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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-070 死んだ人間が動く理由が少しわかったらしい


「レディ伍長殿でしょうか!」


「そうだ。それで君は?」


「ロバート上等兵です。数体のゾンビを探しているとのことでしたが、物音のする家尾を見付けましたので私が案内人としてやってきました」


 2つの分隊でクレムリングの町の調査を行っている途中らしい。

 三分の二程が終わっているとのことだから、雪が降る前には終わるんじゃないかな?

 グランドジャンクションへの道は、今年はここまでになりそうだ。


 ロバ―トさんの案内で、俺達は直ぐに目的の家に到着した。

 分隊が周囲を取り囲んでいるところを見ると、まだ物音を立てる存在は家の中にいるということなんだろう。

 分隊指揮官の軍曹とレディさんが話をしている間に、俺達は準備を整える。

 背負ってきたナップザックを七海さん達に預けると、ワルサーを取り出して腰のベルトに差し込む。

 エディ達のベレッタ92FSはホルスターから直ぐに取り出せるんだよなぁ。羨ましく思える時もあるけど、俺のホルスターはしっかりした革で覆われる構造だ。戦でホルスター内に砂や泥が入ることを嫌ったんだろうな。予備のマガジンまで一緒に覆う感じだから、これを要求した戦場どんな場所だったんだろうと考えてしまう。


「本当に、それだけでゾンビに挑むの?」


 マリアンさんの素朴な疑問に、真剣な表情でレディさんが頷いてくれた。


「ああ、本当だ。スニーク技術では私達の上を行くぞ。私達は万が一に備えて周囲を見ていれば良い」


 そうなのかな? そうっと後ろから近づいてポカリは、今までやって来ただけなんだけどなぁ。


「どうだい?」


「あぁ、やはりいるな。2体に思えるけど、どうする?」


「なら、2体ともオリーさんに確認して貰おう。両方とも俺が転がす。転がしたところをマリアンさんに背中を踏ん付けて貰おう。その後の1体を踏んづけるのはエディに任せるよ」


「俺は?」


「2人が踏ん付けたゾンビの手足を折って欲しい。それだけで、マリアンさんとエディの危険の度合いがだいぶ減るからね。俺が頭を押さえれば、オリーさんはまだ動いているゾンビから欲しい物を手に入れられる」


「「了解だ」」


 3人で肩を叩き合い、自分の仕事の再確認をする。

 さて、レディさんの方も話が終わったみたいだな。俺達に集まるよう手を振っている。


「さて、ここからは私達の仕事になる。サミー、状況の確認は出来たか?」


「出来ました。どうやら2体動いているようです。この際ですから、2体とも無効化してオリーさんに渡そうと思っています。それで、申し訳ありませんが、マリアンさんに手伝って頂きたい」


「んっ! 私か? 私はあまりスニークは得意ではないのだが」


「俺が転ばしたゾンビの背中を足で抑え付けて頂きたい。もう1体を転がすまではエディ達も動けませんからジェリーさんも手伝ってあげてください。腰も抑えた方が良いかもしれません」


「立ち上がれないようにするんだな。了解だ。ジェリー、かなり暴れるかもしれん。しっかりと押えてくれよ」


「相手は両腕が動かせる状態なんだから、マリアンこそしっかり押さえててよ。足を噛まれてもゾンビになるんだから」


 そんなに暴れる時には、レディさんに始末して貰おう。パッチ達は予定通り、周囲の警戒をお願いしておく。


「サミー、無理はするな。判断は早めにするんだぞ!」


「了解です。……それじゃあ、レディさん、お願いします!」


 俺にしっかりと頷くと、いつの間にか手にしていたショットガンを玄関のカギに向かって放った。


ドォン!


 鍵が壊れて扉が外に向かって開くと同時に、俺が室内に滑りこんだ。

 確かに2体いた。

 だいぶくたびれた服を着ているけど、汚れてはいない。

 家に避難する前に、どちらかが噛まれたんだろうな。俺と同年代の2人はあまり似ていないから、片方は友人と言うことなんだろう。


 少し腰を屈めてゾンビの目線から逸れるようにしているんだが、2体だからなぁ。

 早めに片方を処置した方が良さそうだ。


 一歩足を踏み出して、靴音を立てる。

 スコップの柄の先端部分に付けたL字状の金具を下に向けて低く構える。

 俺に向かって伸ばした両腕が1mほどに迫ったところで、右足を後ろに引いて軸足にすると体の向きを変える。

 下に構えた金具にゾンビを足を引っかけ、体の回転に合わせて両手で引いたから、盛大な音を立ててゾンビが床に転がった。

 すかさず肋骨の後ろを足で抑える。


「マリアンさん!」


 俺の声に、扉で成り行きを見ていたマリアンさんが飛び込んできた。

 マリアンさんがゾンビを押えた俺の足の隣に足を乗せて体重を掛けるのが分かる。

 小さく頷くと、此方にやって来るゾンビを足音を立てて引き離す。

 うまく向きが変わったから、直ぐにジュリーさんが部屋に飛び込んできた。


 これで1体は確保できたってことだな。

 相棒がいなくなったのが分かるのだろうか? 残ったゾンビの動きが先ほどよりも良くなっている気がする。

 とはいえ、やることは同じだ。

 柄を低く構えゾンビが俺に向かって来るのを待つ……。


「エディ! こっちを頼む」


「今行くぞ!!」


 エディとニックが駆け込んでくると、エディにゾンビを任せる。ニックと俺でゾンビを無効化するために両腕、両足をスティックと柄を使ってゾンビの腕と足を攻撃する。

 力任せに叩けば良いだけだからね。骨を折る感触が伝わるとようやく安心感が沸いて来る。


「オリーさん! お願いします!!」


「待ってて! 丁度良いテーブルもあるわね。ナナ、手伝ってちょうだい!」


 最初はエディが抑えている少年だ。

 L字の金具で頭を床に押しつけるように固定すると、オリーさんがピッケルを取り出して頭蓋骨に穴をあける。

 ドロリと粘液が流れてくるが、ガラスの棒を頭蓋骨に空いた穴に差し込んで中から新鮮な試料を取り出している。

 ガラスの板に取り出した粘液を乗せると、直ぐにテーブルに走って行った。

 

