表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
67/694

H-067 のんびりと御留守番


 昼食は簡単にレーションで済まし、午後はウイル小父さん達からの通信を待ちながらリビングで過ごす。

 そろそろ使おうと、今朝早くにリビング中央のテーブルを撤去したから焚火台が姿を現した。

 午前中に作った焚き木は乾燥がまだだから、昨年切り出した薪を運んで小さな焚火を作る。

 薪ストーブだけで十分だけど、焚火台があるとや砂利使いたくなるんだよなぁ。

 少し多めに薪を運んだし、薪ストーブで使う薪の3倍ほどの長さの焚き木も運んでおいたから、皆が帰ってきたらすぐに焚火を大きくするんじゃないかな。


「まだ9月なのよ。少し早い気もするけど……」


 マグカップに入ったコーヒーを渡してくれたオリーさんが、小さな声で呟きながら俺の隣に腰を下ろす。

 一口飲んでみると、コーヒーではなくココアだった。少し色が変わっているなぁと思ってはいたんだけどね。


「そこに焚火台があるからですよ。人は火を使える唯一の動物なんですから」


「人間性を確認したという事ね。教授に合わせてあげたいけど、あの騒ぎでどうなったのかしら……。この国で生き残った人は1千万人にも満たないわ」


 パンデミックは過去の歴史の中で何回か起こっている。

 特に14世紀に起こったペストは、それまでの社会体制まで変えるほどだったらしい。

 人口の半分ほどが亡くなったらしいからなぁ。

 歴史の授業でそんな話を聞いても、あまり理解することができなかった。

 だけど、今世界に起こっているのはそれよりも酷い状況だ。

 社会体制が変わるどころか、文化の衰退も起こるんじゃないかな。


「それでも、俺達は生きて行かねばなりません。そうでないと、ゾンビになった人達が浮かばれませんよ」


「そうね、それを常に心に刻まないといけないでしょうね。でも、今ここにいるのは、私と貴方だけよ」


 確かに誰もいないけど、後ろから取り出したのはブランケットじゃないか。

 焚火の直ぐ傍で体を合わせるのは、ちょっと危険じゃないのかな?

 そんな思いを浮かべながら、オリーさんとブランケットに包まった……。

                ・

                ・

                ・

 2人でシャワーを浴び終えたところで、着替えを済ます。

 結構冷えるようになってきたから、Gジャンは来春まで戸棚の中だ。代わりにバックスキンの上着を取り出して羽織ることにした。

 たっぷりした作りだから、下に薄手のダウンを着ることもできる。キャシーお婆さんが、ボタンだけの前綴じを、ジャンパーのように着られるようにファスナーを付けてくれたから、ボタンだけの時よりも暖かく着ることができる。

 とはいえ、山小屋の中ならファスナーはいらないだろうな。

 腰にガンベルトを着けると様になるんだよね。

 夜遅くに皆を迎えに行くときも、これで十分だろう。


 薪スト―ブで沸かしたお湯を使ってインスタントのコーヒーを淹れる。

 焚火のチロチロと燃える炎を眺めながら一服していると、オリーさんが現れた。やはり夜出掛ける事を考えていたようで、手にはスタジャンを抱えている。裏地がキルトらしいから暖かいんだろうな。

 俺と同じように、コーヒーカップを持って隣のクッションに腰を下ろした。


「サミーがその格好で焚火を見つめていると、ネイティブの戦士に見えるわよ。今度、パイプを探してみようかしら?」


「たぶん遠い先祖は同じなんでしょうね。俺からすればネイティブの人達はもっと彫が深く思うんですが」


「世代が替わるにつれて環境に体が合っていくんでしょうね。生物学では誰もが一度は習うダーウインの法則よ」


「環境が人人間を変えていくということですか。それは動物全般に言えることなんでしょうけど、そうなると環境がDNAを変える要素と言うことになりますよ」


「私達の体を作るDNA。それが生物の全てを解き明かしてくれるのは確かなんでしょうけど、DNAの歴史は今でも謎のまま。それを追及している学者も多いと聞いたわ。でも環境条件でDNA変化を捉えるというのは現在の科学では不可能でしょうね。それを確かめるにはかなりの年月が掛かりそうだもの」


 んっ! 今気になることを聞いた気がするぞ。

 DNAが生物に全てを形作るということは、ゾンビに対しても言えるのだろうか?


「ゾンビがどうして活動しているのか全く分かりませんけど、ゾンビに対してもDNAは作用するはずですよね?」


「必ずしも、と言うことになりそうね。DNAがその活動をするのは細胞分裂を起こす時なの。ゾンビはすでに死んでいるんだから新たな細胞を作るようなことはしないはずよ。それを考えると、このままジッとして100年近く過ごせればゾンビは体を維持できなくなると思うんだけど……」


 さすがに100年も、この場で生活するのは無理がある。

 食料がその前に尽きてしまうだろう。

 まだ既存の資材を使える内に、生き残った人間が暮らせる状況を作らねばならない。

 生活圏が確立できたなら、その中でゾンビが滅びるのを待つこともできそうだ。


「傷を治すことも出来ずにそのままなのは、正しく細胞活動が停止しているんでしょうね。となると、なぜ動いているのかと考えてしまいます」


「全く謎ばかりだわ。そもそも脳が無いのよ。頭部を破壊して出てくるのは、ドロリとした粘液でしょう? 脳が腐ったとしてもあんな状態にはならないわ。まったく別の何かと言うことなんでしょうけど……」


