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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-069 直ぐに見つけてくれた


「今日は5人で行くんでしょう? 私達も手伝おうか?」


 俺達が早めの朝食を取っていると、パットがやって来た。

 本人達も行きたがっているのは間違いないし、俺達も連れて行ってはあげたいところなんだけど……。


「せっかくの申し出だ。15分で準備してここに集合してくれ。遅ければ置いて行くぞ」


 レディさんの言葉に、パットが笑みを浮かべてすぐさまその場を走り去った。

 多分準備は出来てるんじゃないかな。


「大丈夫なのか?」


「彼らがゾンビを押さえつけている間、私と一緒に周辺監視をして貰う。海兵隊から1班出して貰うつもりだったが、2人ほどで済みそうだ」


「目は多いほど良いからな。了解だ。上手く使ってやってくれ」


 傍でコーヒーを飲んでいたウイル小父さんも納得してくれたようだ。

 確かに俺達はゾンビを押えているだけでやっとだからね。頭部を破壊するまでの数分間はよそ見なんてしている状況ではない。


「やって来たぞ。俺達は拳銃だけなんだけど、パット達は何時の間にかM4カービンを揃えてるんだよなぁ」


「そう妬まない……。俺達だってM16を使う時だってあるだろう? もっとも猟銃の方が多いけどなぁ」


「だけど猟銃の方が、命中するんだよね。やはりバレルの長さかなぁ?」


 俺達の会話を呆れた表情で聞いていたライルお爺さんが、その理由を教えてくれた。

 どうやら、そもそもの値段が違うらしい。

 軍の使うM16は官給品だからね。それなりの仕様を満足していれば問題ないらしいが、猟銃ともなると所有者の好きなだけ高級品にカスタマイズできるらしい。


「エディやニックが使っとるライフルは、デンバーの銃砲店で店の棚に飾ることはない。店の奥の金庫の中にしっかりと補完する代物じゃよ。少なくとも2万ドルを下回ることは無いぞ」


「あれでですか! ……やはりバレルの彫刻で値が上がっていると?」


「そんなもんは別払いじゃ。銃身加工の精度じゃよ。『ワン・オブ・ワン・サウザンド』聞いたことぐらいはあるじゃろう。グランドレイクの小さな町で4丁見つかるとはワシも思わんかったぞ」


 量産品の中に、たまに良い品ができるのはガウス分布でも分かることだ。

 それが4丁ねぇ。しかもその内に2丁をエディとニックが使っていたとは……。


「俺はライルお爺さんのイエローボーイが一番だと思いますよ」


「そうか? あれもワン・オブ・ワン・サウザンドじゃ。やはり分かるかのう」


「サミーのイエローボーイは爺さんの手作りと聞いたのだが?」


「さすがに銃身はワシには出来んわい。機構部分と全体の揃えがワシの仕事の範囲じゃな。あれもオークションに出したなら、それなりの値段になるじゃろうよ。だがそれでは銃は死んでしまう。サミーが十分に使ってくれればそれで満足じゃよ」


 レディさんも欲しいのかな? 真剣な表情でお爺さんの話を聞いているんだよね。

 だけど軍内部で、部隊の装備品と異なる銃を持つことが可能なんだろうか?

 俺達の銃がそんな品だったとはねぇ……。道理で狙い通りに着弾するはずだ。


 食事を終えてコーヒーを飲んでいると、パット達が俺達と同じような様相でリビングに現れた。やはり寒さ対策に革ジャンだな。七海さんは腿まで隠れるようなモカシンの上着を着ている。ベルトに下げているのは俺と同じワルサーだけど、背負っているのはM4カービンなんだよね。


「準備が出来たようだな。オリーの方も大丈夫なんだろう?」


「全てトランクの中よ。護身用にベレッタは持っているわ。今回は騎士が3人いるでしょう?」


「確かに……」


 レディさんと2人で顔を見合わせて笑っている。騎士って俺達の事だろうけど、そうなると責任重大なんだよねぇ。


 コーヒーを飲み終えた時刻は7時20分過ぎ。出発には丁度いい時間だ。

 レディさんの運転するピックアップトラックに女性達が乗り込み、俺達は荷台に荷物と一緒に乗り込む。


「無理しないで頑張るんだぞ!」


「夕暮れ前には帰ります!」


 激励してくれたウイル小父さんにエディが大声で応えてくれた。

 俺とニックも一緒に頷いて手を振りながら広場を後にする。


「ゾンビ1体相手だからなぁ。それほど心配しないでほしいところだけど、俺達だって馬鹿じゃないからね」


「そうそう。たとえ相手が1体であっても全力で挑む! 油断するのが一番危険だ。やはり俺達は良い友人同士だと思うよ」


ニックの呟きに答えたら、エディが俺達の肩を叩いて笑みを浮かべてくれた。


「そうだな。ニックとは昔からだけど、この頃はサミーとも10年来の友達だと思えるんだ。と言うわけで、荷台は俺達だけだ」


 互いにポケットからタバコを取り出してジッポーで火を点ける。

 レディさんの運転は、けっこう上手いんだよなぁ。あまり荷台を揺らさないし、左右のぶれも無い。道路を滑るように動かしているんだけど、何かコツがあるんだろうか?

