第一次囲い込み 伯爵家にて
第一次囲い込みの影響で史実では農民反乱が発生しています。
事前に情報を掴んだ伯爵家では、農民反乱が起こる前に
地主と交渉と鎮圧に向かいます。
いつものメンバーと共にキルテル村に向かいます。
伯爵領での噂は直ぐに広がって、ロイスター帝国内に伝わる。
農地の囲い込みである。
羊の牧場にするために農民を追い出している噂。
当然農民は生活の手段を断たれてしまう。
「・・・マズイな。
土地と財産を失った農民が暴動を起こすぞ」
エリオス君はボッシュさんからの手紙を読みながら呟く。
事実、イギリスでは1549年のケットの反乱をはじめとして
1607年のミッドランド反乱、ニュートンの反乱など
多数の暴動事件があり、被害者が出ている。
「エリオス君。アナトハイム伯爵様からの至急のお呼びです」
「承知しました。直ちに館に向かいます」
「私もついて行く」
エリオス君とニーナさんが伯爵様の館に急行する。
伯爵家には既に沢山の方々が集まっていた。
協議中であった。
「伯爵様、ご隠居様。
エリオスでございます」
「おお、来てくれたか。一大事だ」
室内には伯爵様とご隠居様、商業ギルド長さん、
トーマスさんに教授まで。
「私は軍事学の教授のオズワルド・チャールズ、フューゲル男爵です。
伯爵様にはお初にお目にかかります」
「教授も来てくれたか。心強い」
「勿体無いお言葉」
教授と伯爵様が声を交わす。
と、視点がこちらに集まる。
ご隠居様から、
「所でエリオス君、この事態をどう見るか?」
「はっ、ご隠居様。
土地と財産を奪われた農民達は、暴動を起こすと思います」
「それはマズイな。我が領内で暴動など」
「ただちに非合法の囲い込みを禁止する通達をお願いします。
農民には合法的な交渉と補償を」
「うむ、直ちに。領内に条例を出せ。
手遅れにならなければ良いが」
合法的に交渉して土地を買収するならまだ良いが、
非合法手段で農民を追い払うなら強盗と同じである。
「抵抗するなら戦闘は否定できない、と」
「・・・流血事態は避けたい所です」
「まずは少数精鋭で軍を差し向けるか。
剣術と魔法を使える者をただちに集めろ。デュラン」
「承知しました」
執事のデュランさんが伯爵様の命令に答える。
「エリオス、卿も来てくれるな?内政官として。非常事態だ」
「承知しました」
伯爵様が直接向かわれるなら、当然内政官としても
領地に向かわねばならない。
「もちろん、私も行くわよ」
「危険だから王都に」
「やだ。あたしを1人にしないで」
とお転婆幼馴染が予想通り反応する。
まあ止められないだろう。当面は休学だ。
国家の一大事だから咎めはされないだろう。
「俺もついていこう」
「殿下!伯爵領の事は私めの責務です。
どうかご自重を」
「ふふん、アナトハイム伯爵よ。
我も腕利きの配下を連れて行く。大事にはならんよ。
こんな面白い出来事は国家の一大事だ」
「・・・」
・・・やっぱりトーマスさんは殿下だったか。
周囲の方々には口封じされていた様だが、伯爵様には通じなかった様子。
しかし面白い出来事はないだろうに。不謹慎な殿下だ。
「それぞれの地主には余が領主として交渉すれば応じるだろう」
「もし抵抗すれば?」
「領内でアナトハイム伯爵家に逆らう愚か者がいるとは思えないが。
抵抗するなら反逆行為と見なし、ただちに捕縛する」
傭兵を雇っていなければ良いが。
当時は盗賊なのか傭兵なのか分からない集団が沢山いる。
雇用して組織的に抵抗してくる可能性もある。
「まだ戦闘になるとは限らないぞ」
「それなら良いですが」
「エリオス様。我々もお供させて下さい」
見ると、双子エルフのシルヴィ君とティアナさんがそばに控えている。
「他国民でしかも神の使徒の君たちを
この様な私事に巻き込む訳にはいかない」
「いえ、エリオス様。これも秩序神様の思し召しです。
世を乱す者に対し、我らの力をとくとご覧なされり」
にっこり笑ってティアナさんが答える。
キリっとした顔でシルヴィ君が頷く。
美男女の組み合わせは絵になるな。
「馬に乗れるものは早馬でキルテル村に向え。
徒歩の者は村長宅にて合流しろ。
辺境伯守備隊へは少数精鋭で向かわせると伝達をしろ。
各位ただちに行動に移せ」
「ははっ」
伯爵様から激が飛ぶ。
なお、現地では既に大混乱してる様子であった。
この時点ではまさか戦闘になるとはまだ思いもよらなかった。