「でも、脳と同じ重要な何かだと思いますよ。今のところゾンビを倒す方法は頭部の破壊ですからね」


「それなのよねぇ……。でも粘液でしょう? 生体活動をするならどうしても形を作り事になると思うんだけど」


 液状の生命は存在しないという事かな? だけど細菌やアメーバみたいなものが、あのドロリとした粘液の中にいるかもしれない。

 顕微鏡を診療所から運んで来たはずだから、今度倒した時にサンプルを持ち帰っても良いかもしれない。観察を終えたら焼却すれば済むことだ。


「ゾンビの研究は、どこかでやっているんでしょうか?」


「被害が50%程度なら、研究所の幾つかは機能してると思うけど、さすがに被害が95%を越えるような事態だから……」


 先ずはこの状況下で生き残る事。それが全てに優先するということになるんだろう。

 その為に、海兵隊の人達やウイル小父さんとその仲間達も頑張っているんだからね。


 言葉が続かなくなると、何時の間にか俺の肩に持たれるようにしてオリーさんが寝息を立てている。

 何でもないように立ち振る舞っているけど、心労が続いているのかな?

 ブランケットでオリーさんを包んで、焚火の中に倒れないようにしたところでタバコに火を点けた。

 今頃、皆は何をしてるんだろうなぁ。

 少しでもデンバー中心部に近づく様に、あの踏切のトラックを撤去してるんだろうか。それとも、踏切近くで爆弾を使ってあのゾンビの群れを散らしているんだろうか。


 携帯灰皿にタバコの吸い殻を入れ終えた時だった。

 トランシーバーからレディさんの声が聞こえてきた。

 直ぐに返事をしたんだけど、どうやらあの踏切を越えることができたらしい。

 

『詳しい話は帰ってから教えてあげよう。現在は次の踏切に向かっている。帰りは遅くなるかもしれない』


『了解です。無理をしないようにとウイル小父さんに伝えてください。それと、放射線量についても注意してくださいよ』


『了解だ。次は16時頃を予定している。以上』


 順調そのものだな。あのトラックを、皆で押して踏切から出したに違いない。となると、周辺のゾンビは爆弾で上手く始末出来たんだろうな。

 起こさないようにオリーさんを横にしたところで、コーヒーを作った。ポットのお湯の量が少なくなっていたから、台所で水を注ぎ足して薪ストーブの上に乗せておく。

 薪もだいぶ減ったから、2本ほど追加しておいた。

 焚火の方は太い丸太だったから、まだ次足さずに済みそうだ。


 それにしても、どこまで行けるんだろう?

 さすがに駅にまでは行きつけないだろうけど、かなり接近できることは確かだ。

 デンバーはロッキー山脈越えの起点でもあるし、南北それに東へと鉄道が繋がるハブでもある。

 出来れば空港に伸びる線路を確保したいところだけどね。場合によっては俺達で破壊された線路の修復や、ポイントの切り替えを行わなくてはならないのかもしれない。

 まぁ、当分先の話になるんだろうけど、サンフランシスコに停泊している船で暮らしている海兵隊の人達が動く為にはグランドジャンクション、もしくはデンバーの空港を確保しないといけないだろう。町の規模からいえばグランドジャンクションの方が遥かに小さい町だけど、空港までは道路で行くほかに手が無いからなぁ。デンバーは鉄道がとおっていることが魅力なんだけど、線路の状況と線路近くに現れるゾンビ次第で大きく脅威が変わって来るからなぁ。


 オリーさんはまだ寝ているんだよね。小さな寝息を立てながら穏やかな表情で寝ている。

 たまにむにゃむにゃと言い出すから、友人達と遊んでいる夢でも見ているのかな?

 起こさないように、静かに一服していると、突然トランシーバーからレディさんの声が聞こえてきた。

 連絡は16時だったはずだ。まだ15時を過ぎたばかりだから何かあったということなんだろう。

 急いでトランシーバーのマイクを掴むと、応答を送った。


『驚かせてしまったか? こっちも驚いているところだ。現在西に向かってトロッコは動いているが、ゾンビの群れが津波のように追いかけてくる。エディに確認したところでは時速30km程なのだが、線路周辺から次々とゾンビが現れている。さすがに、どこかで諦めてくれるだろうが、そうでない場合はトンネルの出口で食い止めねばならん。本部には伝えてあるから心配はいらないぞ。以上だ』


『何か変わったことをしませんでしたか?』


『彼女達の話からだと、前と同じと言うことだ。強いて言うなら線路近くで目覚まし時計を用いたことだが、それなら目覚まし時計に集まるだけの話だ』


『了解しました。速度を落として迎撃しようなどと考えないでくださいよ。無理はしないで下さい。生き残った俺達がこの国を基に戻さないといけないんですからね。また連らくしてください。以上』


 ゾンビが走って来るとは言っていなかったから、トロッコ距離は少しずつ離れているのだろう。そうでもないと、俺達に連絡をするとも思えないからな。

 だけど……、気になる話だ。

 人間なら、連絡を取り合って線路近くに押し掛ける事もできるだろうけど、ゾンビは会話をしないからなぁ。

 互いに意思を通じ合うことができるんだろうか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