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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-717 何時でも逃走出来る燃料を残すのが海兵隊の常識らしい


 マリアンさんの意図するダラス攻略拠点を皆で考えていると、指揮車から通信が届いた。

 どうやらレーヴァさんへの指示が来たらしい。フクスに来ていたから、こっちから本隊の指揮車に連絡するようにとのことだった。


「サボっていると思われたかな? 弁明は頼んだぞ」


 そんな前振りを俺達にしたところで、ジュリーさんからヘッドセットを受け取りマリアンさんと交信を始めた。

 

 しばらくは一方的に話を聞いて副官が渡したメモに書き込んでいるだけだった。

 かなり面倒な事を考えたのかな? 

 

「了解です! 復唱します。オクラホマのゾンビの誘導は明後日0800時より開始。作戦開始と同時に州間高速40号線に仕掛けたノイズマシンを作動。その後0900時にジャンクションから500m南のノイズマシンを作動。ノイズマシンの南に設置したジャック4台は、我々が状況を見ながら作動させる。誘導方法は我々に一任。誘導先はレイ・ロバーツ湖の南までとする。以上でよろしいでしょうか? ……了解しました。それは明日に確認するつもりでサミー達と調整しておりました……。それでは」


 なるほどね。俺達と同じ考えのようだ。

 レーヴァさんが俺に顔を向けて、笑みを浮かべる。


「やはり同じ事を考えているようだが、そうなると途中の小さな町の状況をある程度確認しておかねばなるまい。やはり先行偵察は必要だな。明後日が誘導開始とするなら、明日は私も1日出番がない。ストライカー2両とバイク2台で出掛けてみるか」


「それなら安心ですね。トラックでも2両のストライカーで押すなら道路脇に移動できそうです」


「無反動砲もあるからな。砲弾は車内に12発だが、キャンピングカーゴには更に12発搭載してあるぞ」


 嬉しそうな顔をしているから、シグさんが苦笑いを浮かべているんだよなぁ。レーヴァさんも中々大人になれない少年の心の持ち主のようだ。


 明日の朝食後に出発と俺達に告げて、レーヴァさんがフクスを後にした。さて、どこまで向かうつもりなんだろうな。

 ストライカーの走行距離は500kmほどらしいけど、燃料タンクを増設した上に予備のジェリ缶まで積んでいるからねぇ。案外800kmを走れそうに思える。ジェリ缶は早めに空荷したいとオルバンさんが言っていたからすでにフクスのジェリ缶は空に違いない。

レーヴァさん達もそうだとすれば、優にダラスを2往復は出来そうだ。

 ダラス北部の湖なら、十分に日帰りが出来る距離だからなぁ。燃料の心配は無いという事なんだろう。


「さすがに湖まで向かうとは思えんな。向かうとするなら私とサミーだけだろう。湖を過ぎて35号線から東に向かう道路は3つしかない。上手く選ばないと面倒なことになりそうだ」


「同じ手を使うしかなさそうですね。2人でジャックを運んでいきましょう。前方にジャックが2個あるなら、俺達がわき道に逸れても、ウイチタのゾンビの集団のように35号線を南下するでしょう」


 途中で何か所か放置車両が渋滞している場所がある。これはレーヴァさん達の無反動砲に期待しよう。火災になっても特に気にする必要は無さそうだ。周囲はかつての農場ばかりだからなぁ。

 気掛かりはダラスの偵察ゾンビがどの辺理にいるか分からないことだ。偵察ゾンビを都市に生息する巨大なゾンビの集団の外周部に張り付けるのは、敵対する勢力を早期に発見するためなんだろう。俺達がバイクで近くを横切ってもダラスの統率型が動くようなことはないはずだ。

 動くようでも困るんだけどね。もし動くことがあるなら陸上艦隊の本隊を見た時だろう。だがその前にオクラホマ・シティから誘導してくるゾンビの集団を見るだろうからなぁ。

 今度はどんな騒ぎになるのか楽しみだ。

 やはり戦力の順次投入となるんだろうか? それなら10万体を越えるゾンビを誘導し来所なんだけどなぁ。その後に予定している俺達のダラス攻撃が少しは楽になりそうなんだけどねぇ……。


「バイクでライフルを撃つのは案外難しいな。明日は拳銃を使うぞ」


「あの改造ベレッタですか? 形がだいぶ変わっていますけど」


「基本構造は同じだ。バレルを6インチにしてダットサイトを付け、ロングマガジンにしているだけだからな。グリップストラップがあるから片手撃ちも容易だ」


 原型が無いほど改造してあるから、最初に見た時は全く別の銃だと思っていたんだけどなぁ。それにしてもマガジン内の銃弾が25発とはねぇ。弾幕を張れそうに思えるな。


「俺はマーリンで行きますよ。パイソンはサプレッサーを付けられませんからね。誘導ではありませんから爆弾を持っていく必要は無さそうですが、手榴弾とスタングレネードは用意しておいてください」


 残ったコーヒーを飲みながら、うんうんと頷いている。

 ジュリーさんが呆れた表情で見ているんだけど、レディさんより過激な人物だと認識しているに違いない。

 女性達がキャンピングカーゴに移動して睡眠取ることになったから、フクスには俺1人だ。起きてから4時間も経ってないからなぁ。日付が変わってから仮眠を取れば十分だろう。

 それまで、ここまでの間でゾンビに対して新たに推測できる事項と、確認すべき事項を箇条書きにして纏めよう。オリーさんに送れば、オリーさんやレディさんの意見を添えて生物学研究所に送ってもらえるだろう。

