第一次囲い込み アナトハイム伯爵領の討伐戦②
敵の傭兵に対して陣形を組んで戦闘になります。
神の使い双子エルフが大活躍します。
初陣としては勝利になりますが、
相手があくまで油断した傭兵という前提。
先進国の軍隊を相手にするには課題を自覚した
エリオス君と教授でした。
「「「ファイヤーボール」」」」
魔法使い達が一斉に魔法を放つ。
敵の横隊を数名づつ吹き飛ばすが致命打には至らない。
魔法力に制限があるので、連発する数に限りがあるのだ。
戦争で歩兵と騎兵が無くならない一因でもある。
「エリオス様に我らの弓の力を。」
双子エルフが弓を構える。
こちらからはまだ300mも距離がある。
双子が弓を放つと、まるで風が矢を運ぶかの如く
遠距離まで飛んでいき傭兵を仕留める。
「全く恐ろしいな、エルフの弓兵は。
この距離すら射抜くか。
俺はエルフとは戦いたくないぞ。」
「ふふふ、殿下。
我らには風が見えるのです。
風の精霊は我らが友でございます。
まだ我らの力はこんなものではありません。」
「恐ろしい。
お、指揮官らしき男を仕留めたな。
敵の陣形が乱れた。」
指揮官らしき人物を遠距離から難なく仕留めていく。
恐ろしきハンターである。
「敵が近づいてきましたね。
シルヴィ、いきますわよ。」
「ティアナ、合体魔法だな。よし分かった。」
双子が並んで魔法を唱え始める。
同時に撃つらしい。
「「ファイヤーストーム」」
双子が同時に魔法を放つと目の前の密集陣形の100人ばかりが
炎の嵐で吹き飛ばされる。
トーマスさんも教授も他の皆もあんぐりして口が塞がらない。
「ヤバイこの双子エルフ。
実はとてつもなく恐ろしい存在だ。」
「遠距離から指揮官を一方的に狙い撃ち出来る目と弓と
中隊相当を一撃で吹き飛ばす魔法力ですか・・・。
敵は密集しているから余計にダメージが大きい。」
「教授、早く大砲を研究しましょう。
近距離でこんなのと撃ち合ったら命がいくつあっても足りません。」
「う、うむ。魔王軍はこのレベルが沢山いるのか?
今の我が軍では対抗出来ないな。」
双子エルフの破壊力に一同は恐れをなしてしまう。
やはり軍事レベルの強化は必須であろう。
今のレベルだと魔王軍に一蹴されてしまうだろう。
やはりこの国の軍事力には限界がある。
そして、我々もマスケット銃と弓を構える。
「放てー。」
敵の横隊を仕留めていく。
マスケット銃は威力が高いので当たれば倒せるが、
射程と連射速度が課題であろう。
ライフリングと薬莢が必要である。
ここは改良の余地があるからレポートに書いておくか。
戦況としては、
トーマス殿下率いる右翼に対する敵は相当の被害が出ているが
伯爵様の率いる左翼に対する敵はまだ持ちこたえている。
このまま乱戦になると数の力で押し切られる。
「そろそろ時間か。
十分に敵を引き付けた。頃合いだな。
レイモンド大佐に突撃を指示しろ。」
「はっ、承知しました。伯爵様。」
上空高く信号弾を放つと前方から槍騎兵が突撃してくる。
国境守備隊のレイモンド大佐の騎兵300人である。
敵左翼後背から槍騎兵突撃を受けてパイク兵は吹き飛ばされて大混乱する。
パイク兵は側面や後方からの攻撃には密集しているため反転できず弱い。
傭兵の逃亡防止が目的だが、それが弱点でもある。
実際この槍騎兵突撃が成功した段階でこの戦闘の勝敗はついた。
この時代の傭兵は金で雇われている以上、形成が不利になると直ぐ逃亡する。
逃亡兵が出るとパイク兵としての陣形が崩れる。
つまり槍兵としての価値が失われ、騎兵に対抗できなくなるのである。
「敵が逃げ出したぞ。
全員、騎乗して追撃にかかれ。
指揮官を拿捕するのだ。」
伯爵様から総攻撃の指示が出る。
前後から包囲する形になった。
事実上の半包囲殲滅戦である。
「さすがは伯爵だな。出来すぎだ。
我々も遅れるな。」
トーマス殿下が激を飛ばして指示する。
「エリオス様と教授はこの場で待機していて下さい。
我々は追撃を開始します。」
双子エルフが騎乗して弓で応戦する。
騎乗してアウトレンジから弓が放たれる。
逃げ遅れた傭兵が次々と倒される。
こうしてアナトハイム伯爵領の討伐戦は大勝利のうちに終わった。
しかし研究者でもある僕らから見たら、
とても課題の多い戦闘だったことは否定できない。




