無料より高いものはない(お金で済ませられる方がいいこともある)
「……ちょっと本気過ぎじゃないですかね、これ?」
実際にセレヴィアに呼び出されたのは一月も後になってのことだった。もしや忘れていたのだろうか?と思って応接間……と思われる部屋に入って出た言葉が冒頭である。
床に敷いてある絨毯は地がしっかりしており、色合いはくっきりと、模様は細かい。
テーブルは精緻な意匠が刻まれ、クロスもレースで飾られている。
華美にならないよう抑えながらも気品が溢れる仕上がりになっていたのだった。
「私が頼んだ時より本格的なんですけど……?」
リデルがそう呟いてしまうのも無理はなかった。
「あら、だってあの時は時間がなかったもの。それに見かけほど高いものじゃないのよ。作りのしっかりしたものを組み合わせているだけ」
口とは裏腹にカトレアは自信溢れる笑顔で答えた。
「私には、リーシアのような管理能力も、マリーのようなデザイン技術もない。だからこの目が、感性こそが唯一の武器なのさ。さて、更衣室は隣だ。よろしく頼んだ」
リデルは麻の袋を持たされて、肩を押される。
化粧室というか更衣室だった。
その商売柄スタッフは女性だ(警備員とか一部例外あり)。
リデルが渡された袋の中身は執事服だ。
部屋を見た後だったので予想はしていたが、出来が全然違う。元々着ていた服を畳んで置き、渡された服を手に取り、その出来栄えに動きが止まった。
ハァ……ハァ…ハァ…
「もう我慢できませーん!」
ロッカーの一つがバタンと開いて飛び出して来たマリーがリデルに抱き着いた。
「ふにゃっ!」
思わず変な声が出たリデル。
「大理石のような滑らかな肌。大理石では感じられない温もりと柔らかさ。生きる芸術とはあなたのことだわ~!」
グリグリと胸に顔を埋めて来るマリー。
飛び出してきた時、マリーだと判断が遅れていたら本気で落としていたかもしれなかった。
「ねぇ、うちのモデルになりましょう?ああ、あの服もこの服も似合いそう」
どこからか取り出した服がそれぞれの手に握られている。
「今日のところはこちらで勘弁を」
「ああ、ちょっと~。待って待って!」
何とか更衣室からマリーを追い出して、忙しく着替えたリデルだった。