                ・

                ・

                ・

 シグさんと並んで35号線をバイクで南下する。

 時速60kmというのは、周囲が元農地の荒れ地であることや真直ぐに南に向かう高速道路であることを考えると、まるで速度感が無いんだよなぁ。

 ヘルメットに取り付けたヘッドホンに、たまにゾンビの声が聞こえるのだがかなり遠方に用で声は小さいし通常型ばかりだ。

 通常型を『ワーカー』と分類した時期もあったが、ローマ軍に近い組織で動いているゾンビだからなぁ。ゾンビの社会を形作る最下層の地位という事になるのかもしれない。そうなると通常型と簡単に言っているけど、その中にも階級があるのかもしれない。市民と奴隷のような差が出ているのか調べて見るのも面白そうだ。


『前方に放置車両! さすがに数が多いな。あれが衛星画像に映っていた渋滞車列かもしれん』


「たぶんそうでしょう。レーヴァさんの出番ですね。連絡をお願いします。俺達はこの辺りで待機しましょう」


 対向車線との間にある緑地帯傍にバイクを停めて、タバコに火を点けていると自走砲を乗せたストライカーが俺達の横を通り過ぎて行った。

 自走砲に取り着いていた2人の兵士の1人はレーヴァさんだな。やはり自分で撃ってみたくて搭載したに違いない。これはレディさんに報告しておいた方が良いのかもしれない。


 シグさんと南の車列を眺めていると、ドォン! という炸裂音が聞こえて来た。

 無反動砲だけあって、砲撃音がしないんだよなぁ。あれならゾンビの真近で撃ったとしてもゾンビが襲ってくることは無いだろう。


「砲撃音がほとんどしませんね。あれで放列を作るのも良さそうです」


「砲弾ではなくロケット弾だからなぁ。105mm榴弾砲と比べて射程が短く散布界が広いんだ。それに装填速度も遅いぞ。だがゾンビ相手にするならそれでも使えるという事か」


 それなりの破壊力があって、砲の自重が榴弾砲の1割程度らしい。だからストライカーに無理やり搭載出来たのだろうが、そんなストライカーが住宅地の掃討に随伴してくれるなら怪しい建物を片端から破壊できそうだ。それだけ掃討時間を短縮することも出来るだろう。

 携帯型の対戦車ミサイルがかなり残っているらしいけど、住宅の破壊に使うなら直ぐに使い切ってしまいそうだ。コストパフォーマンスが良くない兵器を大量に使うには考えてしまうんだよなぁ。使えるものは何でも使うという話もあるけど、やはり貧乏性なのだろうか……。


「今度はストライカーで押し始めたようだな。炸裂で火事にならなかったところを見ると、燃料切れで渋滞したのかもしれん」


「ゾンビが現れたところで、慌てて避難したんでしょう。普段から車を満タンにしていたとは思えませんし、ガソリンスタンドだって長蛇の列だったはずです」


「ガソリンを補給したくとも、その前にゾンビの群れが押し寄せてきたという事か……。やはり常にガソリンタンクには半分は入れておくべきだな」


 その話をウイル小父さんも良く言っていたなぁ。何があるか分からないから、町を離れるだけの燃料は残しておけとニックに言い聞かせていたのは度々だ。

 シグさんも似たことを言っているのを見ると、海兵隊の一般常識という事なのかな?


 どうにか放置車両を道路脇に押し出すまでに30分近くかかったのは、仕方のないことなんだろうな。

 もう2か所あるのが問題だな。容易な偵察だと思っていたんだが、1日作業になりそうだ。


 「先行してくれ!」との連絡を受け、シグさんと再びツーリングを始める。

 直ぐに最初の要注意か所であるノーマン市に入った。

 市の中心街を高速道路が通っているが、日本と違って周囲の建物とかなり距離がある。たまにゾンビを見掛けることもあるが道路上には今の所いないようだな。


『この先が2つ目の渋滞か所だ。火災が起こったようだな。スクラップが並んでいるぞ』


「あれですね。上手く燃えてくれたから良しとしましょう。焼却体はゾンビも興味がないでしょう」


 焼け残った体の一部のゾンビの食料になっただろう。これならストライカーで上手く弾き飛ばせそうだ。

 そんな縦隊を抜けるには……。緑地帯を横切って反対車線に出れば良い。対向車線は渋滞無しだ。


『レーヴァに状況を伝えたぞ。さらに進もう!』


「了解です!」


 エンジンの調子は良いし、高速道路だけあって道は良いからなぁ。もっと速度を出したいところだけど、周囲の状況監視も兼ねているから我慢するしかない。

 12時を過ぎたところで休憩を取ることにしたのは、アードモア市の西にある大きなクローバー型ジャンクションの陸橋だった。

 周囲の眺めは良いし、ゾンビの声も遠く東の市街から聞こえるだけだ。


 バッグから携帯燃料缶を取り出して、大きなシェラカップでお湯を沸かす。

 水筒にはまだコーヒーが残っているけど、やはり温かなコーヒーが一番だ。


「この先のテキサス川を渡れば、レイ・ロバーツ湖は直ぐ近くだ。生憎と35号線は湖から離れているから湖面を見ることは出来んな」


「デントン地区に入る前に東に抜けないといけません。この道を通って377号線に合流し、レイ・ロバート湖を一周して35号線に戻りたいですね」


「この道だな……。予備の燃料缶もあるから行ってみるか。377号線の状況も見ておいた方が安心できそうだ」

 

 燃料缶というのが恥ずかしいぐらいの容量なんだよなぁ。5ℓと言っていたからね。それでも80kmほど走らせることが出来るだろうから、フクスに戻れなくなるなんてことはないだろう。


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