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ロイスター帝国大学の産業開発会議と伯爵様 その② 切削加工技術

中世の技術で切削加工を実現するにはどうするか

柔らかい材料を、発熱チッピングしない条件で

工具で加工するなら鋼鉄があれば対応できます。

しかし、近代的な旋盤やフライス盤だと条件が変わってきます。

ましてや金属加工になると工夫が必要です。

寸法公差が出ないと火薬のガス漏れとか芯ズレで

大砲など大きな影響が出たり出なかったりしていました。

当時の目的は大砲が主な切削加工技術の要求でした。

次は切削加工技術の話にする。

切削加工技術はこの時代の技術レベルからするととても難しいのだ。

何故かと言うと刃物の強度の問題がある。

実際に削ってみたら分かるが、木材みたいな柔らかい材料でも

ある程度しっかりした材料の鋼鉄が必要になる。

この材料力学的な観念は初心者から見ると非常に見落としがちである。


「ナイフやノミなどの伝統的な工具では

 加工精度と生産性がかなり落ちるな。」

「大量生産を考えるなら旋盤やフライス盤は必要でしょうな。」

「なんだその言葉は。

 また良く分からない事を・・・」

「硬いものは削れませんよね。

 ましてや高速回転を考えますと。

 鋼鉄ですら発熱に弱いので普通にチッピングしますし。」


総金属製の旋盤は1751年にジャック・ド・ヴォーカンソンにより発明された。

普及が始まったのは実に18世紀後半である。

切削技術がマトモに使える様になったのは実に19世紀後半である。

しかし第2次世界大戦の日本ですら、シビアな精度で戦闘機の

量産加工技術が確立出来なかった事実も忘れてはならない。

材料の開発と共に硬い材料が少しづつ削れる様になったのである。

たとえ低炭素材の鋼鉄でも旋盤に使うは柔らかくて耐熱性が低いので

ロックウェル硬さで言う20〜40前後の材料は

JISで言う炭素工具鋼鋼材:SK材で発熱しない工具しか使えない。

例えばヤスリ、カミソリ、刃物、錐、斧、ゲージ、ぜんまい、ペン先、

チゼル、刻印、丸のこ等によく使われるらしい。

ロックウェル硬さが60前後の高速度工具鋼鋼材:SKH材が欲しいが

これが単なる低炭素の鋼鉄ではなく、クロムやタングステンを

混合させた複合材である。材料技術が必要になる。


何故、材料開発を先行せざるを得ないか

チッピングしたり折れるからである。

刃物が折れると加工する製品が凹凸だらけになる。

しかしライフリングを削るにはせめて柔らかい青銅が削れる旋盤は欲しい。

銃器の射程を伸ばすにはライフリング加工技術は必要不可欠である。

こういう材料技術や加工技術はまず大砲製造の為に要求される需要があった。

鋳型成形だけでは寸法精度は出ない。

火薬のガス漏れが発生すると飛距離や精度に影響が出る。


「まあ刃物だけじゃなくて、検査工具も必要なんですけどね。

 ノギスとか欲しい。そのうち作ろうか。」


測定工具や標準器も作る必要がある。

ノギスなんかは意外と難しそう。

ノギスもちゃんとしっかりした精度で作らないと

安物中国製みたいにガタガタになる。

計測精度に誤差が大きすぎると信頼性がないしイライラする。

仕事で使っている人は意外と日本製が多い。

ゆっくり考えよう。


木材加工でまず考えて、出来る事を実現していこうかと思う。


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