3年戦争 伯爵様とレイモンド大佐と難攻不落の要塞 その14
「伯爵様。伯都アントウェルペンが落城したと情報が入りました」
「・・・そうか」
「多数は脱出に成功した様子ですが、一部が逃げ遅れ
略奪の対象になったそうです」
「・・・」
伯都アントウェルペンを脱出し、国境警備隊と合流するために
逃れてきた伯爵様。多数の部下を置き去りにしてきたも同然である。
当然、悔いはあったが戦力が違いすぎた。
援軍と合流出来ればまだ戦争の形を作ることが出来る。
「余の大切な部下と民衆を失ってしまった」
「勝つために、今は我慢し所でございます。伯爵様」
「来たか。レイモンド大佐。卿が無事でなりよりだ」
「国境警備隊、旗下3,000。合流いたします」
国境警備隊を率いるレイモンド大佐が伯爵様と合流した。
伯爵様は一軍の指揮権を取り戻す事に成功した。
そして今後の戦略を考える。
「昔に比べ国境警備隊もかなり数を増やせたな。
しかし敵の戦力は強大だ」
「しかし勝算はありますぞ。伯爵様」
「ほう、是非ともそれを余に聞かせてくれ」
「盗賊共から奪い取ったこの砦は、数年の年月をかけて要塞化。
水も食料も補給は十分。数年は十分持ちこたえ出来ます。
今や難攻不落の要塞でございます」
「それは否定しない。卿らに感謝する」
「ここで籠城して援軍を待ち、迎え撃ちます」
「・・・援軍とな?」
自信を持って報告するレイモンド大佐と裏腹に、険しい顔を見せる伯爵様。
連戦連敗、指揮官も失った。
勢いに乗る敵はここで戦争のケリをつけたい所だろう。
もはや伯爵様には後がなかった。
「敗色濃厚な余に援軍など来ないであろう」
「これは内政官殿、つまり軍師殿の策でございます」
「・・・何?」
「実はジュリヴァ王国と正規軍は出せない代わりに傭兵を出して頂く事の
打診を受けております」
「何故だ?何故そんな話が今出てくる」
「奴らは我らとグリーヴィス公爵軍とでつぶし合って消耗して欲しい様子です。
しかし今は緩衝地帯を確保したい様子でございます」
「奴らは攻めてこぬのか?」
「ジュリヴァ王国軍はウィンダーミリアの戦いの戦いのダメージがまだ抜けていないと思われます」
話を聞いて伯爵様の目つきが変わる。
傭兵は金をちゃんと払っているうちは一応戦力になる。
この時代は傭兵で戦争がなりたっていた。
その時に、急に部屋に伝令が来る。
不機嫌な伯爵様はこの時まではイライラを隠せなかった。
「伝令です」
「入れ」
「宰相閣下の領地にいる部下から伝書鳩で伝令が届いております」
「読み上げよ」
「承知しました」
部下が伝令の内容を読み上げる。
宰相閣下が非公式に傭兵を援軍として送るという話であった。
名目は製鉄業の財産保護である。
これは噂は事前に聞いていた。
工場が占拠されてしまえば、投資資金は回収できなくなる。
東側の戦争を休戦させて、余った傭兵を送り込んでくれるという訳である。
もちろん新教徒に融和的な宰相閣下の考え方が大きいのは間違いない。
「ふーっ。
都合が良すぎる。戦う前に既に宗教戦争は始まっていたという訳か。
もはや国際戦争であるな。
奴らはそんなにグリーヴィス公爵軍が怖いのか?」
「虐殺、略奪、新教徒の民間人貴族皆殺し。
奴らはやりすぎました。
新教徒国は当然の事、我らが敗北し旧教徒国も国境を接すれば他人事ではなくなりました」
「悪名は敵を作るか。
余も教訓として覚えておく」
「・・・」
顎に手を当てて現状を整理し直す思考に入る伯爵様。
しかしピースが噛み合っていない。
何か見えない力が動いている、そう思うしか無い状態である。
それは急に反転するリスクも抱えていると感じていた。
「しかし内政官殿さえ余の側にいてくれればな。
あの時、無理やりでも連れてくるべきであった」
「・・・まだ死んだとは限りませぬ。
ジェレール中佐もミルチャー卿もおります。
彼らが作った時間を最大限に活用しましょう。
戦闘配備を」
「よろしい。卿に任せる。
この砦で余自ら籠城して敵の大軍を引き付ける。
ただちに戦闘準備に入れ」
「承知しました」
こうして、伯爵様とレイモンド大佐はいつ来るかも分からない援軍をアテにして
難攻不落の要塞にて籠城戦にはいる事になった。




