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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-716 次はダラスだな


 ベンチの上にハンモックを吊るして横になる。

 直ぐに睡魔が襲ってきたから後は目を閉じるだけだ……。

 誰かがハンモックを揺すってるんだよなぁ。何かあったんだろうかと少し頭を持ち上げると、シグさんがハンモックの傍に立っていた。


「マリアンさんから新たな命令ですか!」


「そうではない。6時間経ったから起こしてあげたんだ。車列周辺に異常は無いし、本隊の方はまだ砲撃を続けている。砲弾をだいぶ運んだようだな」


 そんなに時間が経っているんだ。ゆっくりと体を起こし慎重にハンモックから降りる。ハンモックを丸めてベンチ下の収納に仕舞い込むと、シグさんがコーヒーカップを渡してくれた。

 先ずは飲んで寝ぼけた頭をシャキッとさせろという事だろう。

少し甘みが足りないコーヒーを飲みながら、タバコに火を点ける。

 モニターに目を向けると、前と違った風景だから確かにかなり時間が経過しているようだ。時計を見ると20時を過ぎている。夜ってことだな。


「さすがにマリアンさんからの連絡が来なかったとは思えませんが?」


「状況を継続すると連絡があったぞ。16時に再度A-10による爆撃が行われた。18時にこことここにジャックを仕掛けて状況観測を行ったようだ。結果はジャックに集まったゾンビの数は20体にも届かなない。オクラホマのゾンビを南に追い遣るという作戦は目論見通りに進んでいる」


 それでも20体近く集まるんだからなぁ。やはり砲撃でゾンビを全て葬るのは不可能という事になるのだろう。


「本隊の指揮所には生物学研究所から派遣された研究院が同乗しているはずです。そちらから情報はありませんでしたか?」


「中間的な報告だが、ゾンビの新たな進化種は確認できていない。通常型が武器を持つことを今回初めて観測されたぐらいだな。とはいえ投射武器を持つゾンビがいるから車両から外に出る際には十分気を付けるよう全部隊に指示が出ているぞ」


 上空でドローンが監視してはいるだろうけど、見逃す場合だってあるだろうからなぁ。なるべく外には出ないようにしないといけないな。


「そうなると、ダラスへの誘導は明日の日中になりそうですね」


「レーヴァ達が衛星画像を見ながら明日の進路を確認しているようだ。まだ具体的な開始時間の連絡は来ないが準備は進んでいるぞ」

 

 朝早くにノイズマシンを作動させて、1時間おきに次のノイズマシンやジャックを作動させる。それはウイチタ市と同じだから俺達の誘導開始時刻はいる前後になるはずだ。

 今度は夜間誘導を上手くこなしたいところだな。


 ジュリーさんに1人だけのレーションを温めて貰い昼食兼夕食を頂く。

 周辺監視以外にやることが無いというのは、ちょっと退屈だな。

 食事を終えて、さて今夜は何をしようかと考えているところにレーヴァさんが副官を伴ってやって来た。

 たまに別の場所で状況を考えたいという事だろう。

 シグさんが席をレーヴァさん達に譲って俺の隣に腰を下ろした。改めてレーヴァさんの顔を見ると、憔悴しきっているわけではないから特に大きな問題が出たという事ではないようだ。やはり場所を変えて状況を確認したいという事なんだろう。


「特にやることが無いからなぁ。サミー達が休んでいる間は私達の方で周辺監視を行っていたが、今は役目を引き継いでいる。こっちもゾンビが集まりだすかと思っていたんだがそうでもなかったな」


「そこは俺も悩んでいるところです。最初からゾンビの数がそれほどいなかったとも考えられますね。とはいえそれを確認しようとすれば高速道路の西のゾンビが動き出しかねませんからねぇ。状況からの推測に留めましょう」


 オクラホマでは、今回より前にもゾンビ同士が争った可能性があるからなぁ。その時に大規模な動員を統率型がかけたとするなら、市街地から東に大きく離れたこの辺りのゾンビはその時に移動して戻って来ないという事も考えられる。

 そもそも郊外の住宅街だ。元からゾンビの数が少なかっただろう。


「その考えで行くと、まだ北にいる本隊の移動経路は高速道路から外して東側を進ませたいところだな」


「かなり安全には違いありませんが、結構大きく進路を外れますよ。何といってもコンボイを作る車列が長いですからねぇ。並走して走れるような道路となると……」


 テーブルにシグさんが衛星画像のプリントを広げる。

 手元のタブレットの地図と照合しながら、使えそうな迂回路をボールペンで示してくれたんだが、やはり問題が色々とあるんだよなぁ。


「進路を変えるだけでも渋滞が起こるだろうな。それに放置車両も無視できんか……。私達だけなら脇をすり抜けることが出来ても、そもそも並走して移動するように車列を作っているからな」


