしっかりとヘッドホンを押さえておこう。

 シグさんのカウントダウンが『ゼロ』告げると同時に、砲声が再び襲ってきた。

 やはりヘッドホンを両手度抑えるだけでもかなり砲声を小さく出来るな。それより窓を閉めるべきかもしれない。榴弾砲を搭載した台船は指揮所の左手だからそちら側だけでも閉めておこう。テラス側と右手の窓を開いておけば、初夏の暑さも我慢できるだろう。


 モニターを睨んでいると、今度は上手い具合にショッピングモールの建物の南西部に着弾出来た。

 3発が20mほどの範囲に着弾するんだからエニー少尉の腕は確かなものだと感心してしまう。


「当たったな! さて、どうなるかだ」


「とりあえず次の砲撃は一時中断してください。ここで状況を詳しく確認します」


「了解だ。ジュリーも大型ドローンの準備を指示しておいてくれ」


 ドローンが高度を下げると、前回よりもゾンビ達が大騒ぎをしているようだ。こんな状況が『ハチの巣を叩いたような』という表現になるんだろうな。

 うるさいほどの声がヘッドホンから聞こえてくるのだが、その声を表現することが出来ないんだよなぁ。スペクトルアナライザーでも音声帯域ごとのセグメント表示が全てマックス値だからね。ある意味ホワイトノイズという事になるのかな。


「どうだ?」


「集音装置の可聴範囲の全域に声が充満しています。ホワイトノイズに近いですね。全く分別が出来ません」


「ゾンビからのカウンターではあるまいな?」


「カウンターではありませんが、それだけ多くのゾンビがいるという事でしょう。ジュリーさんモニターの左下に出入り口がありますね。あの近くにドローンを移動してくれませんか? ゾンビが外に出て来るなら、その位置でゾンビの騒音が大きくなると思うんです」


「了解! あの出入り口ね。あれって裏口だよね」


 資材の搬入用だろうな。ガラス扉ではなくシャッターのようだ。地上20m付近にまでドローンが下りて、半壊したシャッターの奥にカメラを向けてくれる。


「音で確認するまでもないな。まるでありの大群のように押し寄せてくる」


「それなら少し距離を置いてゾンビを確認しましょう。ジュリーさん高度を200mにして出入り口から100m程南に下がってくれ」


「了解。焼夷弾を2個搭載しているから、ある程度出てきたら落としてみようか」


「1発だけですよ。投下のタイミングはジュリーさん達に任せます」


 話を終える前に最初のゾンビが外に出てきた。

 通常型だな。どんどん出て来るな。これを見ると確かに迫撃砲弾を落としたくなるのも理解できる。


「戦士型だ! 腹に大砲を持つ種だな。かなり多いぞ……」


 投射武器を持つ戦士型の集団は脅威以外のなにものでもない。毒針を放つ集団はいたけど大砲を持つ集団は初めてだ。まだまだ出て来るな……。軽く100体を越えそうだ。


「あの丸太もいるぞ。やはり自走砲に対する動く防壁の役目を持つのだろう。数もさほどではないな。足止めであれば数はさほど必要ないという事なのだろう」

 

 それ以外にも口と耳の大きなゾンビもいるんだよね。長距離通信を行うなら頭でっかちのゾンビもいるだろうと思っていたんだが、まだダラスではその進化には至っていないようだ。数kmの情報電たちが可能なら、伝令ゾンビを一定距離ごとに配置すれば十分だという事かな。


「あれも丸太型と言う事か?」


 シグさんが疑問を口にしながら、その姿を拡大してくれた。

 やはり……。

 いずれ出てくるとは思っていたが、ここで見つけるとはなぁ。


「丸太型の半分ほどだね。それにマシュマロを重ねたような脚じゃなくて、ムカデのようだよ」


 ジュリーさんの言葉にシグさんが頷いている。

 その違いがどれほどの脅威となるかまだ分かっていないんじゃないかな。

 そうなると、どれほどの威力を持っているのか確認したくなるんだが、生憎とドローンはハンター仕様だからなぁ。迫撃砲弾の炸裂に紛れてしまうだろうから、ゾンビの自爆の威力が確認できないんだよねぇ……。


