表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
736/737

H-736 今度は卵だと?


 マリアンさん達との打ち合わせを終えた翌日。いよいよ東の倉庫を砲撃することにした。

 3門の105mm榴弾砲で1発ずつ放って、倉庫から飛び出すゾンビの姿を捉えるべく上空でドローンが待機しているんだけど、ジュリーさん達はドローンにハンターユニットを搭載しているんだよなぁ。

 落とすのは81m迫撃砲弾とのことだが、砲弾は炸裂弾と焼夷弾をそれぞれ1発ずつとのことだ。戦士型もしくは統率型が出て来たなら、情報を得た後で爆殺して貰おう。


「準備は全て整ったぞ。1000時に砲撃を開始する。砲撃は1発発射した後に5分間の間を取って次の砲弾を放つ。3射で終える予定だ」


「了解です。俺の方も準備は出来てますから、予定通り始めましょう」


 テーブルにノートパソコンを置いて、ハンターユニットに設けられた集音装置から得られた音声信号をスペクトル解析が出来るようにしてあるし、集音装置から聞こえる声はヘッドホンを使って聞くことが出来る。集めた音声情報はドローンの映像と合わせて、全てノートパソコンのメモリーに落とせる。


 砲撃開始まで残り3分を切っているな。

 リラックスすべくタバコに火を点けて、上空から映し出された映像をミニターで見守ることにした。


 シグさんがカウントダウンを始める。目標までの距離を考慮すると、弾着まで数秒は掛かるだろうな。それに台船の上からの砲撃だからなぁ。最初から目標に命中するとは思えないんだけどねぇ……。


 シグさんが『ゼロ!』を告げると右手から砲声が轟く。

 窓のガラスが振動するし、ヘッドホンをしていても結構耳に響くんだよね。

 モニターの画面を全員が見守っていると、目標の倉庫が炸裂炎に包まれた。

 当たったのか? と思ったんだが、砲炎が晴れるとどうやら倉庫近くに弾着したらしい。


「外れたな。まぁ、次は期待できるだろう」


 外れはしたが、ドローンから聞こえるゾンビの声が急に大きくなりだしたのは予想外だ。声は……、通常型が多いんだが、戦士型の声も聞こえる。統率型もいるようだがヘッドホンからでは多数のゾンビの声に紛れて判別できない。だがスペクトルアナライザーのセグメント表示には統率型の声がはっきりと表れている。


「どうだ?」


「いますね。戦士型に統率型の確認が出来ました。それと……、これは伝令型でしょう。それに初めて聞こえる声もあるようです。新種もしくはダラスで進化した既存の型のゾンビなのかは判断できません」


「了解。結構分かるものだな。次は2分後になるぞ」


 さて、この新たに現れた周波数帯を使うゾンビは何なんだろう?

 士官型としては少し帯域が高いんだよなぁ。かといって統率型を統べるゾンビとも思えない。

 次の砲撃に期待するしかないな。


「次弾発射30秒前!」


 シグさんの告げる声に、再びモニターを眺める。

 砲声が再度轟き、数秒後にモニターに炸裂炎が広がった。炸裂炎が晴れると半開した倉庫が現れる。

 集音装置から聞こえる声は、ゾンビ達の声が重なって全く判別できない。音声スペクトルのセグメントが目まぐるしく上下しているから、少し時間を置いてゾンビ達の状況を見守りたいところだ。


「シグさん。3射目を待ってもらってください。かなりゾンビが混乱していますから、その状況を確認します」


「了解だ。待機させるぞ!」


 さて、今度はジュリーさんにお願いしてドローンの高度を下げる。

 ゾンビが何をしているのか確認したいし、高度を下げれば集音装置の指向性を利用してゾンビの声の主も特定できるだろう。


 モニターの意で蠢いているゾンビは、何かを取り出しているように見えるんだよなぁ。

 シグさんに確認すると、シグさんも俺の話に同意してくれた。


「確かに掘り返しているように見えるな。砲弾によって倉庫が崩れているから中にあった代物を取り出しているという考えは当たっていると思うが、ゾンビの大切なものとは何だろうな」


「左下を見て! 何かを取り出したよ。あれって、卵かな?」


 ジュリーさんの言葉に、改めて左下に視線を移す。確かに卵のような代物を掘り出したな。シグさんが急いで画面を拡大してくれたから、今度ははっきりと見えた。


「卵だな。ゾンビはコクーンで生まれるのではなかったのか?」


「あの卵から孵化した代物がコクーンを作るのかもしれませんよ。これは生物学研究所に速めに知らせたいところですね」


「その孵化した代物とは、あれかもしれんな。中央より少し上だ。芋虫の大きい奴が這い出してきたぞ」


 ゾンビは人間の体を利用して一気に数を増したけど、その実態は寄生生物だったはずだ。メデューサと命名したけれど、クラゲモドキが数年を経て昆虫のような生物に進化したという事になるのだろうか?

