3年戦争 港町リヒハイトと北国の野獣 ラリオロフ陛下 その15
ここは港町リヒハイト。
既に過去の貧しい漁村の姿は無く、立派な貿易港として栄えている。
伯爵家のみならず、ロイスター王国の要の拠点となっていた。
今、一人の王が軍隊を引き連れて上陸しようとしていた。
そう新教徒と旧教徒が争う宗教戦争に介入するために。
「神よ。
朕はここに宣言する。
暴虐非道をつくす悪魔の如き虐殺者を成敗する。
この地に新教徒へ信仰の自由と平穏をもたらさん事を」
北国の王のラリオロフ陛下が軍勢を引き連れて上陸した。
そして膝をつき、頭を下げて手を合わせ神に祈りを捧げた。
これからの戦いをまさに神に捧げんとする様に。
と傭兵たちに大きなざわめきが発生した。
この神々しい光景は後世にまで語り継がれる事になる。
「ようこそ。陛下。我がロイスター王国へ」
「此度は盟約により新教徒の保護を目的に朕も参戦する」
「陛下に感謝を」
「して朕は汝に問う」
「どうぞ陛下」
「グリーヴィス公爵令嬢。汝は、神の言葉を教会でのみ祈る者であるか?」
「神の言葉?聖書に書いてあるわ。
聖書を翻訳して誰でも読める様に出版したのは盟友のエリオス君よ。
そして私は彼のスポンサーですわ。
覚えておいて下さいね。陛下」
「・・・勿論、朕が忘れる訳がなかろう。
その聖書は我が国にも輸入されて実に重宝されておるわ」
「他にご質問は?」
「朕にはそれだけで十分な返答である」
ガハハと笑いながらラリオロフ陛下がエリカお嬢様と会話する。
ラリオロフ陛下にとってその一言で十分であったのだろう。
次に視点を側にいたロザリーナお嬢様に向ける。
視線が合ったロザリーナお嬢様が嫌そうに見返す。
「そしてそこの魔王国の娘」
「なんじゃ?妾は当然新教徒であるぞよ。
まさか今更疑うのであろうか?」
「・・・実に不思議な縁であるな」
「我らの教えも、こちらの教えも全ての源流は同じじゃからの」
「そうであったな」
ロザリーナお嬢様が笑って返答する。
魔王国が教会の権威を認めていないのは周知の事実。愚問である。
そして、この地に身を顰めていたウィリエルさんに気がついた。
「汝がかのウィリエル卿か」
「いかにもでございます。陛下」
「なかなか見事な論文であった。
「光栄でございます」
「朕も卿に会えて嬉しいぞ」
ウィリエルさんは今回の宗教改革の代表者であり
宗教戦争のターゲットの一人である。賞金首がかかっている。
それを知らない者は今ここにはいなかった。
「朕はグリーヴィス公爵令嬢と共に虐殺者を殲滅する。
神の栄光があらん事を」
こうしてロイスター王国は周辺諸国を巻き込んで泥沼の宗教戦争に突入していったのであった。