 遠くに見える峰々の木々の紅葉は終わったようだ。今月末辺りから雪を頂くんじゃないかな。トラックの荷台もだいぶ寒くなってきたからね。


 グランビイの駅に到着すると、機関車がトロッコを4両繋いで待っていた。

 1個分隊の海兵隊員達が、荷物をつみこんでいる。


「ここで待っててくれないか。挨拶してくる」


 一応連絡は入れてあるし了解も得ているんだが、やはり挨拶は必要なんだろう。

 代表してレディさんがエディを連れて出掛けて行った。

 俺達は荷物を纏め、トラックを駅の駐車場に移動しておく。

 今の内に、トイレにも行っておかないとね。最初に俺達が出掛けて、戻ったところでパット達が出掛けて行く。


「おや? お嬢さんたちは」


「ちょっと、出掛けてます。直ぐに出発でしょうから、向こうで時間を取りたくなりませんからね」


「そういう事か。最後尾のトロッコが私達の指定席になる。グラハム殿から2人出して貰ったぞ。女性隊員だが、海兵隊だ。安心して欲しい」


 パット達が戻ってきたところで、自己紹介してくれた。

 どちらもオリーさんと同年代に見えるな。キツイ顔立ちの美人のお姉さんがマリアンさんで、小柄なお姉さんがジェリーさんだ。

 M4カービンを背負っているから安心して背中を任せられそうだ。


「レディ、彼らはライフルを持ってないんだけど?」


「ああ、彼らは白兵戦担当だ。そこにホッケーのスティックがあるだろう? それが彼らの本日御用達の武器になる。今までにだいぶその武器でゾンビを倒しているようだ。見学するのも良いが、マリアン達に頼みたいのは、その時の周囲の監視になる。サプレッサーは用意しているんだろう?」


「もちろん。……へぇ、結構使えるのね」


「ああ、かなり使える。彼らが町のゾンビの掃討方法を考えてくれたんだからな。それに、現在進行中のドローンでの爆弾輸送もそうだ。その結果を見てその先を考えつくんだから、

グラハム殿も一目置いているよ。『私の副官に欲しい』とまで言っていたぞ」


 感心した眼差しで俺達を見てくれるんだけど、何となく肉食獣が得物を見る目に見えてしまう。


「レディは見たことがあるのか?」


「バートが空を舞ったのを見たことがある。今回は止めといてくれ。さっさと出掛けて何体かゾンビを倒せば任務終了だ」


「了解。確かに弟よりも体格は良さそうだ。だが、あっちの日本人にも白兵戦をやらせるのか?」


 やはり見劣りする体格だからなぁ。もっともエディが立派過ぎるのもあるんだけどね。


「彼が本日の主役だ。監視をしながら見てると面白いぞ」


「危険だと判断したなら、援護射撃ぐらいはするさ。レディのお気に入りなんだろう?」


 互いに笑っているけど、レディさんの方は呆れて笑っている感じがするな。

 そんな俺達に出発の連絡が入る。

 急いでトロッコの枠を握ったところで、ガタン! とトロッコが動き出した。


 トラックよりスピードは出ていないけど、周りが簡単な柵だからなぁ。

 隙間風と言うより風そのものをまともに受ける感じだ。

 厚着をして来て正解だった。

 最後尾のトロッコの後ろに座り込んで、3人揃って一服を楽しむ。

 女性達は直ぐにガールズトークを、コーヒーを飲みながら始めたようだ。

 たまにこちらに数人が顔を向けるんだよなぁ。

 俺達の話をしてるのかな? 変な話でないことを祈るだけだ。


「たまに、レディさんがこっちを見るんだけど……」


「オリーさんや、海兵隊の2人もだよなぁ。俺達ってそんなに面白いことをしてきたかな?」


「いや、至って普通だと思うけどなぁ。だけどこんな状況下だから、外に話題がないんじゃないか?」


 こっちはこっちで、そんな彼女達の仕草について話が繋がっていく。

 退屈凌ぎには丁度良いんだろうけど、俺達の士気を下げるような話だと困るな。


9時過ぎにクレムリングに到着する。

 駅は無いんだけど、南北に走る国道9号線の陸橋を潜ったところで、トロッコが停まった。

 南からやって来るゾンビに備えた防衛線がここにあるからだろう。


「さぁ降りた、降りた。ここからは歩くことになるぞ」


 レディさんの指示で俺達はトロッコを降りて、坂を上って国道に出る。

 少し南に、コンクリートと鉄条網の阻止線が作られている。門は大型トラックの荷台を利用しているみたいだな。片側を鉄板で補強しているのかな?

 これも廃物利用に1つになるのだろう。

 キャンピングトレーラーが2台、丈夫そうな丸太小屋に収まっている。薪ストーブの煙突が出ているからすでに厳冬期に備えて準備が進められているようだ。

 一緒にトロッコに乗ってきた兵士達と別れて、俺達は国道を歩いてクレムリングの町へと進んでいく。


『……なるほど、それは助かる。そのままにしておいてくれるとありがたい』


 レディさんがトランシーバーで掃討中の部隊と連絡を取っている。

 通信を終えたレディさんが、俺達に振り返ると笑みを浮かべた。


「案外早く作業が終わるかもしれん。中で物音がする家を見付けたらしい。迎えを出すと言っていたから、このまま進むぞ」


「良かったですね。でも複数体を調べたいので、その旨伝えてくれると助かります」


「了解だ。見つけたなら知らせるように行っておこう」


 国道が西に折れている。

 ずっと西に向かって射るけど、これは北側に飛行場があるからだろう。

 あれか? こっちに向かって手を振っている。


「どうやら、案内人が彼らしい。右手の建物は皆小さいが、この中の1つと言うことなんだろう」


「1戸ずつ調べないといけませんからね。面倒ですが、後を考えると必要な事です」


 おかげでこっちは助かる話だ。

 場合によっては、それを俺達で行うことになるからなぁ。

 案内人はまだ若い兵士だ。俺達より少し上に見える。配属されて間がない内に事故に遭遇したのかもしれないな。


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