 あの姿では脳が発達しているとは思えないんだがなぁ。

 それに脳として位置付けられるまでに神経系統をこれから発達させるのだから、やはりメデューサは俺達の想像を超えた生物だと言えるだろう。


「ジュリーさん。損壊した倉庫をドローンで一巡りしてください。その他にも変わったゾンビがいないとも限りません」


「了解。直ぐに始めるよ。それと、もう1機ドローンを飛ばそうか? 低空での確認と少し高度を上げての確認を並行して行った方が野草に思えるんだけど」


 ジュリーさんの提案に、シグさんと顔を身わせて頷いた。

 直ぐに大型ドローンが飛んで行ったのだが、それにもハンターユニットを搭載して行ったんだよなぁ。ジュリーさんの話によると、迫撃砲弾は4つとも炸裂弾とのことだ。もう1射する予定だけど、それが外れたなら迫撃砲弾を投下するつもりのようだ。

一通り損壊した倉庫を確認したところで、3射目を放つ。

 今度は1発が倉庫に着弾したから、再ゾンビ達が騒ぎ出している。

 電池切れが近づいたドローンを回収して、大型ドローンを使って損壊した倉庫の状況を再び確認する……。


 午後には南の体育館を砲撃し、午前中と同じく飛び出してくるゾンビの姿と声を確認したのだが新種を見つけることは出来なかった。

 砲撃で建物の中で炎に焼かれたのかもしれないな。案外動きが遅いゾンビという事になるのかもしれない。声を聞く限りでは東の倉庫と同じく、これまでに聞いたことが無い帯域で声を出すゾンビがいたのだが……。


 夕食後に士官達が集まり、本日の攻撃で得ることが出来た情報を共有する。

 新たに出現した声と聴いて、皆が身を乗り出すようにしてシグさんの話を聞いているけど、声の主を確認できなかったと知ってがっかりした表情で俺に顔を向けてきた。


「ダメ元での砲撃ですからね。その内に現れるでしょう。明日は一番多く魚を運んでいるショッピングモールですから少しは期待が持てそうです」


「大きいですからねぇ。出来れば中の資材を利用したいところですが、砲撃後は焼いてしまうのですか?」


「その方が、後の憂いを無くせるだろう。大都市の資材は魅力ではあるが、それはある程度諦めるしかなさそうだ。特にこの陸上艦隊ではな」


 マリアンさんが総指揮官だからねぇ……。

 俺達はコンビニの襲撃で満足するしかないだろうな。でも事前調査でゾンビの数が少ないような倉庫であるなら、マリアンさんもあえて破壊することはしないだろう。


「明日も1000時に砲撃を始める。砲撃手順は今日と同じだが最後の砲撃は連続して3射はなって欲しい。あの大きさだ。場合によってはさらに砲撃を続けることになりそうだ」


 しっかりとエニー少尉が頷いてくれたから、上手く当ててくれるに違いない。

 会議を終えて、指揮所を出る。

 時刻は22時前だからなぁ。日付が変わるまで、釣りの腕を試してみよう。


 ドローンの離発着台のある台船に移動すると、数人が釣竿を出している。

 倉庫の壁に作られた竿掛けから、竿を1本手にすると、竿掛けの下に作られた棚に乗せられたカゴに入っているルアーを見繕う。

 この選択で釣果が変わるとのことだからなぁ。とはいえ色々とあるから目移りしてしまう。何個かに限定してくれれば助かるんだが、この選択も釣りの腕を誇る資質という事になるようだ。

 夜だから蛍光色で派手なルアーを選択してラインに結び付ける。

 蓄光塗料が塗られているようだから、マグライトを取り出してルアーにしっかりと光を浴びせた。

 1分程当てると、ルアーがしっかりと自己主張をしているからこれで十分だろう。

 皆の邪魔にならないように、倉庫の裏手に回って30m程沖に投げた。

 手首を煽るようにしながらリールを巻く。

 ニックの話では、深場で夜は浅場で大物が掛かるらしい。とはいえここは10mほどの水深だからなぁ。中間層を狙っての釣りをしてみよう。


 1時間ほどひたすらルアーを曳いていたんだが当たりがまるでない。

 ルアーの選択を間違えたのか、それともこの辺りの魚はどこかに出掛けてしまったかのどちらかだろう。

 倉庫の反対側にある離発着台の方から、時々歓声が聞こえてくるのが気になるんだよなぁ。やはり場所がまずいのか?

 そう思って時だった。いきなり竿が絞りこまれて満月になる。

 慌ててリールのドラグを緩めて竿を立て直す。これはかなりの大物だぞ! 

 最初はぐいぐいと竿を絞って、リールからラインがどんどんと出ていたが、少しずつ巻き取る量が増えてくる。

 水底に引き込むのではなく、沖に向かってラインが延びているから少なくともナマズではなさそうだな。

 あのナマズは大きかったんだけどなぁ。今回もあのナマズに負けないくらいの大物に違いない。

 巻き取るラインの量が増えるにつれ、笑みが浮かんでくるのが自覚出来るんだよねぇ。そろそろ介添え人を呼ぼうかな……。

                 ・

                 ・

                 ・

「あのブラックバスはサミーが釣り上げたのかい?」


 翌日の朝食の席に着いた俺に、いきなり問いかけてきたのはニックだった。


「そうだよ。どうにか釣り上げたんだけど、あれが1番だよね?」


「現時点ではね。だけどいつまでレコードを保持できるかなぁ」


 ニックの言葉に、周囲のテーブルで朝食を取っていた兵達まで頷いているんだよなぁ。

 まったく大人げない連中ばかりだ。

 少しは俺の腕を絶賛してくれても良いと思うんだけどねぇ。


「狩人もそうらしいが、釣り人も自分が一番だと思っているようだな。私はサミーにそれだけの腕があったことに驚いてるよ」


 シグさんの言葉も、尊敬には程遠いんだよね。

 となると、同じような大きさの魚を沢山釣れば良いのかな?

 それなら今夜も試してみるか。ジャックに吊り下げる魚は多い方が良いだろう。色々と情報が集まりそうだからなぁ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