其之壱 遭逢
今回、初めて連載作品を投稿させて頂きます。
と言っても、短編では長過ぎるから5話に分けた短期連載ですけど、気楽に読んでもらえればと思いますので宜しくお願いします。
昔々、ある山の麓にお爺さんとお婆さんが住んでいた。
お爺さんは山へシバきに、お婆さんは川へ洗髪に出掛けた。
お婆さんが洗髪をし終わって高速ヘドバンで水を払ってタオルで髪を拭いていたら、大きな桃が流れて来るのが見えた。
「何て言うバカデカい桃だ!」
最近果物に飢えていたお婆さんは目の色を変えて、全長1メートルはある桃を川から掬い上げて、50メートル先の家の方へ砲丸投げの如く投げ飛ばした。
桃は家の屋根を軽々飛び越えて裏に落ちた。
「ありゃま! 家の前で落とすつもりが、張り切って飛ばし過ぎたわ!」
「いてててて。デカい鳥にでも捕まったのかな?」
お婆さんがターボダッシュで桃に近寄ると、桃が真っ二つに横に割れて、中から白い胴着を着た小さな可愛らしい男の子が出て来た。
お婆さんはその光景を見て、驚く所か興奮した。
「これはきっと神様仏様が、子供を作れなかった私達夫婦に子供を授けてくれたに違いない! 名前は…、桃から産まれた子供だから桃子にしよう!」
「僕、女の子じゃないよ! 失礼しちゃうな!」
「えっ、男の子なのかい!? 余りに可愛いから、女の子かと思ったよ!」
「それに僕には桃太坊って言う、爺ちゃんがくれた立派な名前だってある訳だし!」
「泥田坊?」
「桃太坊だよ! それより長旅で食料が尽きたから、お腹が空いたわ」
「美味い物たらふく食わせてあげるから、うちへおいで」
「ありがとうございます、戴きます」
桃太坊は10個用意されたぼた餅を、あっと言う間に全て平らげた。
「何とまあ、凄い食欲だこと! よっぽど、お腹が空いてたんだね」
「ご馳走様でした。こんなに美味しい物を食べたのは生まれて初めてです。これは何と言う食べ物なのでしょうか?」
「ぼた餅だよ。こんな物で良ければ、いくらでもこしらえてやるよ」
「ありがとうございます」
桃太坊は軽くお辞儀をしてお礼を言った。
「礼儀正しい子だね。いくつなんだい?」
「9歳です」
「9歳! まだこんな小さな子供が桃の中に押し込まれて川に流されてたなんて、まさか捨てられたのかい!?」
「あれは我が王国の筏です」
「桃の筏!? て事は太桃王国かい?」
「はい」
「何だって太桃王国の子供が…。あそこは、穏やかで平和な国だって聞いてたけどね」
「実は…」
「只今帰ったー!」
と話を遮るかのように、お爺さんが帰って来た。
「今日はスギの木をシバいて来たわ! 何だか、将来の敵になるような気がしてのう」
「今大事な話してんだから、あっちへお行き!」
「何じゃと! あれ、その子供は?」
「突然お邪魔して申し訳ありません。僕は太桃王国から来た王子、桃太坊と申します」
桃太坊はお爺さんに会釈した。
「王子!? 通りで品を感じる訳だ! でも、何だって王子が?」
「我が王国は、1週間程前にたった1匹の鬼によって滅ぼされたので…」
「鬼じゃと! 鬼は昔、仲間と共に鬼ヶ島に乗り込んで全滅させたから居る筈が…。まさか、赤子を残しておったのか!?」
「全滅させたんですか! て事は、お爺さんが聖光剣を持ってるんですか!?」
「ああ、儂が持っとるよ。こう見えても儂は、昔剣士じゃったからな」
「あなたが伝説の剣士だったんですね!」
「いやいや、儂なんてただの剣士の端くれで、伝説なのは聖光剣の方じゃよ。宿代わりに寄った洞窟でたまたま見付けたから、運が良かっただけじゃからな」
「それで、その聖光剣はどこにあるんですか?」
「外にあるよ。儂がいつも木こりに使ってるからな」
「木こりにですか!? 刃は大丈夫なんですか!?」
「刃で直接斬ると言うより、刃から放出される光の熱で斬るから刃こぼれなどしないし、軽いから老いぼれの儂でも気軽に使えて重宝しとるから、長年愛用しとるからな」
「少しの間、僕に貸してもらえませんか?」
「いくら気軽に使えると言っても、子供が使うには危ない代物じゃからの」
「剣術を習ってましたので、大丈夫だと思います」
「よし。この剣を持つに相応しいかどうか、儂がお前さんの腕を見てやろう」
「宜しくお願いします」
「何だか、凄い展開になって来たな。爺さんと子供の殺陣が見れるとか、こんなに胸がドキドキするのは何十年振りだわい!」
読んでみて如何だったでしょうか?
拙い文章力だから分かり難かったとは思いますが、ラジオドラマを聴いてるような感覚で楽しんでもらえたら幸いです。