「俺1人なら、何とか近くまで行って銃弾を撃ち込めるんですが……」


「却下だ! まったく自分の立場を理解しておらんな。あの丸太モドキに銃弾を撃ち込みたいなら、ドローンにスナイパーユニットを取り付ければ済むことだ」


 目を見開いてシグさんに顔を向ける。

 何時の間に準備したんだ? そんなユニットを聞いたことが無いんだが。


「そう驚く話ではないぞ。陽動時にゾンビを狙撃したことが多いからな。将来を考慮して大型ドローンに半自動ライフルを装備したのがスナイパーユニットだ。その内に遠距離狙撃をしてくるゾンビが出てくるだろうと思って注文していた品だ。銃弾は450マーリン、グリズリーハンティングも可能だぞ」


 俺のマーリンより遥かに強力だな。

 更に話を聞くと、銃弾が大きいから中に白リン剤を封入した銃弾もあるらしい。


「要するにドローンで焼夷弾ともなる銃弾を放てると?」


「その理解で良いだろう。だが訓練はしていないのだ。整備部隊の話では距離200m程なら50cm以内に集束すると言っていたのだが」


 ぶっつけ本番になりそうだ。一応通常の銃弾と、焼夷弾の両者で確認してみよう。

 シグさんに新しく見つけた丸太モドキに銃弾を放つよう指示すると、直ぐに大型ドローンのユニット交換が始まった。

 10本のボルトを緩めてユニットを交換するだけらしいから15分も経たずに準備が終了する。

 直ぐに目的地に向かって飛び立ったから、もう直ぐこのドローンの映像に映ってくれるだろう。


「それにしても銃弾が5発とはねぇ……」


「スナイパーユニットだからな。スナイパーは無駄に銃弾を使わんぞ」


 マガジンに通常弾と焼夷弾を交互に詰めたようだ。

 まぁ、多用するわけではないけど、5発は少なすぎると思うんだよなぁ。


「外に変なユニットは無いでしょうね?」


「強いて言うなら、ボンバーユニットだな。ハンターユニットとは異なり、集音装置を持たぬ。その代わり重量が30kg以内の爆弾なら搭載可能だ」


155mm榴弾砲の砲弾より威力がありそうだな。炸裂弾と焼夷弾を数個ずつ持っていればゾンビの生態調査に幅を持たせることが出来そうだ。


「準備出来たから、出発させたよ。あの小さい丸太を銃撃すれば良いんだよね?」


「着弾観測が可能ならお願いします!」


 貫通できれば良いんだけどなぁ。貫通穴から出てくる体液は他のゾンビと同じだろうか? あの丸太の内側がニトロ化した脂質であるなら、貫通孔は脂質で塞がれてしまうかもしれない。それも確認できるかもしれないな。


「2発目は焼夷弾になるぞ。サミーの言う通り、あの丸太モドキが自爆ゾンビだとしたら、200mではドローンに被害が出るかもしれんな」


「ドローンに被害が出るようでしたら、即マリアンさんに連絡しないといけませんね。脅威だなんて言っている場合ではなくなります」


 銃撃をしっかりと記録しておこう。

 俺の推測では、かなり大きな爆発を引き起こしそうだからなぁ。


 スナイパーユニットを取り付けた大型ドローンがショッピングモールに到着すると、ジュリーさんの指揮の元、2個位のドローンが丸太モドキのゾンビに近付いて行った。

 建物から出て来たけれど、さほど遠くに行かずに駐車場をうろうろしているんだよなぁ。

 指揮するゾンビがいないと、あんな動き鹿出来ないのかもしれない。


「始めるよ!」

 

 ジュリーさんの言葉と共に、モニター画面が丸太モドキのゾンビの側面へと移動を始めた。

 地上20mほどで停止してしっかりと丸太の側面をカメラがとらえている。

 突然ヘッドホンから鋭い銃声が聞こえてきた。

 そうだよなぁ。あの大きな銃弾を使うんだから銃声も大きい筈だ。

 感心する間もなく、ゾンビの側面の体表が爆ぜた。


「貫通孔が出来たな……。だが、何も流れ出さぬぞ」


「あの表皮の裏側は分厚い脂肪の塊ですね。でも着弾の衝撃で炸裂しませんでした」


 ニトロ化しているなら、衝撃で爆発するかと思ったんだけどなぁ……。

 次の焼夷弾はどうかな?

 それで爆発しなければ少しは安心できるんだけどねぇ。



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