「この十字路だって、大型の牽引車が曲がるには苦労すると思いますよ。やはり35号線をそのまま南下すると思いますね」


 となると俺達が先行してダラスまでの150km弱の距離を調査確認しないといけなくなる。誘導開始日時をまだ連絡してこないんだが、早ければ明日だろうからなぁ。


「明日は先行偵察という事になりそうですね。でも誘導指示が出ないとも限りません」


「また2つに分けて行うことになりそうだな。フクス2両は前回と同じように誘導のバックアップと群れの状況監視をして欲しい。サミーとシグにはストライカーと一緒に先に南下して状況確認になる」


「役割分担はウイチタと同じという事ですね。了解です。となると1つお願いしたいんですが、同行するストライカーの分隊の指揮権を一時俺にいただけませんか?」


「元よりそのつもりだ。フクスについての指揮権は一時私が貰うことになるが、それは了承して欲しい。もっともオルバン少尉に委任するつもりだがね」


 責任所在はレーヴァさんが持つから、オルバンさんは自由に行動できるという事かな。

 それなら問題は無いだろう。オルバンさんの事だからジャックの起動や統率狩りなどについては、その都度レーヴァさんに確認するはずだ。

 それより1つ気になる場所があるんだよなぁ……。

 地図でその場所を示すと、レーヴァさんの表情が少しきつくなった。


「ノーマン市か……。さほど大きいとは思えないんだが、市内を35号線が案通しているという事だな」


「放置車両も数が多いようです。ストライカーで道路脇に跳ね飛ばすことは出来そうですけど……、数が多いんですよねぇ」


「とりあえずは通行できる状況にしておいてくれるなら、誘導の事前措置としてこちらで対処するしかないだろうな。フックで引っ掛けて渋滞から離せばストライカーの強化バンパーで道路脇に退かせるだろう。大型トレーラーもあるようだが、ストライカーの自重は10を超えるし8輪駆動で馬力もある。動かせないことはないだろう」


 動かせない場合はそれがゾンビを誘導する際にゾンビの障害になるだけだ。かなりのゾンビが道路をはみ出すだろうけど、その場を通り過ぎれば再び35号線嬢に戻るだろう。

強いて課題を言うなら、それによりゾンビの南下速度が遅くなるという事だけかもしれない。マリアンさんに伝えたら笑われそうだな。マリアンさん達なら榴弾砲で破壊するだろうからそもそも課題にならないかもしれない……。ちょっと待てよ。先行部隊にも大砲はあったんだよね。


「レーヴァさんが手に入れた大砲を使ってみませんか?」


「あの無反動砲か! なるほど、渋滞したまま放置された車列に撃ち込むってことか。それで吹き飛んでしまえば都合が良いな。1つ課題があるとすれば車両の燃料がまだ残っていることだが、長く燃えることはないだろう。衛星画像でそれが起こっている場所は、ここだな。距離は50kmほどだから私のストライカーを先行させれば済むことだ。通信機を強化しているから指揮の問題は無いだろう。任せておけ!」


 上手く行ったら、他のストライカーにも無反動砲を搭載しそうだな。

 エディ達も欲しがるだろうけど、ドローンの雲長母艦的な役割を持っている以上無理な話だ。

 シグさん達副官が俺達を呆れた表情で見ているけど、レーヴァさんは嬉しそうにタバコを取り出して火を点けている。

 ジュリーさんが俺達にコーヒーを配ってくれたところで、雑談が始まった。

 雑談と言っても、レーヴァさんが切り出した話題は、誘導の終端に関わる話だった。

 ダラス攻撃は、ヒューストンからの航空支援が合ってのことだ。

 さすがにダラス空港を奪回することは出来ないから、作戦案ではダラス近傍の湖を利用して資材を投下して貰うことになっているのだが……。


「ダラス近傍の湖は3つある。北に2つ東に1つだ。さすがにすぐ北の湖ともなると、加ダラスのゾンビが襲って来ないとも限らない。東も似た感じだな。そうなるとこの湖になる。ダラスの中心部まで40kmにも満たない。周辺の住宅は少ないからこの道路を使うことで容易に南下は可能だろう。湖もかなりの大きさだからフロートを付けたセスナならダラスへの反復爆撃も可能だろう」


 レイ・ロバーツ湖か……。確かに良さそうな場所だ。

 となると、誘導先はもう少し南まで伸ばしたいところだな。

 それに俺達が退避可能な道路も探しておいた方が良さそうだ。レイ・ロバーツ湖を過ぎて数km南下したなら、ダラス北部のデントン地区だからなぁ。東に向かう道はその間に数か所も無い。

 レイ・ロバーツ湖の南岸を進み377号線に出ることが出来れば、とりあえず安心できそうではあるんだが……。



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