「処理しても良いわよ」


「了解!」


 オリーさんの言葉に答えたのはレディさんだった。

 しっかりと狙いを付けて、頭部に銃弾を撃ち込んだ。すでに穴は開いているんだけどなぁ。

 震えていた方の動きが亡くなったところで、エディが押さえ込んでいた足をゾンビから離す。


「次の措置はナナのお願いするわ!」


 マリアンさん達が、頑張って押さえ込んでくれてるからなぁ。

 同じように頭を押さえると、七海さんが頭部にピッケルを打ち込んだ。

 ガラス板2枚に資料を乗せると、テーブルに向かって行く。

 レディさんが近付いて来て、同じように銃弾を頭に撃ち込んだ。

 ほっとした表情でマリアンさんがゾンビの背中から足を下ろす。


「全く、無茶をするものだ。だが、確かに動きは良いな」


「真似等するなよ。サミーだからできるようなものだからな」


「命令されたってしないわよ。あんなに近づくなんて信じられないわ。掴まったなら終わりでしょうに?」


「そうでもないようだ。サミーにはもう1つ切り札があるからな。まったく先行偵察部隊に何時でも配属できそうだ」


 そうかな? ゾンビだから上手く行っているところもあるんだよなぁ。人間相手ではこんなに上手く行かないはずだ。


「ナナ、足のサンプルと腕のサンプルもお願い!」


「了解です!」


 今度はメスを使って腕と足の筋肉組織を切り取っていく。

 ゾンビは干乾びていると思っていたんだが、案外湿った組織のようだ。でも色が肉ではないな。なんか腐ってるんじゃないか? 変な糸を引いているぐらいだからね。


 エディ達とマリアンさん達は外に出て行ったようだ。パット達は心配なんだろう。

 俺とレディさんは、部屋の壁際に移動して、タバコに火を点けオリーさん達の作業を見守る。

 さすがに2体のゾンビは動かないが、万が一ということだってあるからね。

 それに部屋の中で一服できるなら、特に問題は無い。


「サミー……。貴方の疑問が少しは解けたかもよ。とはいえ、こんな機材ではねぇ。出来る事をして検証しましょう」


「それで良いと思いますが、顕微鏡写真は上手く撮れました?」


「バッチリよ。少しは説得力を持たせることができそうだわ。それに生物学者も何人化は生存しているでしょうから、彼らの見解も聞きたいところではあるわね。論文を書こうかしら? サミーの名も連名にするから、上手く認められたなら名誉学士ぐらいは貰えるかもね……」


 結構機嫌が良さそうだ。

 となれば、いろいろと分かったということになるのかな。

 30分ほど掛けて顕微鏡撮影を終えると、機材を片付け始めた。

 

 レディさんと顔を見合わせて溜息を漏らす。

 オリーさん達が部屋を出たところで、俺達もこの家を後にする。

 扉を閉める前に、2体のゾンビに軽く手を合わせて頭を下げた。


「とりあえずはコーヒーだ!」


 そう言って、エディがコーヒーポットを持って皆のカップにコーヒーを注いでいる。

 ナップザックからシェラカップを取り出して、半分ほど注いで貰いスティック砂糖を1本入れてカップを揺らしながら溶かしていく。

 一口飲んでみると結構苦いんだよなぁ。

 お湯を沸かしたわけでは無さそうだから、ここは我慢して飲むことにしよう。


「何が分かったかぐらいは教えてくれても良さそうに思えるのだが?」


 レディさんがオリーさんに詰め寄っている。

 そんなレディさんに笑みを浮かべて、オリーさんが小さく頷いた。


「そうね。色々と分かったんだけど一番大きなことは、ゾンビはすでに人ではないという事かしら。見た目が人間だから色々と問題もあったんじゃないかな? だけど、ゾンビは人では無いものが人間の殻を纏っているという感じなの」


「他の生物に乗っ取られたという事か?」


 レディさんの要約に、オリーさんがまじめな顔になって大きく頷いた。

 エディが俺達を少し離れた場所に連れて行く。


「サミーはある程度分かっていたんだろう? どういうことなんだ?」


「俺だってわからないことはたくさんあるよ。でも死体が何で動くんだろうという話をオリーさんとしたことがあるんだ。その時に気になったのは頭の中の例の粘液だよ……」


 あの粘液自体がゾンビの正体なんじゃないかな?

 粘液が流れ出た後は、ゾンビは動かなくなるぐらいだからね。

 そうなると、その粘液の正体が気になったので調べてみることにしたと2人に伝えた。


「さっきのオリーさんの話だと、それが分かったということなんだろうな。でもそれって何なんだ?」


「たぶん、良く知られた生物だったんじゃないかな。だが、それがなぜ人間を襲ってゾンビ化させるかまでは分からないと思うよ」


 それが簡単に分かるなら、対策も容易だろう。

 よく知られた生物が何故そのような変異を起こしたか。その変異はこれ以上変異を起こさないのか……。

 少し分かると、それ以上の疑問が浮かんでくる。

 まぁ俺達に出来ることは、これ以上は無いだろう。その情報を、偉い人達に伝えて色々と役立てて貰うことになりそうだな。


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